PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

ワイン生む土壌ごと味わって

ワインの美味しさを伝えるプロ

今村英香

今村英香 いまむらひでか
今村英香 いまむらひでか

#chapter1

ブドウの良し悪しが味の決め手

 「ワイン県」山梨で造られるワインは、海外からも注目され高い評価を得ています。一方で、「ワインの楽しみ方が分からない」や、他の酒類と比較して「気軽に手に取りにくい」といった声も聞こえてくるようです。
国内有数のワイン産地、甲州市勝沼地区。ブドウ畑の間には30余りのワイナリーが点在しています。その一つ、同地区鳥居平にあるシャトー勝沼は、1877(明治10)年創業の老舗ワイナリー。専務取締役の今村英香さんは、ソムリエ(日本ソムリエ協会認定)でもあり、自社畑でブドウ栽培を手掛ける生産者でもあります。「今のブームの中でも、ワインは敷居が高いと思われがちです。そのような誤解を払拭(ふっしょく)するため、多くの人に原料のブドウを栽培する過程から知ってもらい、ワインの裾野を広げていきたいと考えています」と、ワイナリーのソムリエという立場で日々奮闘しています。

今村さんは良いワインについて、「時代は流れても、基本は昔から変わっていません。ブドウの良し悪しがワインの味を決め、良いブドウを作るには健全な土壌と樹の剪定(せんてい)が何より大切です。土壌の特性を生かしたブドウを育て、いかに良い果汁というバトンを醸造場に渡せるかにかかっています」と説明します。

#chapter2

樹の剪定から収穫までを体験

「こだわりのワインづくりは、葡萄(ぶどう)づくりから」と考える同ワイナリーでは、10年前から「ファーム トゥー ボトル」と銘打った「ぶどう造り体験プログラム」を提供しています。約70㌶の鳥居平エリアにある自社畑で1~11月の11カ月間、各月ごとに参加者を募り、甲州ブドウの剪定から収穫、瓶詰めなどの作業を実施。農家や醸造家との会話、景観を楽しみながら、体験から紡ぎ出されるワインのストーリーを感じてもらおうという企画です。
作業を経験した参加者は一様に、「1年間、こんなに手間暇をかけてブドウを育てているとは思わなかった」と驚くそう。「これまで1本2000円もするなんて高いと感じていたが、3000円でも安いくらい」と、ワインを見る目もすっかり変わります。首都圏からの参加者がほとんどですが、中には福岡県からわざわざ通ってくるファンも。「年間パスポートを使って毎月のように来る人もいらっしゃいます。おいしい空気と美しい風景の中で汗を流した後は、併設したレストランでワインと料理のマリアージュを堪能します。みなさんリフレッシュして、都会に帰っていかれますよ」と、今村さんはうれしそうに目を細めます。

今村さんは同ワイナリ―の4代目。幼い頃から両親の後についてブドウ畑に行ってあぜ道で遊んだり、中学生になるころには店でワインを販売したり、家業を手伝いました。「まだ子どもでお酒も飲めないのに、店番をして『甘口はこちら、辛口はあちらにあります』なんて言いながら売っていました」と振り返ります。
今村さんからは「父の教えによると」というフレーズが何度も飛び出し、3代目である父・英勇さんから、土壌管理とブドウ栽培について、たたき込まれてきた様子がうかがえます。「樹を剪定するのは1年に1度。その1回に集中して枝を切りなさいと常に言われます。何も考えずに切るのは、ただの枝切り。頭を使って切ることが剪定で、一生懸命取り組めば、1年で5年分のことが勉強できると教えられました。今でもなかなか合格点はもらえていないのですが」と笑います。

今村英香 いまむらひでか

#chapter3

お気に入りの味見つけて

今村さんは約20年前にソムリエの資格を取得しました。当時はまだ、フランスやイタリア、ドイツをはじめとする外国産ワインが主流でした。その後、日本のソムリエやワイン醸造に関わる人たちの努力もあり、国産ワインの見直しが進み、さらに、ワイナリーを巡って醸造工程の見学や試飲をして、ワイン産地を丸ごと楽しむ山梨発の「ワインツーリズム」も始まりました。

今村さんは「甲州種ワイン」の魅力について「例えばフランス産ワインのように単体で力強く主張はせず、飲む人に寄り添い、癒やしてくれるワインです」と説明。「日常の食卓に花を添えてくれ、元気がないときは『頑張って』と励ましてくれるし、逆に頑張ったときは『よくやったね』と声を掛けてくれる気がします」

「甲州種ワインは日本食に合うし、健康にもいいお酒。お客さまに相談されたときは、『甘口だったら鳥もつやほうとうに、辛口はそばに合わせたらどうですか』とお勧めしています」(今村さん)。ワインのテイストに合わせてグラスを替えると、また味わいも変わってくるそうですが、「家庭では普段使いのコップでも湯飲みでも十分です。暮らしの中でワインを積極的に味わって、どうぞ好みのワインを見つけてください」。

(取材年月:2020年3月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

今村英香

ワインの美味しさを伝えるプロ

今村英香プロ

株式会社 シャトー勝沼

明治初頭、勝沼町で葡萄の栽培を手がけていた初代により、「今村葡萄酒醸造場」を設立。勝沼での歴史と伝統あるワイナリーです。自営の畑を持ち原料葡萄の栽培からワイン醸造、そして販売まで一貫して行っています

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ山梨に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または山梨日日新聞社が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO