出所した人の社会復帰を支援する人財教育のプロ
副島勲
Mybestpro Interview
出所した人の社会復帰を支援する人財教育のプロ
副島勲
#chapter1
平成8年から22年にわたって「保護司」を務めた副島勲さん。「保護司」とは「休みなしの“無休”か給料なしの“無給”か分かりませんが(笑)、法務省から任命を受ける準国家公務員みたいなもので、刑務所出所者の更生や社会復帰をサポートする役割です」と副島さんは説明します。
刑務所から出てきた人たち――副島さんは“つまずいた人”と呼んでいます――に仕事と泊まるところを提供する、というのはもちろん大切なのですが、せっかく仕事を得ても再犯を犯したり、そこまではいかなくとも何か問題を起こしたりして仕事が長く続かない。それは自力更生するための基礎教育や人間教育がなされてないのが問題だと副島さんは考え、教育・仕事・宿泊の三位一体の活動の中で、平成24年に「株式会社ヒューマンハーバー」を立ち上げ、翌年「そんとく塾」という私塾を立ち上げました。(現:一般社団法人ヒューマンハーバーそんとく塾)
ちなみに三位一体の活動の中の「仕事」はスクラップや産業廃棄物の処理業で「ある蔵」として事業資金を稼ぎ、「宿泊」については「てんしん館」という社員寮を運営しています。刑務所を出て「ある蔵」で働き「そんとく塾」に学ぶ人たちに住まい(てんしん館)を提供しているのです。
#chapter2
「そんとく塾」では、「指導」ではなく「授業」という言葉を使っています。「指導」だと「正しい」といわれていることを押し付けられる感覚がありますが、そもそも人は成長したいという思いを本来持っているもの。「そこで『授業』で生まれる先生への『尊敬』や『わかりやすい』『おもしろい』という感情によって、「正しいこと」を素直に聞き入れようという姿勢が生まれ、「正しいこと」がストンと腑に落ちるようになります。すると、その人は変わろうという意欲が湧いてくるんです」と副島さんは話します。その「気づき」を与えるために、「そんとく塾」では「こころのスポンジ作り」というプログラムを実践。教材としては国語や数学の教材を使っていますが、これは各自の価値観がぶつからない国・数だからこそ、客観的に物事を正しくとらえたり納得したりできるという訳で、教科としての国語や数学の勉強をするわけではありません。例えば、国語なら同じ答えでも表現の仕方がいろいろあるし、数学の場合は同じ答えを導くにしても、計算で解く、図や表にして解くなど、問題の解き方が複数あります。このように、国語や数学の教材を使って物事を考えれば、多様な価値観を受け入れる心が育つというのです。
「その人の欠点や間違っているところを指摘しても、結局それは「指導」であって、間違いをドーン、ドーン、ドーンと突いて、心に穴が開くだけなんです。だから、頑なだった心をスポンジ状態にして、いろんな人のいろんな意見を吸収するように柔らかく変えないといけません」と副塾長の原田公裕さんは説明します。なお、この「心のスポンジ作りプログラム」は汎用化して特許を出願中。副島さんは「そういう頑なな人たちですら変われるのだから、普通の人たちの方がずっと変わりやすいはず」と話し、社員研修や人材のステップアップ研修などに応用できると考えているそうです。
#chapter3
「罪を犯した人を罪人というでしょう。『罪人』をひっくり返せば『人ザイ』になります。人の材料と書いて『人材』、宝にすることも『人財』。私はそこからもう一歩抜きん出て、納税者を育てていきたいと思っているんです」と副島さん。罪を犯せば刑務所暮らしで、その人の食費だけでなく、刑務官の人件費などいろんな経費を含めて年間1人300万ほどが必要だといわれます。また、加害者にお金がなければ国選弁護人が付いて弁護してくれますが、被害者にそういう制度はなく、お金がない人を訴えても賠償金は取れないから、泣き寝入りせざるを得ません。
「教育を受けて真面目に働き、税金を納める側になって、さらに被害弁償をできるような、そこまでいかないと、本当の意味での罪の償いにならないんじゃないか」と副島さん話します。
「この世の中でいちばん大事なものは人間だと私は思っていて、『天に棄物無し、況や人間をや』という言葉があるように、人間がこの社会を進化させている訳ですから、そんな中でつまずいた人といえども再出発できる。そういう仕組みは今まで日本になかったから、それを作りたいと思っています」
(取材年月:2020年8月)
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副島勲プロ
人材教育支援
一般社団法人ヒューマンハーバーそんとく塾
服役経験者への就労・教育・宿泊の三位一体の取り組みをユヌス・ソーシャル・ビジネスで実現。その中で人と組織が変われる「心のスポンジ作りプログラム」を開発。人財育成・社員教育・組織強化で成果を上げている。
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