一人一人のやる気を生かす職場環境改善のプロ斉藤ひろ美

一人一人のやる気を生かす職場環境改善のプロ

斉藤ひろ美

体験も交え、やる気を引き出す方法を指南

国を挙げての「働き方改革」が推進されています。その目指すところは「誰もがいきいきと、能力を生かして活躍できる社会」です。

　一方、長時間労働や、セクシュアルハラスメント（セクハラ）、パワーハラスメント（パワハラ）などに起因する心の問題を抱え込み、健康を害したり、退職に追い込まれたりする人が後を絶ちません。そうした人たちに寄り添って、ともに解決策を探るとともに、企業の相談に対処したり、改善策を助言する役割を担うのが、産業カウンセラーです。

　「人口が減少局面にある今、企業にとって『人』はとにかく大切。働き方改革も、まずは『人を大事にする』姿勢が欠かせません」。山形市で「Green & heart」を営む斉藤ひろ美さんは、こう強調します。主に企業を対象に、やりがいのある職場環境づくりについてアドバイスをしたり、講師として研修を行うなどの活動を展開しています。

　斉藤さんの強みは、「コミュニケーション」の側面から改善策を考え、やる気を引き出すこと。自ら極度のあがり症に悩み、それを克服した経験を下地に、アドバイスを行っているのです。

　斉藤さんの助言で「自信がついた」「前向きになれた」という人が、職場で輝きを取り戻す事例も多いといいます。実体験に基づいた独自のアプローチが、「やる気」を引き出してくれるのです。

自らの克服体験と「気づき」を生かして

　山形市内の、貸しスペースの一室で、斉藤さんが講師を務める「コミュニケーション力アップ講座」が開かれていました。「人前で話すのが苦手」「緊張がひどく、自信が持てない」という参加者を前に斉藤さんが「大丈夫よ、絶対克服できる。私だってそうだった」と話し始めます。

　斉藤さん自身、幼少時に失敗した経験がトラウマとなり、極度のあがり症、赤面症に長く悩まされてきました。「授業で当てられると、全身が真っ赤になってしまう。また失敗するのではないかと怖くなってしまう。しかし、このままでは何もできないと思い立ち、克服する方法を自分で考えました」。

　なぜ失敗するのがいやなのか。失敗して笑われることが「自分を否定された」と感じたからでした。それなら、最初から「笑われるように演技」すればいい。それで笑われたら、自分が肯定されたことになるー。自分自身を分析し、発想を転換できるようになって初めて、人前で話すのが苦でなくなりました。営業職にも挑戦し、試行錯誤する中、さまざまな「気づき」もありました。

　苦手を克服した斉藤さんは、周囲の人たちに相談事を持ちかけられる機会が増えました。「ありがとう」と感謝されることが多くありました。アドバイスによって相談相手が自信を付ける様子を見て、自分自身も元気になっていく感じがしました。知人の勧めもあり「専門知識を身に付け、もっと多くの人の、幅広い相談に対応できるようになりたい」と思うように。そこで通信教育で資格を取り、カウンセラーとしての道を歩み始めました。

　さらに専門的な知識を得るため、現在、大学の通信教育部で心理学を学んでいます。自分が扱った事例が学問的に裏付けられる機会が多く、忙しい中にも「学ぶ楽しさ」を実感しています。

　ちなみに、斉藤さんが自己流で取り組んだ、あがり症の克服。「ロゴテラピー」という心理学の考え方に、通じるところがあるのだそうです。

社会が円滑に機能できることを願って

　今の仕事の主軸「企業向け産業カウンセリング業務」は、従業員が対象の個別カウンセリングや、自己PR・情報伝達に関する研修、幹部が対象のハラスメント研修など、要望に応じて幅広く対応しています。

　個別カウンセリングでは、とにかく相手の話を聞く「傾聴」の姿勢と、話しやすい雰囲気づくりを心掛けています。

　企業・団体は、そこで働く人、また地域にとっても、重要なコミュニティーです。一方、コミュニティーに属する個人や組織が問題を抱えていては、社会が円滑に機能することは困難になります。　「さまざまな問題の根底に、『生きている実感』が持てない、ということがあると感じます」という斉藤さん。カウンセリングや研修を通し、生きている実感、仕事のやりがいを感じられる社会にしたいーとの願いが、仕事に向き合う土台です。

　「最終的には、私の仕事がなくなることが理想。その目標に向かって、自分を磨きながら、『やる気』『やりがい』を引き出していきたい」。前を向いて語る口調が、元気を与えてくれるようでした。

（取材年月：2020年9月）

生きている実感、「やりがい」が感じられる社会へ

体験も交え、やる気を引き出す方法を指南

自らの克服体験と「気づき」を生かして

社会が円滑に機能できることを願って

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