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「常春システム」で、雪国の暮らしを快適にしたい

雪国の暮らしを楽にする屋根融雪のプロ

菅藤広一

有限会社菅藤組 代表取締役 菅藤広一さん
「常春システム」を施工した建物(右)と施工なしの建物(左)。雪を解かす効果が分かる

#chapter1

強い思いを込めて開発した、オリジナルの屋根融雪装置

 雪国として知られる山形県の中でも、尾花沢市は特に積雪の多い場所です。飛騨の高山、越後の高田と並んで「日本三雪」に数えられるほどで、平地でも2㍍以上積もることがあるほど。

 雪は尾花沢に、豊かな水資源をもたらします。特産の「尾花沢スイカ」や尾花沢牛、コメなどは、きれいで豊かな水があってこそ、高い品質と市場の評価につながっています。一方で、生活面では、屋根の雪下ろしや、積もった雪の片付けなどを、負担に感じている住民が多い現実があります。

 「雪下ろしや雪かきの負担を減らすことができれば、雪国の暮らしはもっと豊かで、楽しいものになるはず」。尾花沢市の建設業「菅藤組」で代表取締役を務める菅藤広一さんは、この思いを屋根融雪装置「常春(とこはる)システム」として形にしました。

 温水が通るパイプと一体成型したアルミパネルを屋根に取り付け、雪が降っている時は、ボイラーで暖めた不凍液を循環させます。降った雪、積もった雪は解けてしまうため、建物に大きな負荷をかけるほど積もったり、下に落ちてくることはありません。

 「雪下ろし中の事故でけがをしたり、死亡する事故が毎年のように起きています。屋根から落ちてきた雪を片付けるのも、特に高齢の人には大きな負担。何とかしたいと、ずっと思っていたのです」。

 雪国の「豊かで快適な生活」を求めて、さまざまな挑戦を続ける中から生まれた「常春システム」。豪雪に打ち勝つ性能と、リーズナブルな価格設定が、評判になっています。

#chapter2

大雪に勝つ「尾花沢仕様」を手の届く価格で

 このページに掲載した写真は、「常春システム」を施工した建物と、施工していない建物を比較したもの。施工した右側は、ほとんどの雪が解けている一方、施工していない左側は、屋根につながるほどの雪が積もっています。

 「常春システム」は、温水が通るパイプと一体成型したアルミパネルと、屋根に取り付けるためのブラケット、熱源のボイラーで構成されます。改良を重ねて、最小限の構成で十分な効果が発揮できるようになりました。

 システムの核となるパネルは、山形大学の横山孝男名誉教授と、山口県にあるメーカーが開発したもの。地下水熱を活用した融雪の実験に用いられ、菅藤さんも協力しました。その際「屋根の融雪に使えないか」と思いつき、最初は事務所の屋根全体にパネルを敷き詰める方法を試みました。熱源は、灯油ボイラーを採用。「一晩で50㌢以上積もることもある」尾花沢の大雪に勝つパワーを確保するためです。

 効果があった一方、コストの問題から、「普及は難しいだろう」と考えた菅藤さん。今度は、落雪をコントロールするため屋根に取り付ける「雪止め金具」のような形状で試したところ、十分な効果が得られました。ブラケットの形状、パネルの取り付け角度などは何度も改良を重ね、現在に至っています。

 最初に取り付けたのは、事務所の近所にある店舗兼住宅。「雪下ろしをする人が単身赴任で不在になるので、雪対策を考えてほしい」との要望に応えました。取り付けた当時はまだ開発中だったので、毎年のように改良を加えました。徐々に評判を呼び、一般住宅に加え、「工場の、トラックが出入りするところに付けたい」「別荘に付けたいので、遠隔操作できるようにならないか」といった相談が寄せられているとのこと。さまざまな要望を「どうしたら実現できるか」、挑戦が続いています。

 初期費用についても、尾花沢市の「市ふるさと暮らし応援事業(雪対策への助成)」が適用される価格設定としました。「いろいろな融雪装置が出ていますが、『常春システム』は『尾花沢仕様』なのが強み。普及を図り、雪国の暮らしをもっと快適にしていきたい」と菅藤さんは力説します

「常春システム」を取り付けた屋根。アルミパイプ内のパイプに温水を通し、その熱で雪を解かす

#chapter3

人との「つながり」から、雪国の元気を生みだす

 建設業として、生活に密着した仕事を多く手掛けながら、地域おこしに積極的に携わってきた菅藤さん。雪下ろしのボランティアツアーを企画したり、峠道のかんじきツアーで案内役を務めるなど、雪を積極的に生かした楽しみ方を発信してきました。融雪パネルを開発した山形大学の横山孝男名誉教授とも、こうした活動を通して知り合いました。

 「雪かきの道具を開発したので、使えるか実験させてほしい」。ある時、大手メーカーの社員が菅藤さんのところを訪れました。深く重い尾花沢の雪に、その人が作った道具は歯が立ちませんでした。翌年リベンジに挑みましたが、同じ結果に。そうしたやり取りの中から、北海道にある工場への融雪システム導入に至りました。

 取り付けた方々から、さまざまな感想や、ボイラーの温度設定などに関する情報が寄せられています。それらを基に、「常春システム」の改良は続きます。「人々との『つながり』を大切に、この地に根ざした仕事をしていきたい」。持ち前の行動力が、雪国の暮らしに変化を生み出しています。

(取材年月:2021年3月)

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菅藤広一

雪国の暮らしを楽にする屋根融雪のプロ

菅藤広一プロ

屋根融雪装置の開発および設置工事

有限会社菅藤組

独自に開発した「常春システム」は高効率・低コストで、既存の屋根に簡単に取り付けることができます。危険を伴う雪下ろしや、軒下の雪かきの負担を軽減することが可能です。

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