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防災に特化した資材の開発・企画で、町と人に新しい価値を提供

自然災害から町と人を守る防災関連資材の企画・販売のプロ

黒岩義臣

ハッシュウさま護岸
ハッシュウさま窓辺

#chapter1

見えないところで地域の防災機能を支えると同時に、家庭向けの防災製品を開発

 日本各地で頻発している自然災害。九州では地震や豪雨に見舞われました。福岡県久留米市で、道路側溝や集水桝といったコンクリート2次製品を製造する「八洲セメント工業所」の黒岩義臣さんは、たびたび災害の現場に立ち合った経験から「壊れてから復旧するということの繰り返しでは命を守ることは難しい」と悟ります。2003年、防災に特化した資材の企画・開発を行う新事業「ハッシュウ」を創業しました。
 
 コンクリート以外に防災資材も多く取り扱う同社では、豪雨による水害を想定して、地下に雨水をためて浸透させるシステムを構築。主に県内公共施設のグラウンドや駐車場の地下に設置されています。同じく同社が手掛けたさびにくく軽量な繊維製の法面保護・補強用資材は、鉄製に代わるものとして河川の護岸にも使われています。
 
 「見えないところで被害を最小限に抑える役割を担っています」と黒岩さん。必要以上に景観や自然環境を壊さないよう、法面保護資材は河川の生物や人体に優しいという点も重視。また一刻を争う災害復旧の際にスピーディーに対処できるよう、取り扱いの利便性についても工夫しています。

 また「防災はそれぞれの家庭でも対処するべきもの」と、これまで培った技術を個人向けの防災製品の開発に注ぎました。
 
 サイクリングロードや避難誘導板に使われているLEDや蓄光製品は、ソーラー式の完全防水仕様。水没にも耐えられるほどの耐久性があります。黒岩さんは「住宅の玄関などの防犯対策や停電時のほか、山間部や急斜面などにも有用」と考えて製品化を進めています。

#chapter2

度重なる自然災害から受けた衝撃をエネルギーに変えて、身を守るための挑戦を続ける

 久留米市は、ゴム製品などの製造業が盛んなものづくりの町でもあります。
 「グローバル化の時代、先代の事業を継承するだけでは淘汰されてしまう」と、早くから危機感を持っていた黒岩さん。家業を継いだ2代目・3代目との異業種交流の際にも、ものづくりの中小企業が置かれている状況について、不安や悩みを語り合ってきました。
 「常に新しいことに挑戦し続けなければ、製造業にも自分自身にも未来はない」という思いに駆られた黒岩さんは3DCAD、イラストレーターといったデジタル技術の習得に没頭。スキルアップに努めています。
 
 黒岩さんの事業姿勢や生活信条のベースとなっているのは、記憶に焼き付いている地震などの自然災害から受けた大きな衝撃です。東日本大震災は、仙台を拠点とする企業の福岡営業所スタッフと同席している時に発生。その人が仙台の本社に電話をしても、全くつながらないという場面に遭遇しました。
 「たまたま私の携帯電話から連絡がつき、無事だということがわかりました。その後も現地のことが気にかかっていました」と黒岩さん。
 「ようやく2年後に訪れたときに、車を走らせながら見た荒涼とした光景が忘れられません」と話します。

 「人の力ではどうすることもできないことを思い知らされた経験を、エネルギーに変えて形あるものにしなければ」と強く感じた黒岩さんは、テクノロジーで防災を進めることと同時に、個人が能力を高めることの重要性を痛感。
 「危機管理を他人任せにするのではなく、自力であらゆる知識を吸収して、新しいアイデアを生み出すことが大切。この気持ちが原動力になっている」といいます。

ハッシュウさま商品サンプル

#chapter3

無機質なコンクリート製品に作り手の魂を添えて、新感覚のいやしグッズ「ハッシュウpro」に

 「優れた技術と知恵を絶やさないために、自分にできることを」と考えた黒岩さん。家業で展開してきたコンクリート製品を「心の平穏を生む身近なものとして感じてほしい」と、新たな魅力を見いだす取り組みを始めます。

 「無機質なものにも、作り手の魂が込められています。鋳物のマンホールに描かれたご当地風景に目をとめる人がいるように、冷たい感触のコンクリートにも、ホッとできるようなエッセンスを加えることができれば」とイメージを膨らませた黒岩さんは、さまざまな分野とのコラボレーション企画を模索しています。シリコーンゴムの型枠を使って、ミニサイズの歯車型ペン立てを考案。ほかに肉球や花をモチーフにした試作品、会社のロゴマークなど、硬いコンクリートに柔らかいデザインを施し表情を持たせています。

 「楽し気なサンプルは、妻や娘のアイデア。家庭の中で愛用してもらえたらと、女性の目線も大切にしました」と黒岩さん。この製品づくりの企画名は「ハッシュウpro」で、名前には、product(生産品)、project(企画)、produce(創り出す)、promise (約束)の意味が込められているそうです。

 「材木や布といったさまざまな素材を扱う企業やクリエイターなどと共に、これまでにない新感覚の商品を創り出す。そんな可能性を期待して多方面に働きかけているところです」と黒岩さん。つらい記憶を原動力に、挑戦は続きます。

(取材年月:2021年6月)

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専門家プロフィール

黒岩義臣

自然災害から町と人を守る防災関連資材の企画・販売のプロ

黒岩義臣プロ

防災関連資材の企画・販売

株式会社ハッシュウ

頻発する自然災害による被害を最小限にするための製品企画を提案。道路や公共施設だけではなく個人の住宅回りの防災を考え、生活者目線で身を守る工夫をサポート。無機質な商品にいやしのアイデアも。

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