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ロープワークを駆使して樹木を整える専門家「アーボリスト」として活動

人と自然の共生を目指すツリーケアのプロ

安藤祐樹

安藤祐樹 あんどうゆうき
安藤祐樹 あんどうゆうき

#chapter1

大きく育ち過ぎた木を健やかに美しい樹形を保つため、細やかにメンテナンス

 天空に向かって悠々とそびえ立つ大木、枝を方々に伸ばし繁茂した立木など、大きく育ち過ぎた木々を整えるアーボリスト。樹種による生態やコンディションを適正に診断する知識と、ロープを駆使して木に登るツリークライミングの技術を習得した樹木の専門家です。

 「背の高い木をメンテナンスするに当たって、狭小地や傾斜地、住宅密集地のように大型車両が入れない現場は少なくありません。クレーン車などが使えない場面こそ当方の出番。身一つで高木にアプローチします」

 そう話すのは、山梨県北杜市の「Forest庵 – Ann」の代表・安藤祐樹さん。「認定樹護士アーボリスト」を保有し、山梨県内や長野県の中信地域で剪定・伐採を受託。個人や事業者から寄せられる「庭木が隣の敷地に越境して迷惑をかけている」「枯れ枝が落ちてケガをしないか心配」といった声に応えています。

 「塀がある、隣家との距離が近いなど、現場によって条件は異なります。小分けにして切り、落とさずに枝をつり下ろすなど、建物に傷をつけたり、事故が起きたりしないよう十分に配慮しています」

 巧みなロープワークと高所で枝を払う様子は興味深く、作業していると足を止めて見入っている通行人も多いと言います。

 「代々受け継いできた樹木は皆さまが大事にされてきた財産です。木は生きていますから、お手入れに際してはじっくりと木と向き合い、対話しながら丁寧に手を施します。樹勢を妨げることがないよう混みあった枝葉を整理して風や光を取り入れ、健康で美しい姿を保てるように仕立て直すことを心掛けています」

#chapter2

八ヶ岳高原のふもとで育ち、人と自然の共生を目指しアーボリストの道へ

 1995年に神奈川県川崎市で生まれた安藤さん。2歳のときに家族で移り住んだ北杜市小淵沢町で育ちます。

 「父が森林組合に勤め、植物の栽培や管理に携わるほか、一般向けに自然と触れ合うイベントを手掛けていたので、私も友達と一緒によく参加していました。緑あふれる野山はあって当たり前の存在でしたから、今思えば非常に恵まれた環境でした」

 雄大な八ヶ岳高原のふもとで過ごし、成蹊大学へ進学するのを機に東京へ。卒業後は故郷に戻りたいと考え、地元の金融機関に就職します。

 帰郷して再び地元で暮らすようになった安藤さんは、すぐに違和感を覚えるようになります。至るところで木々が切り倒され、太陽光パネルが並ぶようになっていました。

 「山や森は管理が難しいだけの厄介者だと言われているような気がしました。一度森を伐採してしまうと、元の状態へ戻すために数十年はかかります。人と自然がもっとうまく共生できる手だてはないかと思案するようになったのです」

 2018年2月に、樹上作業の技能を備えた証しとして国際的に認定される「ツリーワーカークライマースペシャリスト」を取得。40代で独立し、アーボリストとして活動していた父・義樹さんのもとで実務を重ねます。

 「父は常に、粛々と安全に業務を遂行する大切さを説いていました。奇をてらった、ダイナミックな技を披露するのが仕事ではない、命ある木を切らせてもらうのだから木に失礼のないように心を配ることを教わりました」

安藤祐樹 あんどうゆうき

#chapter3

講習会や体験会などを開催し、小淵沢の豊かな自然を守り次世代へ継承

 父親の下で修業を積んだ安藤さん。家業を離れ、2021年10月に「Forest庵 – Ann」を立ち上げました。

 「父はこの業界の第一人者ですから、顧客も弟子も全国に大勢います。父と一緒に仕事をしていれば楽かもしれませんが、ぬるま湯に浸っていては私自身の成長はないと考え、独り立ちを選びました」

 樹護士として尊敬する父の背中を追いながらも、あえていばらの道を選んだ安藤さんを父親も応援。今でも手が足りないときは互いに協力し合っているそうです。

 日々精力的に案件に取り組み、各方面でスキルを発揮。世界自然遺産に登録された小笠原諸島に赴いたこともあります。

 「森林生態系保護地域に入り、在来種の育成を妨げる外来種を伐採しました。独自に進化した固有種が植生する世界に触れ、貴重な経験ができました」

 市の面積の7割強を森林が占める北杜市で、林業従事者の一助になればと樹上のレスキュー訓練を実施。レクリエーショナルツリークライミングの講習会や、植物に親しみたい人の体験会も開催しています。また、歴史ある神社では鎮守の森を保全するための提案も行っています。

 「職務を通じて小淵沢の豊かな環境を守り、次代につなげたいという思いがあります。いずれは地元の小学生を対象に、自然と触れ合う野外活動を企画することも検討しています。遊びを通じて子どもたちに自然の素晴らしさを知ってもらいたいのです。生命の営みを肌で感じ、愛情深くいつくしむ心を育てていきたいですね」

(取材年月:2025年4月)

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専門家プロフィール

安藤祐樹

人と自然の共生を目指すツリーケアのプロ

安藤祐樹プロ

アーボリスト(樹木管理)

Forest庵 – Ann(フォレストアン)

国際資格「Certified Tree Climber」「樹護士アーボリスト」の資格を取得し、安全に樹上作業を行う。ロープワークを駆使し、クレーンや重機が入れない場所にある高木の剪定・伐採も請け負う。

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