自分らしく自宅で暮らす高齢者を支援する介護のプロ川口博司

自分らしく自宅で暮らす高齢者を支援する介護のプロ

川口博司

リハビリや訪問看護のほか、介護タクシーや日常の困り事に応える生活サービスを展開

　「利用者さまそれぞれに歩んでこられた人生があるように、将来かなえていきたい夢もおありです。私どもは、ご本人が持つ能力を引き出すことで、自分らしく生きていくという尊厳をお守りし、希望を持って暮らすお手伝いをいたします」

　そう話すのは、福井県坂井市で介護福祉事業を展開する「ハート＆ハート」の代表取締役、川口博司さん。マンツーマンのリハビリ施設「陽和縁（ひよりえん）」や、医療的ケアを行う訪問看護ステーションなどを運営しています。

　「立ち上がる、歩くといった基本動作を訓練するリハビリテーションに加え、家事や洗濯など日常生活に関連する動作にも目を向け、より専門分けされたリハビリテーションが受けられるように取り組んでいます。また車いすや歩行器など、利用者さまを補助する福祉用具のレンタル・販売もしております」

　さらに「一番大事なのは生活の範囲を広げること」と、2022年4月から介護タクシーもスタートしました。
　「買い物や美容室に行く、地元の会合に出席するなど社会参加することが孤立を防ぎます。また、行動範囲を広げ刺激を受けることで、認知症予防にもつながります。『ちょっとそこまで』といった近隣へのお出掛けから、『京都まで親族のお墓参りに行きたい』などの長距離移動まで、ご要望に合わせて送迎いたします」

　併せて、日々の困りごとに応える「暮らしのお助けサービス」も開始。庭の草取りや植木の剪定、掃除、除雪、電球の交換など、細やかに対応しています。
　「一人ではできないけれど『忙しい家族に頼むのも気が引ける』という時には、私たちに遠慮なくお声掛けください」

理学療法士として経験を積み、一人一人に寄り添うサポートがしたいと考え独立

　理学療法士として、総合病院や在宅介護サービスを提供する事業所で勤務していた川口さん。起業を決意したのは、自身が思い描くサポートの在り方を実現するためでした。

　「以前の職場のリハビリでは、私たちが見本を示しながら、複数の高齢者の方に同時に同じ動作をしていただくことが多かったんです。しかし、体格も性格も運動機能の程度も皆さん違います。もっと個々人に向き合わなければ、ご本人が望む回復に至らないのではないかといった歯がゆさを感じていました」

　加えて、当時自身の祖母が要介護状態になり、付き添う家族の気持ちを深く理解したことも独立のきっかけになったそうです。
　「大好きな祖母に、いつまでも家にいてほしいと願う一方で、家族の立場からすると、仕事をしながら自宅でみるのは負担が大きいということもよく分かりました。その人がその人らしい人生を送れるよう見守っていくためには、ご本人やご家族の生活を考えて、総合的に支える仕組みづくりが急務だと実感したんです」

　川口さんは、一人一人に寄り添い、心豊かで充実した毎日を創造していくことを理念に、2013年に創業。スタッフらと共に利用者や家族のニーズをくみ取りながら、業務を拡充してきました。
　「現状の医療・福祉サービスでは手が行き届かない部分まで踏み込み、皆さまが不便や不安なく、住み慣れたわが家で日常を重ねていけるよう、力を尽くすのが当方の役割であり目標です。自分でできることを増やすのはもとより、趣味に励んだり旅行を楽しんだり、自立に向けて伴走します」

理学療法士のほか看護・介護の専門職がそろい、健康や介護予防のアドバイスも

　「介護認定を受けていないけれど、健康面で気になることがある、体力・筋力の低下が心配という方やご家族も気軽にお問い合わせください。理学療法士や作業療法士、看護師、介護福祉士、言語聴覚士、福祉用具専門相談員など各分野の専門職がそろい、介護予防のアドバイスなども行っています。どんなことでもどうぞ」と呼び掛ける川口さん。

　今後は、個々の状況に合わせて在宅ケアの計画を立てるケアプランセンターの開設を目指します。
　
　「介護を必要とする方もそうでない方も、生き活きとした笑顔にあふれるまちは、どのような方にとっても住みやすいのだということに気付きました。最近は、利用者さまやご家族だけでなく『地域全体に貢献するにはどうすればいいのか』をいつも考えています」

　身近なところにも目を向け、精神面や気持ちに働きかける植物や雑貨などの販売も一案として視野に入れているとか。
　「1輪の花を部屋に飾る、お気に入りのカップでお茶を飲む。小さなことですけど、心が満たされたり、リラックスできたりしますから。これからは、私たちのまわりにはあふれている、ささやかな喜びも提案していきたいですね」

　身体機能の維持・向上から心の癒やしまでできて初めて、介護を必要とする人と家族が心身共に穏やかに過ごせると川口さんは言います。
　「利用者さまのご自宅を中心に、包み込むように支援の輪が広がるイメージを持っています。ここ坂井市でモデルケースを作り、他のエリアにも届けることができれば、うれしいですね」

（取材年月：2023年5月）

地域に支援の輪を広げ、いつまでも生き活きと自宅で暮らせるお手伝いを

リハビリや訪問看護のほか、介護タクシーや日常の困り事に応える生活サービスを展開

理学療法士として経験を積み、一人一人に寄り添うサポートがしたいと考え独立

理学療法士のほか看護・介護の専門職がそろい、健康や介護予防のアドバイスも

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