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LGBTQを特別視せず、誰もが受け入れられる社会にしたい

ドラァグクイーンの装いでLGBTQの現状を発信するプロ

花華院姫子

花華院姫子 はなかいんひめこ
花華院姫子 はなかいんひめこ

#chapter1

会社勤めをしながら、LGBTQ活動家として悩みや相談に応えるバーを運営

 「近年、セクシャルマイノリティー(性的少数者)を表す『LGBTQ』という言葉を見聞きする機会が増えました。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア・クエスチョニングの頭文字をとったものですが、性のあり方はグラデーションのようなもので、はっきり区別できない難しさがあります」

 そう見解を述べるのは、福井市を拠点に事業を展開する「MYFOOT」で副社長を務める花華院姫子さん。LGBTQ活動家としての顔を持ち、情報発信などに奔走。「苦しさやつらさを抱えているご本人やご家族の声に耳を傾けることで、少しでも力になりたい」と呼び掛けます。

 忙しい中にあって、会社業務と並行する理由は「個人より、法人に属していた方が行政や企業からの依頼にスムーズに対応できるから」と説明します。

 花華院さんは仕事の傍ら、2009年に「Bar妖かし(あやかし)」をオープン。華やかなメイクと衣装でパフォーマンスを披露するドラァグクイーンとして、クラブイベント「妖宴(ようえん)」なども年に数回開催しています。
 「LGBTQに限らず、世の中にはいろんな人がいることを知ってもらう場を作りたくて、バーを始めました。福井市には女性が遊ぶ場所がほとんどないので、誰もが気楽に楽しめる店づくりを心掛けています」

 顧客の約8割が女性。1人で来店する人が多く、客同士が仲良くなれる雰囲気だとか。
 「週1回、恋愛や人生相談に乗り、子どもの性自認や性的指向など保護者のお悩みにも応えています。気になることがあれば、お立ち寄りください」

#chapter2

カミングアウトは慎重に。学校や職場など現実社会との折り合いをつけることも必要

 花華院さんは23歳から、ドラァグクイーンとしてイベントやショーに出演していました。「私はゲイなので、男性の格好をして男性が好き。ドラァグクイーンをやったのは、手っ取り早くお金が稼げたからです。目立ちたがり屋なところもあり、思ったことを何でも言える快感もありますね」

 幼い頃から自身がゲイであることを自覚していましたが、母親に伝えたのは30歳の時でした。
 「会社を経営していた父親が亡くなった後だったので、母は息子に頼りたかったでしょう。そんな時に『男が好きで結婚は無理』と告白されたのですから、タイミングとしては最悪です」

 半年間、口を利いてもらえなかったそうですが、今ではわが子を受け入れ、会話をするように。それでも「近所にゲイだとわかるようなことはしないで」と念を押されています。
 「テレビでLGBTQのタレントが活躍するようになってきましたが、いざ自分の子どもや身内が打ち明けたら、たいていは戸惑い否定されます」

 世間では「公に表明することをよし」とする流れもありますが、「福井では慎重に」と現状を鑑みてアドバイスを送ります。
 「私は、カミングアウト推進派ではないです。周りに共有した途端、いじめに遭うこともあります。残念ですが、偏見や差別はあります。中高生のお子さんを持つ保護者には『もう少し様子を見にからにした方がいい』と助言しています。個性をなくさず、学校や職場などの現実社会とどう折り合いをつけるか、より良い道を探りましょう」

花華院姫子 はなかいんひめこ

#chapter3

自分の「普通」を押しつけず、相手を理解し、尊重することが大切

 2019年から、地域のFM局「たんなん夢レディオ」にパーソナリティーとして出演。月1回「花華院姫子の昼妖かし」という番組で、自身の経験談などを語っている花華院さん。福井県の倫理委員会の朝活に、ドラァグクイーンの装いで講師として参加もしています。

 価値観の多様性やジェンダー平等に対する関心が高まる中、行政や企業でも積極的に講演したいと言います。
 「例えば男性従業員が女装をして出社をしたらどうするか、経営者として考えておくことは必要ではないでしょうか。また性的マイノリティーはLGBTQだけではないので、当事者でないと理解できない内容もあります。私は各方面に知り合いがいるので、分からないことがあれば、双方をつなぐこともできます」

 特にデリケートなのが、性自認が出生時の性別とは異なる「トランスジェンダー」です。
 「思春期になり自分の体が変化することに悩み、自分を傷つけた子どもの保護者から相談を受けたことがあります。性別適合手術は18歳以上と定められているので、それまでどうするかが問題。『妖宴』の動画を見て福井にもこんな人がいるんだと視野を広げたり、私に話すことで気持ちを楽にしてもらえれば幸いです」

 講演会で主張するのは「普通とは何か?」ということ。「私を異常と思う人がいるかもしれませんが、みなさんと同じように生活しています。自分の『普通』を押し付けるのではなく、相手を尊重できる社会になるように尽力していきたいですね」と笑顔を見せます。

(取材年月:2022年10月)

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専門家プロフィール

花華院姫子

ドラァグクイーンの装いでLGBTQの現状を発信するプロ

花華院姫子プロ

LGBTQ活動家

株式会社MYFOOT 芸能部

会社員、ゲイ、ドラァグクイーン・心理カウンセラーの顔を持ち、LGBTQの複雑さや現実社会での折り合いの付け方を伝える。性自認や性的指向に悩みを持つ人や家族の話しを聞き、当事者同士をつなぐ役割を果たす。

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