患者と家族の心身の健康を総合的に支える家庭医学のプロ
小倉和也
Mybestpro Interview
患者と家族の心身の健康を総合的に支える家庭医学のプロ
小倉和也
#chapter1
八戸地域の大動脈、国道45号線沿いに建つ「はちのへファミリークリニック」。赤ちゃんを抱いたママから杖をついた高齢者まで、さまざまな患者が日々訪れます。院長・小倉和也さんは「家庭医」。診療科を超えて、外科・整形外科・皮膚科から精神科分野、漢方診療・子育て支援・家族の健康相談などにも対応する、青森県内では数少ない医師です。
「臓器や病気の種類に関わらず、症状が体なのか、心なのかにも関わらず、その人全体を診るのが家庭医。ケアのために症状の背景にある家族や地域、社会的な要素も含めて考えます。ほとんどの症状がここでカバーできますが、必要な場合は他の専門医に紹介しますし、患者さんが抱える問題を解決するために『社会的処方』といって、必要な社会資源や、場合によっては行政などにもつなぎます」
心身の不調を感じた時、誰でも来られる医療の窓口といったところでしょうか。
「例えばがんの疑いがある患者さんがいたとして、専門医に紹介して治療や手術をし、元気になったらまた私が診察します。残念ながら緩和ケアになった場合は在宅医療に切り替え、ご自宅で看取りまでやります。適切なタイミングで適切なところに紹介し、戻ってきたらまたこちらで責任をもって診療する。『紹介したら終わり』にしないことも大切です」
こういった家庭医が地区ごとに配置されているのが、北米やヨーロッパでは一般的なのだとか。日本でも今年、平成30(2018)年4月からスタートした新専門医制度のもとで、これからの医療に不可欠な存在として「総合診療専門医」が新設されました。
#chapter2
父は産婦人科医だったものの、10代の小倉さんは医師になろうとは思っていませんでした。進学先に国際基督教大学(ICU)を選び、哲学を専攻。しかし18歳の時、短期留学先のカナダで人生を決める出来事が起こります。
ボランティアで介護施設を訪れた時のこと。小倉さんは現地の医学生に知人の病気と抑うつ状態について相談し、「内科と精神科、どちらに診てもらえばいいのだろう?」と尋ねると、「それは”家庭医”だ」という答えが返ってきたのです。
「診療科を超えた診療をし、心のケアもする。さらに症状の背景にある生活の困りごと、家族や地域の問題まで扱う”家庭医”の存在を知り、衝撃を受けました。25年以上も前のことです。当時から今後、少子高齢化が進行することは分かっていましたから、これからの日本には必ず家庭医が必要になるだろうと。だから”医者”ではなく”家庭医”になると決めて、大学卒業後に医学部を再受験しました」
当時、日本では家庭医の存在はほとんど知られておらず、研修できる施設も限られていたため、小倉さんは米軍の病院でインターンシップができる琉球大学医学部に進学。さらに日本初の家庭医プログラムを始めた北海道家庭医療学センターでも研修を積みました。
ふるさと八戸市でクリニックを開業したのは平成22(2010)年のことです。少子高齢化による医療・介護需要の増加が見込まれる中、在宅医療を中心とする「地域包括ケア」が提唱され始めた頃でした。
#chapter3
救急医療体制が整い、訪問看護ステーションは30カ所、介護施設も100カ所以上ある八戸市。しかし小倉さんが開業した当初は、退院後、うまく在宅診療に移行できていなかった患者の往診を急に頼まれ、慌てて駆けつけると、そのまま看取ることになってしまうなど、相互の連携が取れていないための弊害が出ていました。
そこで小倉さんは職種を超えて医療・介護の現場をつなぎ、連携して在宅医療を行う多職種連携コミュニティチーム「Connect8(コネクト8)」を結成。平成27(2015)年の開始当時2件から始まった登録事業所は2年で160件以上に増えました。
クラウドシステムを使い、ログインすれば同じ患者さんの情報が共有できるほか、毎月勉強会を行うなど、地域医療の質の向上に取り組んでいます。
29(17)年にはNPO法人「Reconnect(リコネクト)」を立ち上げました。
「目指しているのは地域共生社会の実現です。子ども、子育て世代、障害者、外国人など弱者になり得る人たちを含め、お互いが自分にできることをしながら支え合う仕組みを作りたい」
多彩な活動を展開しているように見えますが、「根っこは1つ」と小倉さん。
「家庭医の考え方に『人をトータルで診る』『家族ぐるみで診る』『地域を診る』というのがあります。家庭医にとっては地域全体が“1人の患者さん”。患者さんの血圧やけがの具合を診るのと同じように、これからも地域の課題に取り組んでいきたい。そのためにも、同じ志を持つ家庭医を増やしたいと考えています」
ともに地域を支える仲間を、小倉さんは待っています。
(取材年月:2018年8月)
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患者と家族の心身の健康を総合的に支える家庭医学のプロ
小倉和也プロ
家庭医
医療法人はちのへファミリークリニック
経験豊富な総合診療医が、診療科を超えてあらゆる症状に対応。症状の背景にある家族や地域の問題にも目を向け、必要に応じて専門医や行政などへも紹介する。在宅ケアにも対応し看取りまで行うので安心。
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