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地域の子供たちは地域で育てる。小規模団体の労力をAIとLINEで軽減し強固な地域ネットワークへ

AIと共に自治会やPTAなど小規模団体のDXを支える専門家

野口真一

野口真一 のぐちしんいち
野口真一 のぐちしんいち

#chapter1

30年の経験を基に自治会や商店会、PTAの仕事を自動化。情報発信も紙からスマートフォンベースに

 約30年にわたるIT業界での経験を基にAI(人工知能)を駆使して顧客の業務改善を支える「オフィストゥルーワン」の代表・野口真一さん。近年は、自治会や商店会、PTA、スポーツ団体などの負担軽減を目的に、価格を抑えた作業効率化サービスにも取り組んでいます。

 「普段はエンジニアとして人工知能を扱い、電力会社の工事情報をチャット形式で分かりやすくしたり、人材派遣会社でマッチング精度を高めたりしています。本業があるため、このサービスは利益よりも人助けを重視したいと考えています。知見のおすそ分けですね」

 なかでも導入しやすいのが、LINEでのやり取りを自動化する仕組み。例えばPTAの場合、公式アカウントをAIに運用させることで、「バザーで引き取れるものを知りたい」「授業参観の日時を教えて」といった問い合わせに自動で対応できるようになります。

 「私も3年ほど会長を務めましたが、一つ一つの質問に手入力で返信するのは大変でした。情報を確認して文章を考えるのもひと苦労で、尋ねる側の保護者も気を使ってしまいます。一方、方法を見直せば、行事の共有や一斉送信、書類管理もオンラインで完結し、対面での打ち合わせも減らせると思います」

 さらに、校外学習や運動会の画像データからAIが自分の子を見つけ、リストアップできるようになるとも。校内に掲示された大量の写真から探す手間がなくなり、代金も自動算出できると説明します。

 「町内会やマンション管理組合では電子回覧の機能も役立つでしょう。印刷物を掲示板に張りつつ、住民のスマートフォンを通じて地域情報や注意事項を周知できるようになります」

#chapter2

POSシステムと出合いIT企業に就職。AIの高精度な予測に着目し本格活用を開始

 野口さんは慶應義塾高校を経て同大学商学部に進学。経営や統計、マーケティングなどビジネスの基礎を学びました。

 「当時は一般家庭にインターネットがまだ普及しておらず、講義にノートパソコンを持ち込んでいるのも私だけでした。在学中はファストフード店でアルバイトをし、POS(販売時点情報管理)システムに触れたのが転機です。売り上げや在庫、顧客情報を一元管理し、その日の気温から販売数も予測します。大学での研究成果が集約されており、夢中で操作したのを覚えています」

 この経験を機に、日本情報通信(現・NTTインテグレーション)に就職。約4年間にわたり、プログラミング技術を磨きます。

 「出資者である日本アイ・ビー・エムの研修も受けましたが、当時はネットを活用しない案件も多く、自身が思い描く方向性との違いから、WEB制作会社のミツエーリンクスに転職しました。ここでは執行役員として、先進的なコンテンツ制作に携わりました」

 2004年、結婚を機に独立し「オフィストゥルーワン」を設立。最大2000台のレンタルサーバーの管理、海外エンジニアとのシステム開発、情報セキュリティマネジメントシステム認証取得のためのコンサルティングの三つを軸に事業を展開します。

 「やがてコロナ禍で海外との連絡が途絶え、サーバーもクラウドが主流になりAIの分野に舵を切りました。きっかけとなった駅ナカの洋菓子チェーンのプロジェクトでは、乗降客数や過去の販売実績を学習データとして活用し、売り上げ予測に一定の手応えを感じました。この技術は今後本格的に広がっていくと考え、現在に至ります」

#chapter3

効率化の先に望むのは地域の子どもへのアプローチ。積極的な情報発信で孤立を防いでほしい

 作業の負担軽減のみならず、先進技術を活用する本当の目的は「子どもの孤立を防ぐこと」と野口さん。近年、自宅のある一帯ではマンションが増え、一方で街ぐるみのイベントに参加する家庭が減っていると指摘します。

 「マンションでは近所付き合いの距離感が保たれ、あいさつ程度の関係が一般的です。その影響なのか少子化の波なのか、お祭りやレクリエーションに顔を出す子がめっきり少なくなりました。私は『地域の子どもは地域で育てる』という信条のもと、商店会や町内会が成長に関わることでバランスの取れた人間形成を後押しできると信じています」

 子どもたちの生活が、家庭、学校、習い事を中心とした一定のパターンに落ち着く中で、それ以外の時間を一人でテレビやスマートフォンと過ごすことが増えていないか、気にかけているといいます。限られた人との関わりにとどまる場合だからこそ、地域コミュニティーの大人や先輩の存在が、新たな刺激やきっかけになり得ると話します。

 「これまでは掲示板の張り紙が中心で、情報発信は受け身でした。今はSNSで一斉に届けられ、その作業負担や効果を高めるのがAIです。実際、私の母が会長を務める自治会でもサイト制作を含め試験的に取り組んでいますが、新しい方々が少しずつ地域の輪に加わっています。地域とつながる入り口を家庭や子どもに届けていく活動を全国に広めたいですね」

(取材年月:2026年1月)

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専門家プロフィール

野口真一

AIと共に自治会やPTAなど小規模団体のDXを支える専門家

野口真一プロ

AIコンサルタント

オフィストゥルーワン

IT業界で培った知見と地域活動の経験を生かし、AIを活用して町会やPTA、マンション組合の業務改善を支援。問い合わせ対応の自動化やオンラインでのスケジュール調整により、運営の負担軽減を目指します。

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