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独自の製法で作る「焼干灰わかめ」など、天然の海藻を用いた各種商品を展開

恵み豊かな津軽海峡が育んだ天然の海藻を販売するプロ

小倉龍毅

小倉龍毅 おぐらりゅうき
小倉龍毅 おぐらりゅうき

#chapter1

津軽海峡で育った肉厚で磯の香り豊かなわかめやもずく、昆布を加工・販売

 青森県、津軽半島の先端に位置する今別町袰月(ほろづき)。景勝地として知られる高野崎から程近い場所に本拠を構える「袰月海宝」。創業社長である小倉龍毅さんは、目の前に広がる北の海で採れる、わかめやもずく、昆布などを加工して販売しています。

 津軽海峡は対馬暖流・千島海流が入り込み「潮の流れ速く、荒波が立ち、津軽海峡の厳しい環境に育まれた海藻は一味違います。肉厚で粘りが強く、しっかりとした歯ごたえと香り立つ磯の風味が特長で、ぜひご賞味いただきたいですね」

 自然の恵みだからこそ、収穫量は年によって異なります。近年は海水温が上昇している影響で、安定的に供給するのが難しいケースもありますが、天然の味を求める固定客も増えつつあるそうです。

 「大手のショッピングサイトから誘いもありますが、大量生産には踏み切らず、手間暇掛けた商品を自社ホームページで提供しています」

 各種ある品の中で、一推しは「焼干灰わかめ」。燃やしたわらに生わかめを載せて灰をまぶし、数時間ほど天日干しする独特の製法で作られます。約半世紀前に袰月に伝わり、その後長らく作り手がいませんでしたが、小倉さんは2018年頃から県と協力し、復活に挑んできました。焼干灰わかめは全国でも非常にまれな製品だと言います。

 「かつて、日本の食卓には当たり前のように海藻が並んでいましたが、徐々に消費されなくなっているのは残念です。カルシウムやカリウムといったミネラル分や食物繊維が含まれ、最近では、健康的な体づくりの一環で『藻活』が国内外で注目されているので、当社のおいしい海藻も知ってほしいです」

#chapter2

東京での生活を終え帰郷後、地域を盛り上げるべく「袰月海宝」を創業

 小倉さんは1943年に袰月で生まれました。青森工業高校を卒業後、旧郵政省に入省。官僚としてのキャリアを歩み始めます。

 「高校時代に建築の歴史について学んだ際、郵政省関連の建物はいずれも様式美が息づき、極めて立派であると習いました。郵政建築とも呼ばれ、興味をひかれ採用試験に応募し、幸運にも突破できたのです」

 入省後は建築部設計課に配属となり、全国の郵便局庁舎の設計や建設に携わります。58歳のときに民間の建設会社へ転職。65歳で定年するまで勤め上げました。

 退職後、マイホームがある東京で暮らす選択肢もありましたが、生まれ育った地元でゆったりした時間を過ごしたいと考えるように。自宅を娘一家に託し、夫婦2人で故郷に戻った小倉さんが「袰月海宝」の立ち上げを思い立ったのは帰郷して2年目、同郷の老漁師たちとのお酒の席でした。

 「皆が、『自分の子どもには漁業を継がせたくない』と口をそろえて言うのです。苦労をかけたくない気持ちは痛いほど分かりますが、基幹産業であり、後継者がいなくなると袰月はいずれ消滅してしまう。こんなに素晴らしい町をなくしてなるものかと、人を呼び込むために働く場所を設けたいと考えたのがきっかけです」

 地域を活性化するために小倉さんが選んだのが、町の特産物である海藻を活用したビジネスです。

 「漁協組合に入っているので天然の海藻を採取できますし、加工時に人手が必要になる。インターネットを使えば販路にも困らないはずだと見通しを立てました」

小倉龍毅 おぐらりゅうき

#chapter3

美しい自然に囲まれた袰月。地域の資源を活用して雇用を生み出し活性化

 2012年に「袰月海宝」が誕生。小倉さんは漁に赴きながら、加工や広報の面において地道に雇用を生み出しています。

 「以前、青森県内の大学生が約3年間一緒に働いてくれました。とても真面目な方で、現在は今別町でイノシシ牧場を営んでいます。後進を育成し、裾野を広げるためにも、意欲ある若手がいたらどんどん採用したいと思います」

 若い世代に生業として取り組んでもらう上では課題も。津軽海峡における漁期は波が凪いでいる3~10月が中心。オフシーズンにも収入を確保できるように、新規事業として袰月湾内でウニの養殖を構想しています。

 「漁業組合の仲間と協力し、沖のウニを穏やかな湾の中で育てるつもりです。与える海藻の質は抜群ですから、うま味たっぷりのウニをお届けできると踏んでいます。この事業がうまくいけば雇用を創出し、移住の後押しもできるはずです」と期待を寄せます。

 袰月エリアは、青く澄んだ海と緑深い山に囲まれ、夏には海水浴や釣り、キャンプなどが楽しめます。JR北海道新幹線が乗り入れる「奥津いまべつ駅」と、JR東日本の「津軽二股駅」が隣接し、鉄道の旅でも訪れることができます。

 「本州最北の駅があり、観光でも魅力を感じてもらえればうれしいですね。雪景色も美しいですし、山海の幸も堪能できます」

 80歳を超えた今も毎日忙しく過ごす小倉さん。元気の秘訣は仕事に対する意欲だとか。「自然豊かな袰月にいれば、病気にかかる暇もありませんよ」と笑顔を見せます。

(取材年月:2024年10月)

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小倉龍毅

恵み豊かな津軽海峡が育んだ天然の海藻を販売するプロ

小倉龍毅プロ

漁業

合同会社袰月海宝

荒々しくも恵み豊かな津軽海峡が育んだ天然のわかめやもずくを刈り取り、加工して販売。注目の商品は、燃やした藁にわかめを載せて灰をまぶす、全国的にも珍しい製法を用いた「焼干灰わかめ」。

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