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課題の字を自分で決めるレッスンで自主性を育み、のびのびと楽しく学べる書道教室を開催

自由と楽しさで「やりたい」心を育む書道家

河邊真

河邊真 かわべしん

#chapter1

学年ごとの課題はなし!自分が書きたい字を通してステップアップ!

 「書きたい!と思う字を通して、のびのびと楽しく書を学びましょう」と呼び掛けるのは、「アトリエわんぱく」を主宰する書道家で講師の河邊真さん。都営三田線板橋区役所前駅からほど近い場所で、月3回、木曜日に書道教室を開催しています。

 「学校の課題を上手に書きたい」「結婚式の祝儀袋や芳名帳をきれいに書けるようになりたい」といった声に応え、毛筆や筆ペン、硬筆(鉛筆など)、希望に合わせてレッスン。就学前の子どもから大人まで幅広い層が集います。

 自分で考えて選ぶ自主性を重んじ、学年ごとに課題は設けていません。その日に書きたい字を書きます。漢字や平仮名から選び、その場で解説しながら手本を書きます。筆遣いや抑揚、バランスなどそれぞれのニーズに合わせて手ほどきします。終わりを見極めるのも自分で、「これでOK」と納得できたら自分で作ったハンコを押して、仕上げます。

 生徒は小学生が中心で、夏は「Tシャツやうちわに筆で字を書こう」、お正月は「大きな紙に大きな筆で大きな字を書こう」など、季節ごとのワークショップも充実。イベントのみの参加も可能です。

 「大きな紙に大きな筆で大きな字を書こう」という企画は、全身を使ってダイナミックに表現します。また、ダンスをしている子から「自分で書いたTシャツで踊りたい」とリクエストがあったことから、Tシャツイベントはスタートしました。

 「月謝に加え、単発の都度払い制も導入し、午後3時~6時の開室時間の中で都合がいいタイミングで通ってもらえます。先日は8年前に辞めた子が、『先生、また習字を教えて!』と来てくれました。思い立ってパッと足を運んでくれる場所になれていることが、うれしいですね」

#chapter2

“歌って踊って走る書道家”として……

 「書道との出会いは小学2年生のとき。伝統文化としての奥深さと、自己表現の楽しさに魅了されました。社会人になっても稽古に通い、結婚後は夫の転勤先でも教室を探して学び続けました」

 転機となったのは、わが子が通う幼児教室。園長先生から卒園証書の筆耕を依頼されたのを機に、園長先生に書道教室開講を持ち掛けられ、2008年に講師業をスタートします。

 「『自由に書いてみよう』を合言葉に、大きなホールに長机と座布団を並べ、にぎやかな中で集中してレッスン終了後、ホールで遊んで帰る子もいました。自由に書に向き合う空間が『アトリエわんぱく』の原点です」

 幼児教室の閉室に伴い、2024年に現在のアトリエへ移転。講師になって驚いたのは、「失敗か成功か」にとらわれる子どもが多いことでした。正解ばかりを求める風潮に、河邊さんは疑問を呈します。

 「私が目指してほしいのはただマルをもらうのではなく、自分が納得できる字を書けるようになること。その都度『ここをもう少し太くするとカッコいいと思うけど、どうする?もう1枚書く?』と声を掛け、判断は本人に委ねています」

 生徒の意思を尊重し、数枚で終わる人もいれば、たくさん書く人もいます。「この線は力強くていいね」「次はもっとこうしてみよう」と前向きな言葉でアドバイスしています。

 「私自身、声楽、フラメンコ、マラソンと多趣味で“歌って踊って走る書道家”と名乗っています。分野は異なっても全て『書』ともつながっていることを実感します」

#chapter3

特性を強みに。特別支援教室専門員も務め、多様な子どもたちの成長をサポート

 春にはアトリエでの作品展、秋には板橋区民書道展に出展するなど、日頃の成果を披露する場も用意。多くの人が書道に親しめるよう、オンラインレッスンや出張講座にも力を入れたいと話す河邊さん。都内の小中学校で、子どもたちの成長をサポートする特別支援教室専門員も務め、保護者向けの講演会も行っています。

 「私の子どもも発達に特性があり、幼少期は不安を抱えていました。多様なお子さんを迎え入れ、特性に寄り添いながら、それを強みとして伸ばすお手伝いができればと考えています」

 教室にはさまざまな個性を持つ生徒が在籍。河邊さんは一人一人が自分らしく過ごせるように、その日の心のコンディションを読み取り、優しく寄り添います。

 「レッスンの最初は墨をすります。音に注目しながら手を動かし、徐々に増してくる香りや粘り、染まっていく墨の色を五感で感じて、まずは書く姿勢を整えます。そこから自分のペースで取り組み、ゴールを自分で決めることを大切にしています」

 体調面などから出歩くのが難しい高齢者のために、老人ホームへ出向くことも構想。書道を愛するすべての人にとって、開かれた場所でありたいと語ります。

 「書を通して自らを表現する喜びを知り、自信を育んだり、やりがいを見つけたり。心豊かな人生を送っていただくことが私の願いです」

(取材年月:2025年12月)

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河邊真

自由と楽しさで「やりたい」心を育む書道家

河邊真プロ

書道家

アトリエわんぱく

年齢やレベルを問わず、書きたい字を自分で決める自由な書道教室。生徒の自主性を尊重し、特性にも寄り添いながら柔軟に指導。自分のペースで通える都度払い制も導入し、安心して自己表現できる場づくりを目指します

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