小型コアレスモーターの設計・製造を手掛けるプロ宇野禎倫

小型コアレスモーターの設計・製造を手掛けるプロ

宇野禎倫

コアレスモーターの開発に40年以上携わった実績をもとに、自社製品を展開

　青森県黒石市を拠点に事業を展開する「UNO」。小型モーターの製造・販売を主力として、実績を積んできました。

　「私どもがお届けするのは、コアレスモーターという製品です。従来、モーターの回転体にはコアと呼ばれる鉄芯にコイルを巻きますが、この鉄芯を用いないのが大きな違いです」

　そう話すのは同社代表の宇野禎倫さん。40年以上にわたり、コアレスモーターの開発に携わってきました。

　「重量のある鉄芯を使用せず、コイルだけで成形する空芯なので非常に軽く、回転が速いんです。加えて、磁力の影響を受けることが少ないのでヒステリシス（鉄損）が発生せず、滑らかな動きで振動や音も小さくなります」と宇野さん。効率よく稼働するため、消費電力を抑えられるのもメリットだと説明します。

　「当社のコアレスモーターは、コイルの巻き方に特徴があります。通常、回転軸に対しコイルを傾けて巻きますが、うちでは垂直に巻き上げます。この特許取得済みの技術により、一般的なコアレスモーターと比べてコイルの長さは3分の1に。体積比3倍の出力が出せるようになり、軽量化、小型化へとつなげることができました」

　さまざまな利点がありますが、一連の工程は手作業で完成までに時間がかかります。また、高いスキルが必要で宇野さんしか対応できないことから、月産50個が限界とのこと。価格は安くありませんが、根強い人気があると言います。「ありがたいことに、作った分だけ売れている状況です。現在、当社のコアレスモーターは高級鉄道模型や風力発電機に活用されています」

東京のメーカーでモーター事業部の立ち上げに携わり、事業を引き継ぎ地元で独立

　1963年に、黒石市で生まれた宇野さん。弘前電波工業高校（現弘前東高校）を卒業後、モーター製造会社に入社。コアレスモーターに出合い、組み立てや設計に従事しました。「ポケベルや携帯電話に実装するバイブレーションモーターを手掛けたことが、特に印象に残っています。いずれも、世界的な大手メーカーに採用してもらうことができ、やりがいがありましたね」

　何事にも前向きに取り組み、知見を深める中、東京の電線メーカーからアプローチを受けます。新たにモーター事業部を立ち上げるにあたり、宇野さんの実力を見込んでヘッドハンティングの声が掛かったのです。

　自身の可能性を広げる好機と感じたことから移籍。モーターづくりに専念しますが、6年が過ぎた頃、会社の方針により事業撤退が決まります。「道半ばであきらめたくなかったので、会社に事業を引き継ぎたいと頼みました。自分が開発した設備ごと簿価で引き受け、青森に戻ることにしました」

　心機一転して船出しますが、早々に暗礁に乗り上げます。小型ロボットを生産する会社にコアレスモーターを供給することで見通しを立てていたそうですが、ロボット開発が中止となり、取引ができなくなりました。「これはまずい、何か手を打たなければと、いろんなつてをたどって電話を掛けたところ『鉄道模型に使えるのでは』という話をいただき、事なきを得ました。一時は独立をやめようかとさえ思っていましたから、ほっとしましたね」と振り返ります。

価値ある技術が埋もれてしまわないように、地元の企業を盛り上げたい

　2005年に創業して以来、製品を手塩にかけて育て、改良を加え世に送り出してきた宇野さん。「組織に属していると、上司の指示に従って動くことが求められますが、今は自由にものづくりができます。アイデアがどんどんわいてきて楽しいですね。お金と時間が足りませんけれど」と朗らかに笑います。

　現在は、地元の工業会が開く会合などに積極的に参加し、他の経営者とコミュニケーションを取るようにしているそうです。「会社員時代は、社長クラスの人と接する機会はほとんどありませんでしたし、会うとしても業務などを依頼する立場で、対等な関係とは言えませんでした。今後は、みなさんの経営ノウハウを吸収し、自社だけでなく他社さんにも役立てたいと考えています」

　各方面に赴き交流する中で、優れた技術を持ちながら、販路開拓がうまくいっていない業者の実情を見聞きすることが増えてきたからだと語ります。
「価値ある技術が埋もれてしまうのは、あまりにももったいない。顧客層にアピールするプロモーションが得意でないといった理由で、下請けにとどまっている例も少なくありません。厳しい状況にある地場企業のために、何かできることはないかと思案しています」

　ビジネスに関する悩みや相談を聞くなど、できる限りサポートしたいと力を込めます。「前職で培った人脈も生かし、知人の会社が請け負えるなら代わりに仕事を取ってくるようにしています。お互いに協力することで、地域が活気づけばうれしいですね」

（取材年月：2022年11月）

特許技術で仕上げる、軽量で効率の良いコアレスモーターが強み

コアレスモーターの開発に40年以上携わった実績をもとに、自社製品を展開

東京のメーカーでモーター事業部の立ち上げに携わり、事業を引き継ぎ地元で独立

価値ある技術が埋もれてしまわないように、地元の企業を盛り上げたい

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