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ものづくり”や“まちづくり”とリンクさせて、畳文化を世界に紹介

老舗畳屋の畳と地域の魅力を発信するプロ

髙森えりか

髙森えりか たかもりえりか
髙森えりか たかもりえりか

#chapter1

1952年創業の畳屋として家庭用から神社・仏閣まで対応。畳の良さを伝える催しも実施

 1952年に創業し、七十余年の歴史を重ねる「髙森畳工店」。培ってきた技術をもとに、一般家庭をはじめ、神社・仏閣からの依頼も数多く請け負ってきました。
 災害時に避難所へ無償で畳を届ける「5日で5000枚の約束。」というプロジェクトにも参画。機械化された2つの工場を備え、緊急時には1日に100枚単位で製造することもあります。

 「従来の畳屋のイメージとは違うかもしれませんが、新しい魅力を伝えられたら」と語るのは、広報の髙森えりかさん。2代目社長である父の背中を見ながら「畳屋の娘」として育ちました。

 「父はこの道半世紀の畳職人ですが、以前は工場の生産設備や発電所の設計・建設のために世界中を飛び回るサラリーマンでした。手仕事の現場に製図ツールのCADシステムを導入するなど、さまざまな先進機器を積極的に取り入れてきました」

 しかし、量産体制を整備しても最近では和室がない家も多数。畳に触れる機会が減っている現状を打破するため、ものづくりを通して畳の良さを再認識してもらう場を用意しています。
 「子ども向けのワークショップを開催して、畳製作の過程で出る端材を使用した小物作りなどをしています。また、近くにある三沢基地関連の外国人や、畳作りに興味を持つ若い人のために工場見学を実施することもあります」

 髙森さんは、国内外のたくさんの人に情報を届けるため、自社サイトやインスタグラムで発信。「 “青森県SDGs取組宣言制度”の登録業者でもあるので、資材を再利用すると共に、畳という資産を未来につないでいきたい」と力を込めます。

#chapter2

熟練職人が手掛ける質の高い畳と八戸の魅力をアピールすべく活動

 子どもの頃から八戸の町が大好きだったという髙森さん。過疎化が進み、中心街が廃れていく様子に心を痛めていた高校時代、まちづくりのワークショップに参加します。そこで、後に恩師となる弘前大学の北原啓司さんをはじめ、高い志の大人たちと出会いました。
 「不満をこぼすだけではなく、にぎわいを取り戻すために実際に頑張っている姿に感動しました。自分もそういう人になりたいって思ったんです」

 弘前大学・大学院を卒業後は「世田谷トラストまちづくり」に就職。急速に変化する東京で、街並みの保全や地域コミュニティーの形成などに携わりました。
 「とても勉強になり面白かったのですが、その間も八戸のことはずっと考えていました。このスピードで八戸を変えるのは無理だなとか、家業が畳屋だとか、ハンドメイドが好きだとか。自分の特長を地元の活性化とリンクできるのではないかと思い、2019年にUターンターンしました」

 ゆくゆくは3代目を期待されていますが、選んだのは職人ではなく広報。父はCADを、自身はSNSを駆使するなどそれぞれの得意分野を生かし、老舗を支えます。

 髙森さんは畳だけにとどまらず、八戸の広報にも取り組んでいます。国内で最大級規模を誇る館鼻岸壁朝市で、ゆるキャラ“イカドン”の中に入ってファンを獲得し、観光客を全国から呼ぶことに成功しました。
 「工場では父をはじめとした熟練職人が高品質の品を手掛け、町では私が畳や八戸の宣伝をする。そんな両輪で進んでいけたら」

髙森えりか たかもりえりか

#chapter3

畳のある暮らしは日本の伝統。職人の学びをサポートするためマニュアルも作成

 畳のある暮らしは日本独自の伝統であるにもかかわらず、残念ながら国内の需要は減少し続けています。一方、欧米や中東の富裕層は畳に強い関心を示し、一畳何十万円もする高額商品も飛ぶように売れているとか。

 「高級畳は中国産のケースも多いので、日本由来の畳を海外に紹介するために、英語のサイトも開設したいなと。いぐさにはバニラ成分が入っていて、気分を落ち着かせる作用があるなど、その魅力は尽きません。今後は、もっとアピールしていきたいですね」と髙森さん。さらなる展望も描きます。

 「『親方の技を目で盗め』など、職人の世界は厳しい印象から若者に敬遠される傾向にあります。長年にわたる人手不足が業界の斜陽化に拍車をかけていることから、新人職人の学びをサポートしていきます」

 まちづくりの活動で出会ったライターとともに、分かりやすく、誰でも手に取りやすいマニュアルを作成しているとか。

 「畳をどう仕上げるかは畳屋ごとに異なります。当方ならではのプロセス、機械の種類などを詳しく解説しました。一畳が出来上がるまでの楽しさを知ってもらうことが目標です」

 マニュアルは工場見学者などにも広く配布するそうで、畳文化、そして八戸の素晴らしさを伝えるために、髙森さんは今日も町に出ます。
 「目指しているのは、工房を飛び出し、いつもどこかにいる畳屋さん。ゆるゆると人の縁を紡ぎ、『自分もまちづくりに参加してみようかな』というきっかけになればうれしいですね」

(取材年月:2023年1月)

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髙森えりか

老舗畳屋の畳と地域の魅力を発信するプロ

髙森えりかプロ

畳屋

有限会社髙森畳工店

創業60年を越える「老舗畳屋の娘」として生まれ、ベテラン職人である父の背中を見て育ちました。日本独自の畳文化と八戸の魅力について、まちづくりの経験やSNSを活用して世界に発信していきます。

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