PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

江戸時代創業の畳店で伝統の技を守る9代目が畳の魅力を発信

江戸時代から続く伝統の技を守る畳のプロ

小田原正典

小田原正典 おだわらまさのり
小田原正典 おだわらまさのり

#chapter1

畳の新調や表替え、裏返しに対応するほか、和洋の空間になじむ畳小物も展開

 秋田県湯沢市で江戸時代に創業し、約300年の歴史を重ねる「小田原畳本店」。9代目として伝統の技を守っているのは、畳職人の小田原正典さんです。

 「畳は、適切にお手入れすれば、30年、50年と、長く使い続けることができます。当方では、畳床はそのままで、畳表を交換する『表替え』や『裏返し』にも応じておりますので、傷みや色あせが気になってきた際はお声掛けください。へこみが出て踏み心地が悪いなど、劣化が進んでいる場合は新調をおすすめします」

 先代から、何十年と付き合いのある顧客を数多く抱える小田原さん。フットワークも軽く、マイホームの新築やリフォームで「新しく畳を入れたい」という連絡が入れば、秋田市や横手市まで足を運ぶことも。住宅だけでなく、事業所や施設などにも赴きます。

 「畳に使われるいぐさには、心身をリラックスさせる成分が含まれ、気分が落ち着いて集中力がアップする効果があると言われますし、抗菌性や消臭性にも優れています。洋風の住まいが主流になるなど生活スタイルが変化し、自宅に和室がないという話も耳にしますが、今一度、畳の良さを見直していただきたいですね」

 少しでも身近に感じてほしいと、いぐさ織りのコースターなどオリジナル品も展開。15~18センチ四方にカットして縁を装飾した敷物は、和室にも洋室にも合うと好評だとか。

 「ご希望に合わせた小物のオーダーメードも可能です。当方では、カーテンやブラインド、カーペットといったインテリアも提案しているので、畳とのコーディネートも楽しんでもらえます」

#chapter2

畳の手入れをするといぐさの香りが広がり、部屋も気持ちも爽やかに

 小田原さんは、打ち合わせから製作、納品まで、ほとんどすべての工程を一貫して担当します。

 例えば「畳の汚れが目立ってきたので、何とかしてほしい」という相談を受けた時は、まずは客先を訪問し、畳表や土台、床の状態などを細かくチェック。それぞれの状況に応じ、表替えや裏返しなど、どのような対処が必要になるかを依頼者に説明します。

 「お客さまには、費用はもとより、作業内容や使用する素材など、包み隠さずにはっきりと伝えています。ご納得いただければ日程を決め、その日の朝に畳を引き取り、夕方にはお返しするようにしています。お部屋を使えないことで、ご不便をおかけしたくはありませんので迅速に対応することを心掛けています」

 自宅というプライベートな場所に立ち入るため、清潔感のある身だしなみに整えるほか、不安や疑問には丁寧で分かりやすい言葉で応えるなど細やかに配慮。また、依頼者の多くが高齢者ということもあり、畳を出し入れする際は、要望に応じて家具のレイアウトを変えたり、ほこりをとってきれいにしたり。ちょっとした心遣いも大切にしているそうです。

 「畳が新しくなると室内にいぐさの香りが広がり、クリーンな印象になります。すがすがしい雰囲気から、『気持ちまで明るくなった』と喜んでくださる方が多いですね」

 ほかにも、防虫加工を施した畳の製作やたばこの焦げ跡の修理、古畳の処分など、「畳に関することなら、どんなことでもお任せください」と呼び掛けます。

小田原正典 おだわらまさのり

#chapter3

日本の文化である畳を未来につなぐためにも、たくさんの人に魅力を伝えたい

 「物心ついた頃から当たり前のように畳の部屋で暮らし、毎日真剣な表情で畳と向き合う父親のもとで過ごしてきました」と小田原さん。先代である父親の姿を見て育ち、自然と家業に入ることを決めていたと言います。

 高校卒業後は、埼玉県にある畳高等職業訓練校に入校し、技術の習得に励みます。3年間の課程を修了して1995年に帰郷。畳職人としての道を歩き始めました。

 「畳が古来より愛用されてきたのは、日本の気候に適しているからです。いぐさには調湿作用があり、湿度の高い夏には吸湿し、空気が乾燥する冬になるとため込んだ湿気を放出し、部屋の湿度を調整してくれるんです。さらに断熱性や保温性にも優れ、快適な空間をかなえてくれます」

 利点や魅力をたくさんの人に伝えることで、畳の普及に取り組んでいきたいと意欲を見せる背景には、業界の今後に対する懸念も。高齢化による後継者不足は、大きな課題となっているのです。

 「職人がいなくなると、長きにわたって受け継がれてきた独自の住文化まで消えてしまうことになりかねません。最近はフローリングが好まれ、定期的なメンテナンスを必要とする畳を選ばないお宅も多いようです。しかし、今はお手入れしやすいものや比較的リーズナブルな商品も登場しているので、ぜひご検討いただきたいですね」

 未来につなげていくためにも積極的に情報を発信。「畳に興味を持ってくれる方が1人でも増えることを願います」と語る小田原さんの挑戦は続きます。

(取材年月:2023年3月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

小田原正典

江戸時代から続く伝統の技を守る畳のプロ

小田原正典プロ

畳職人

小田原畳本店

畳の新調や表替え・裏返しなどのメンテナンス、インテリアの提案、畳小物の製作・販売まで、幅広い相談に対応している。たくさんの人に畳の魅力を伝え、「畳のある暮らし」を送ってもらいたいと普及活動にも意欲的。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ秋田に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または秋田テレビが取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO