ピアノ指導を通して生徒の自己万能感を育てるプロ佐々木美紀

ピアノ指導を通して生徒の自己万能感を育てるプロ

佐々木美紀

弾きたい曲を弾ける喜びが上達を後押しする、生徒の「やりたい」を主軸としたレッスンを提供

　老若男女問わず、人気の習い事の上位に位置する「ピアノ教室」。人生を豊かに彩る教養であり、身近なお稽古事として長い間支持されてきました。それ故に数も多く、近年ではニーズに応じて教室の在り方も特色化。希望に合った教室を選ぶことが、自分の可能性を広げることにつながるでしょう。

　「今日もよく来てくれたね。ありがとう」。そんな一言から始まるのは、秋田県由利本荘市にある「佐々木美紀ピアノ教室」。講師歴20年以上の実績を持つ佐々木美紀さんは、「生徒が、ピアノに向き合う時間を持ってくれることに感謝を忘れないようにしています」と優しい笑顔を見せます。
　
　佐々木さんが大切にしているのは、生徒の「やりたい」という意思を何よりも尊重すること。生徒との初顔合わせで「弾きたい曲は？」「どんな風に弾けるようになりたい？」とじっくりカウンセリングを行い、イメージの擦り合わせに時間をかけていると言います。実際、生徒からは「自分のお気に入りの曲に取り組めるから、先生のレッスンは楽しい」、そんなうれしい言葉をよく聞くそうです。

　「最近の子どもは習い事を掛け持ちし、部活にテストにと、多忙な毎日を送っています。限られた貴重な時間をレッスンに割いてくれているのに、基礎練習曲を繰り返すばかりでは、なかなか達成感を得ることができません。だから、私は生徒の『弾きたい曲』から逆算して指導方針を立てるようにしています。目標に近いことをできると楽しくて、やる気が出る。技術は自然とついてきます」

「教えられる側」の気持ちに寄り添いたいから、生徒であり続けるという選択

　ピアノ教室では、次回レッスンまでに自宅練習用の課題が出されることが一般的です。佐々木さんはこれについても独自の考えを提唱します。

　「自主練習ができるに越したことはありませんが、しないとうまくならないのでは、上達を生徒任せにしていることになります。レッスンだけでもスキルが身につくよう導くのが講師の仕事だと思っているので、安心して『今週は練習できませんでした』って言ってください(笑)」

　おおらかに語る背景には、佐々木さんとピアノが紡いできた歴史にあります。「幼少期からピアノを始めましたが、高校生になるまでは自宅にピアノがなかったため、レッスン前や空き時間に教室に出向いて練習をしていました。生徒を取り巻く事情はさまざまですから、ここに来たときにしっかり学べるよう工夫しています」

　生徒に寄り添い、サポートする佐々木さんですが、当初は趣味としてピアノに親しんでいたそう。高校生のときに通っていた音楽教室の代表から後押しされたのを機に、ピアノ講師育成コースのある専門学校へ入学。寮で朝から晩まで練習漬けの日々を経て、弱冠19歳で指導者としての道を歩み始めます。

　以来、キャリアを重ねていますが、実は現在もピアノの師匠に師事。その理由を「自身の成長を止めないため」、そして「教えられる側の気持ちを忘れないため」と説明します。

　「私自身が誰かの生徒であり続けることで、生徒としての視点を持った講師でいられるんです。だから、どんなに忙しくても人に習う時間は確保したい。一生勉強です」

上達がゴールではない　自己実現のためのツールとしてピアノに親しんでほしい

　奏者として鍛錬を続けるストイックさに対し、生徒には柔軟な価値観で向き合うという、ピアノ講師として一線引いた姿勢を保つ佐々木さん。そこには「ピアノは自己実現のためのツール」という泰然たる矜持があります。

　好きな曲を演奏できるようになること。ピアノという特技を持つこと。自分の努力で「なりたい自分になれた」という実感を得ることが、生徒のこれからの人生を豊かにすると佐々木さんは信じています。

　「もちろん、ピアニストになりたいという方には適した指導を行います。でも、美しい旋律を奏でるようになることだけが全員の最終目標だとは思っていません。教室に来る前は引っ込み思案だった子が、ピアノを弾けるようになったことで自信がつき、前向きな性格になる。生徒の人間的な成長に立ち会えるのが最大の喜びです」

　佐々木さんは教室に来た生徒に必ず聞くことがあります。それは「あなたの夢は何？」という質問。まだ決まっていない、と答える生徒には「じゃあ何になりたいか一緒に考えよう」と発破をかけるそう。

　「人は夢を語ることで、自ずと意識するようになります。その環境でピアノの上達という成功体験を積み重ねれば、大きな夢にも手が届くと希望が持てるはず。ピアノをきっかけに『きっとできる』という一生ものの万能感を育んでほしいですね」

　ピアノ講師という枠にとらわれず、誰かの夢の「伴走者」でありたい。佐々木さんの教室からは今日も伸びやかな音が響きます。

（取材年月：2022年4月）

夢に近づく実感が自分を変える！ピアノを通して一生ものの自信を育みます

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