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組織の発展に役立つ問題解決の手法を広く伝え、世の中に貢献

さまざまな企業・団体の力になる問題解決アドバイザー

古谷健夫

古谷健夫 ふるやたけお
古谷健夫 ふるやたけお

#chapter1

やるべきことをやり、質を維持向上させるマネジメントサイクル「SDCA」を提唱

 「品質管理はものづくりの現場だけでなく、すべての業種に利用できる方法論です。長年の経験を多くの人に伝え、世の中の役に立ちたいと考えています」

 こう話すのは、愛知県豊田市の「クオリティ・クリエイション」代表の古谷健夫さん。問題解決アドバイザーとして組織の課題に向き合い、ビジョンの実現に貢献してきました。

 ものづくりの現場だけでなく、事務処理の方法を見直すなど全社を通じて業務の質を高め、人やお金といった資源を効率的に活用して経営の質を上げる「TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)」にも精通。
 実践にあたり重視しているのが、マネジメントサイクル「SDCA(Standardize-Do-Check- Act:維持向上)」です。やるべきことをきちんと実行する力を培うもので、計画・実行・評価・改善の「P(Plan)DCA」を支える上でも重要だと言います。

 「例えば職場が散らかり、ほこりがたまっているとします。掃除すればきれいになりますが、美しい状態を維持できなければまた汚れますよね。SDCAではStandardize(標準化)に取り組み、“いつもの状態”を保つことに重点を置きます。日常管理ができて初めて改善・革新を図れるのです」

 古谷さんは、TQMの普及に努め、企業の生産性向上を後押ししています。
 「ある企業では、目標を組織一丸となって達成する『方針管理』をトップに説き、現場では、小集団、いわゆるチーム力を上げる『小集団改善活動』をお手伝いしました。その結果、社員一人一人が生き生きと働けるようになり、モチベーションアップやチームワークの強化が図られました」

#chapter2

トヨタでの経験を元に、課題を乗り越える方法を多くの企業・団体に伝授

 古谷さんは東京大学工学部を卒業後、トヨタ自動車に入社し、鋳造工程の生産準備やエンジン設計などに従事。2001年からTQM推進の部署や責任者を歴任し、トヨタの総帥だった豊田章一郎氏の元、TQMをグループ会社全体に浸透させる役割を担ってきました。

 「転換点となったのは2012年、名古屋大学病院から品質管理を医療現場に取り入れたいと要望を受けたことでした。半信半疑で指導したところ、医師から好評を博したのです。品質管理は製造業に限らず、普遍的に使えると気付きましたね」

 トヨタを退社後、2019年に会社を設立。以来、問題解決アドバイザーとして企業をはじめ病院、官公庁などでもコンサルティングや研修を行い、意識改革や組織づくりのノウハウを伝えてきました。

 「ただ、組織の一人一人に問題を解決する素養がないと、継続的に対処することができず、せっかくの改善も長く続きません。“手取り足取り”になりすぎないよう、考える力を養うサポートを心掛けています」

 品質管理の可能性を見いだすきっかけとなった医療機関にも赴き、患者の誤認、投薬ミスといった間違いが許されない臨床の場でSDCAの手法を伝授。医師からは「標準化で異常をいち早く発見でき、医療の質を上げるのに有用であることが実感できた」と評価されたそう。

 古谷さんは世界保健機関(WHO)の依頼を受け、南太平洋の島国・キリバス共和国の看護関係者に対しても助言。子どもの予防接種率の向上や医薬品不足の解消についてアドバイスしています。

古谷健夫 ふるやたけお

#chapter3

デミング賞の審査委員を務める傍ら、書籍を執筆しSDCAを分かりやすく解説

 品質管理の専門家として国内外で活躍する古谷さん。日本科学技術連盟がTQMで最も優れた企業に贈る「デミング賞」の審査委員を務めています。
 文筆業にも励み、日本品質管理学会規格のテクニカルレポート「品質不正防止」の原案作成に携わったメンバーの一人として、2023年の日経品質管理文献賞を受賞しました。

 一般向けの書籍も手掛け、トヨタ時代には「“質創造”マネジメント―TQMの構築による持続的成長の実現」(日科技連出版社)を監修・執筆。「問題解決の実践―働く喜びに溢れる社会を目指して」(同)はさまざまな組織における問題解決についてまとめた本で、帯には豊田章一郎氏の推薦文が付いています。

 2022年には、SDCAを分かりやすく解いた「お客さまの満足を高めるSDCA」(同)をリリース。「一般の人にも知ってもらいたいと思い、ずいぶん前から構想を温めていた本です」と語ります。

 さらに、講演で全国を飛び回り、企業の社員研修や看護師が集まった学会など、さまざまな場で知見を披露しています。

 近年は、学校で問題解決を教えることにも注力。愛知県教育委員会と連携して教材づくりに取り組み、2024年からは古谷さんの考えに賛同した高校で授業が試行されるとか。

 「世界の先進国と比べ、日本の生産性は下降の一途をたどっています。原因は、問題解決能力が備わっていないからではないでしょうか。学校で学ぶことで、子どもたちに生きる力を身に付けてもらい、ひいては人生を楽しく過ごすことにつなげてほしいと願っています」

(取材年月:2023年10月)

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古谷健夫

さまざまな企業・団体の力になる問題解決アドバイザー

古谷健夫プロ

問題解決アドバイザー

株式会社クオリティ・クリエイション

企業や団体が抱える課題は千差万別。自動車メーカーで培った豊富な経験知を生かし、製造業で重視される品質管理・マネジメントの手法を応用、サービス業・医療・行政など多業種にも導入することで問題解決に導く。

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