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保護猫活動を持続可能な形へ。高齢者の飼育不安に寄り添う見守りの仕組みも

「猫共和国の首相」として持続可能な保護猫事業を目指す専門家

河瀬麻花

河瀬麻花 かわせあさか
河瀬麻花 かわせあさか

#chapter1

カフェや物販の収益で猫を支援し、企業連携で社会性と事業性の両立を目指す

 企業や行政、民間団体と連携し、保護猫活動の事業化に取り組む「ネコリパブリック(ネコリパ)」。河瀬麻花さんは「猫共和国の首相」として、猫を軸にした持続可能な仕組みづくりを進めてきました。

 「『この世の全ての猫に安心して眠れる場所とお腹いっぱいの幸せを与える』を掲げ、日本での殺処分ゼロを目指しています。保護猫カフェの運営やイベントの開催、物販などを通じて収益を生み、その循環で支援を続ける形を模索中です」

 東京や岐阜などに複数の拠点を展開。ボランティアや支援者の協力を得て、活動を広げています。中でも注力しているのが、企業と連携する「ハッピーネコサイクル」。商品やサービスの共同開発、売り上げの一部を保護活動に活用するなど、無理のない協力関係を築いています。

 「企業にとっては、CSR(企業の社会的責任)の発信に加え、事業投資の観点からも検討できます。ペットフード協会などの調査データでは、猫の飼育数や猫に関心を持つ層の広がり、いわゆるネコノミクスと呼ばれる猫関連の経済効果の高まりが示されています。少子高齢化が進む日本において、猫は家族としての存在感を増し、関連消費も拡大すると予想されます」

 背景にあるのは、SNSフォロワー20万人以上の規模コミュニティーによる発信力。河瀬さん自身もコンサルティングに加わり、企業を支えます。

 「テーマは『楽しみながら、猫助け』。何かを購入したり体験したりする行為が、そのままシェルターの運営や去勢手術などの保護活動につながります。小さな命を大切にする文化を育んでいきたいですね」

#chapter2

パン屋に生まれ、猫と共に育つ。ボランティア経験から課題解決を目指し起業へ

 河瀬さんは、大正時代に創業した岐阜県内のパン屋の四代目として生まれました。猫は「ネズミから小麦を守り、福を招く」と親しまれ、幼い頃から常に数匹の猫と暮らしていたといいます。

 「物心がつく頃には、野良猫を保護して里親を探していました。家で10匹以上の猫に囲まれることもあり、小学校の卒業文集には『猫の動物王国をつくる』と書いていましたね」

 大学卒業後は日本語教師の資格を取得し、バックパッカーで放浪の旅へ。32カ国を訪れた中でも、インドでの体験が人生観に大きな影響を与えました。帰国後は家業に携わりつつ、半年ほど過ごしたニューヨークで堪能したベーグルの専門店を開業。その後、東日本大震災が大きな転機となります。

 「被災地に残されたペットたちのために、何かできないかと考えました。支援団体の活動を知り、売り上げの一部を寄付できるベーグルを販売したところ、想像以上の反響がありました。売る側と買う側の思いが重なる商品には需要があると感じたんです」

 幼い頃から抱いてきた思いがよみがえり、「猫の命を助けることに軸足を置こう」と決意。しかし、地域の保護猫活動に参加する中で、ボランティアの自己負担や情報発信の難しさなど、現場が抱える課題に直面します。

 「個人の善意だけに頼るのではなく、仕組みとして支える必要がある」と考え、河瀬さんは事業化の構想を異業種交流会で伝えました。そこで実行を後押しする声が集まり、岐阜県の助成金を活用して2014年に「ネコリパブリック」を設立。立ち上げから10年が過ぎた今も、共感を広げながら社会課題の解決に取り組んでいます。

河瀬麻花 かわせあさか

#chapter3

無理を強いない資金づくりの仕組みを整備。高齢飼い主の不安解消にも対応

 河瀬さんのやりがいは、つらい過去を背負って保護された猫が新しい家族と出会い、里親から「幸せに暮らしています」と報告を受ける瞬間。一方で、現場には依然として多くの課題があると話します。

 「特に地方では、野良猫の増加や多頭飼育崩壊に対し、行政だけでは対応が難しい状況があります。危機感を抱いたボランティアが身を削って対応するにも限界があり、継続のためには仕組みと資金の両面が欠かせません」

 こうした問題にアプローチする事業の一つが「安心ねこ生活 猫生たすけあい制度」。月額数百円の負担で、飼い主がやむを得ず世話を続けられなくなった場合に猫を引き取り、新たな家族につなげます。

 「動物愛護センターなどのデータでは、猫が保健所に持ち込まれる理由として、飼い主の病気や死亡が多く挙げられています。生活の困窮や介護施設への入居なども背景にあり、特に一人暮らしの高齢者に安心を届けたいと考えました」

 もう一つが、行政書士と連携し、飼い主の終活をサポートする「猫生あんしん見守り制度」。遺言書の作成、愛猫のための財産を守る契約「猫のために残す遺贈」などを通じ、我が子同然の猫が生涯にわたって守られる環境づくりを支援します。

 「地震や大雨が続く中、緊急対応にも尽力しています。移動診療車を導入して被災地に駆けつけるチームを編成し、実際に2024年の能登半島地震にも派遣しました。住環境を失うと、飼い猫が野良猫化するリスクが高まります。非常時でも命や健康を守れるよう体制を整えていきたいですね」

(取材年月:2025年12月)

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専門家プロフィール

河瀬麻花

「猫共和国の首相」として持続可能な保護猫事業を目指す専門家

河瀬麻花プロ

サービス業

株式会社ネコリパブリック

保護猫活動を軸に物販やイベント開催など多角事業を展開。企業や行政と提携し、コミュニティーを生かした協働を進める。高齢飼い主の飼育放棄リスクを軽減するため、法的枠組みを取り入れた終活支援にも取り組む。

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