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教育界と産業界をつなぎ、子どもたちが「社会で生きる力」を養うキャリア教育を提案

教育界と産業界をつなぐキャリア教育コーディネーター

生重幸恵

生重幸恵 いくしげゆきえ

#chapter1

コンサルティングやコーディネートを通じて、生涯にわたる「まなび」を支援

 「わが子のPTAをきっかけに学校と関わり、先生方の頑張りを拝見する一方で業務負担が重い現状に課題を感じました。子どもたちの成長を支え、輝ける未来を切り開いていく一助になればと2002年に法人を立ち上げ、子どもから大人まで生涯にわたる『まなび』を応援しています」

 そう話すのは、「スクール・アドバイス・ネットワーク」理事長の生重幸恵さん。東京都杉並区を拠点に、教育関連のコンサルティングや人材育成、家庭教育のサポートなどに尽力。都内各区の教育委員会と協働したり、国の教育関連事業に参画したり、豊富な実績を持ちます。

 「産業界と学校現場を結ぶコーディネートもしています。小・中・高校生らが進路を見いだし、自立する力を養う『キャリア教育』を支援したいという企業の方々が、自社の専門性やノウハウを生かして仕事の意義などを教えるプログラムも構築します」

 業種は、流通・小売業やメーカーなど多岐にわたり、社員が各校に赴く出前授業、児童や生徒が事業所に訪れる来所授業のほか、全国に向け教材も用意しています。

 「例えば、住宅設備会社さんの出前授業では、キッチンなどの蛇口を通じて、多くの人が使いやすいように配慮したユニバーサルデザインを学習。高齢者や障がい者など多様性に関する理解を深め、自分たちにできることを考えます」

 一般消費者に商品やサービスを提供する「BtoC」、企業同士で取引をする「BtoB」と、ビジネスの仕組みに触れる機会を創出。子どもたちが普段目にすることがない事業内容を伝えることで、プロモーションにもなると言います。

#chapter2

キャリア教育は子どもの可能性を広げ、講師役を担う社員のスキルアップにも

 生重さんは、文部科学省や経済産業省が2000年代初頭から進めてきたキャリア教育の制度設計や資格創設にも携わってきました。急速に進む少子化やAI(人工知能)の進化などにより産業構造が変化しているため、早い段階から「働くこと」について考える重要性が増していると提言します。

 「子どもたちが見ている社会は、ほんの一部でしかありません。ITツールの普及で人と人がじかに対話する時間も減っています。親や先生以外の大人と交流し、『世の中にはこんな仕事があるのか』『面白い生き方をしている人がいる』など、自分の可能性を広げる契機にしてほしいですね」

 キャリア教育は、企業の従業員のコミュニケーションスキルやモチベーションのアップにも有効だとか。
 「小中学生に分かるように解説するのは意外と難しく、実際に講師を担当した方からは『相手に理解してもらうために必要なことは何か見えてきた』、また話す内容を考える過程で『自分と仕事の関係を見つめ直す良い機会になった』といったお声をいただいています」

 来所授業で事業所を訪問した子どもたちは、大人が気づかないような企業の強みを発見することもあるそう。
 「ある生徒は、食品工場で従業員の丁寧な手洗いに強い関心を抱きました。帰宅してから保護者に『あの会社の衛生対策はすごく徹底しているから、商品を買ってほしい』と話したそうです。自社のファンを増やすことにもなりますし、将来はその業界を目指すなど、熱意ある人材の獲得にもつながります」

生重幸恵 いくしげゆきえ

#chapter3

地域活性化伝道師として地方創生事業にも注力し、子どもらの郷土愛を育む

 生重さんは、内閣府の地域活性化伝道師として登録され、教育を通じた地方創生事業にも注力。全国各地へ足を運び、地域産業や観光資源などを知ってもらう子ども向けのツアーを企画・運営しています。

 例えば北海道のある自治体では国立公園を活用し、地元の小学生たちが専門家のガイドのもとで地域の自然について学びます。プログラムの中で、公園に生息する貴重な生物についても説明し、保護施設を訪れて取り組みを紹介するといったフィールドワークを重ねています。

 「社会科の副教材を使って教室で勉強するより、現場の人に直接語ってもらう方が興味を持ちやすくなります。東京一極集中が進み地方経済は疲弊していますが、地方が持っている底力を子どもたちにもっと知ってもらいたい。自分たちの住む町の魅力に気づいて郷土愛を育み、何らかの形で『故郷に貢献したい』と思えるような、小さな波を起こしていきたいと考えています」

 子どもたちが主体的に行動し、自分が選んだ道で活躍していけるようにとの願いで、教育界と産業界の架け橋として活動する生重さんは、企業に呼びかけます。

 「キャリア教育支援は、企業の社会的責任『CSR』を果たす上で欠かせない要素の一つとなっています。『どのようなテーマや授業の進め方が適しているのか分からない』という企業さまにも、それぞれに合ったスタイルを提案します。働くことの素晴らしさや喜びを伝え、子どもたちが『社会で生きる力』を一緒に育てましょう」

(取材年月:2023年12月)

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生重幸恵

教育界と産業界をつなぐキャリア教育コーディネーター

生重幸恵プロ

教育コーディネーター

特定非営利活動法人スクール・アドバイス・ネットワーク

国の教育関連事業にも参画する豊富な実績。教育界と産業界をつなぎ、子どもたちに企業の持つノウハウを届けるキャリア教育プログラムを開発・提供。内閣府地域活性化伝道師として教育を通じた地方創生にも注力。

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