高品質なオリジナル寝具を企画・製造する布団のプロ大平俊彦

高品質なオリジナル寝具を企画・製造する布団のプロ

大平俊彦

使う人の体重に合わせた高反発敷布団など、高品質なオリジナル商品を企画・製造

　人生の3分の1を占めると言われる睡眠。近年の巣ごもり事情も相まって、良質な眠りへの関心は高まりを見せています。

　「布団って中身が見えないでしょう。だから、ごまかすようなことは絶対にしてはいけない。自分の目で素材を確かめて、本当に良いと思ったものだけを売りたいんです」

　そう語るのは「おおひら」の代表取締役・大平俊彦さん。北九州市で経営する「ふとんのおおひら」は、1993年に創業した80年以上続く老舗寝具店です。

　“売れるものではなく、売っていいものだけを売る”。かねてより良品質主義を掲げてきた大平さんは、納得できる製品を自ら手掛けることを決意。商売人として妥協を許さず、高品質なオリジナル商品の企画・製造を行っています。

　異なる繊維メーカーの素材を重ね合わせ、機能性を追求した高反発敷布団は、使う人の体重に合わせ硬度を変えた2タイプを用意。長年売り場に立つ中で耳にしてきた顧客の要望と、素材に対する深い知見を掛け合わせ、体を優しくサポートする一品を完成させました。

　「当店の品は格安という部類ではありませんが、同価格帯の中では高いレベルの品質だと自負しています。自社で企画し、県内の工場に直接発注することで、中間マージンなど無駄なコストがかからないんです。値段は既製品、寝心地はオーダーメード感覚が当店の売りです」

　展開しているのは、掛け布団、敷布団、枕、シーツなど寝具周り全般。近年はオンラインショップを通して広く買い求められるように。綿の打ち直しや羽毛の追加など、メンテナンスにも対応しています。

寝具は長く使うものだからこそ後悔がないように、より良いものを届けたい

　大平さんの店では基本的に値下げをせず、ほとんど定価のまま販売しているのも特徴です。値下げを前提とした定価設定による二重価格表示に真っ向から向き合う背景には、値下げ率で消費者の目を引くのではなく、冷静に吟味してほしいという願いがあります。

　「寝具は一度買ったら数年は使う方がほとんど。だから後悔してほしくないんです。接客中もつい『他のお店の商品も見てから決めてください』って言っちゃいますね」

　正直な姿勢を大事にする大平さんは、幼少期から自宅に併設していた旧店舗で商売を切り盛りする両親を見て育ちました。良い寝具に出会えたと喜ぶ顧客の様子を肌で感じ、「より良いものをお届けしたい」という気持ちが芽生えます。

　「大学卒業後は関西の繊維商社で4年ほど修業しました。知識もつきましたが、人脈が築けたのが一番の成果でしたね。当時の業者さんとは今でも付き合いがあり、良い素材が出るとすぐに教えてもらうんです。この情報網がプライベートブランド開発の基盤となっています」

　繊維などの話になると目を輝かせる大平さん。冗舌な口ぶりから布団づくりへの強いこだわりが感じられます。

　「よく『営業がうまいね』と言わるのですが、私はその言葉が苦手なんです(笑)。お客さまが求めているものを聞いて、ふさわしいものをお見せしているだけで、無理に売るつもりはないんです。商品に対して誇りを持っているから、その熱がお客さまにも伝わっているのだと思います」

これからも顧客に求められる店でありたいから、製品にも自分にもうそはつかない

　「掛け布団イコール羽毛だと考える方は多いですが、羽毛は海外の輸入に頼っていて質も価格も安定していません。また、原材料が高騰する昨今、羽毛の価格も年々上昇しています。以前はダウン85％の掛け布団はシングルなら充填羽毛量は1.4kgが基本でしたが、最近は1kg～1.1kgが主流で、保温力の差は歴然です」

　大平さんの一押しは、シンサレートという高機能中綿を用いた掛け布団。大手素材メーカー「3M」が開発した素材で、薄くて軽い上に高い断熱性を誇り、冬山登山の衣類に用いられるなど多方面から注目を集めているそうです。

　「科学の発達により優れた素材が次々と誕生しています。実際、シンサレートは同量の羽毛と比較して1.8倍の暖かさだと実証されています。それを2枚重ねにして国内製造されたものは、私の知る限り当店だけです」

　現在はシングルのみ。というのも、シンサレートの規格上、ダブルサイズにすると両端に余白ができてしまうのがネックになったとか。

　「ニーズがあっても、100％の自信が持てない以上は商品化することはできません。カバーを掛ければ見えませんが、食べ物の原材料表示と同じで、お客さまの目の触れないところにこそ、誠実であるべきです」と力を込めます。

　「当店は祖父の代から続く布団屋です。時代も街も様変わりする中、今日まで商売を続けてこられたのは信念があったからだと思います。その矜持を胸に、今後も納得できる寝具だけをお届けしたい。お客さまはもちろん、自分にだってうそはつきません」

（取材年月：2022年12月）

売れる商品ではなく「売っていい商品」を世に送り出す　品質にこだわった寝具を展開

使う人の体重に合わせた高反発敷布団など、高品質なオリジナル商品を企画・製造

寝具は長く使うものだからこそ後悔がないように、より良いものを届けたい

これからも顧客に求められる店でありたいから、製品にも自分にもうそはつかない

専門家プロフィール

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