ゴミ屋敷の片付けや特殊清掃を手掛ける専門家
佐々木薫
Mybestpro Interview
ゴミ屋敷の片付けや特殊清掃を手掛ける専門家
佐々木薫
#chapter1
「物があふれて足の踏み場もない、住人がお亡くなりになったなど、どんな状態でもお任せください。2008年の創業以来、私たちがきれいにできなかったお部屋はありません」
そう力を込めるのは、東京都江戸川区の「まごのて」の取締役会長・佐々木薫さん。ゴミ屋敷の片付け、孤独死があった物件の特殊清掃、遺品整理を手掛け、東京を中心に千葉、神奈川、埼玉、茨城エリアで年間1000件以上の現場を請け負っています。
「いわゆる汚部屋の掃除は20~30代の利用が多く、半数以上が女性です。分別ルールが分からずゴミを捨てるのが怖くなった、人間関係に疲れてやる気が起きずゴミ捨てを先送りにしたなど、ささいなきっかけが多く、どんな人も当事者になり得ます」
2年、3年と時間がたつうちにゴミがある状態に慣れ、自分のケアをおろそかにする「セルフネグレクト」が進行すると、健康面や社会生活に影響が生じる可能性があります。心身ともに健やかに過ごすためにも、1日でも早く相談してほしいと呼び掛けます。
「質の高いサービスを、責任をもって提供できるよう業務にあたるのは正社員です。女性スタッフの育成も強化しており、細やかな気遣いで衣類や日用品などを選別し、使いやすく部屋を整える場面でも活躍しています」
匿名依頼が可能で、部屋の写真をLINEで送れば無料で見積もり、ワンルームなら1日で作業完了。急な来客や引っ越しに向けて、リビングや寝室、キッチン、バス、トイレといった水回りのクリーニングや、排水溝などの高圧洗浄も実施しています。
#chapter2
長く運送業に従事してきた久史さんとハウスクリーニングの経験を持つ薫さん、夫婦の得意分野を合わせて誕生した「まごのて」。当初は便利屋としてスタートしましたが、ゴミ屋敷の片付けや特殊清掃の専門業者にシフトする転機となる出来事がありました。
「有名大学に通う女の子からご用命がありました。見積もりのために訪ねると、部屋を見せるのが恥ずかしいと、なかなか扉を開けてもらえません。ようやく室内に上がって料金を提示すると、『追って連絡します』との返答でした」
その日の夜に「お金がたまったらお願いします」とだけ書かれたメールが届き、佐々木さんは内容を見るやいなや彼女に電話をして、こう言ったそうです。
「あのね、おばちゃんあなたのお部屋を見ちゃったの。娘と年が変わらないあなたが今夜もあの部屋で寝ると思ったら我慢できないの。お金は後でいいから片付けよう!」
翌日に訪問して作業を決行。本人も一緒に必要な物を仕分け、ひたすらゴミ袋に不用品を詰め込みました。荷物が収まり見違えるほど整然とした部屋で、みなで抱き合って号泣したそうです。
「その夜、彼女から届いたメールには、数年ぶりにお風呂に何度も入ったこと、『お金は後、まずは片付けよう』という言葉がなければ、死んでいたかもしれないと書かれていました」
自分では手に負えず、命を絶つことまで考えてしまう人がいる事実を知った佐々木さん。追い詰められている人たちの一助になりたい一心で、職務にまい進してきました。
#chapter3
佐々木さんのもとでは、「快適な部屋で暮らしてほしい」「部屋に悩みを持つ方の理解者であり、解決を示せる者でありたい」という理念のもと、日々品質向上を追求しています。
「どれほど汚れ、散らかっていても、原状回復するのが私たちの役目です。特殊清掃の場合、状況によっては床をはがして下のコンクリートを洗浄するなど、内装に関わることもあります。自社で工事部を有し、臭い粒子を取り除いてクリーンな環境を取り戻すことを目指しています」
遺体痕の除去から壁、床材の張り替えといったリフォームまでを一貫。臭いメーターや久史さんが独自に研究開発した消臭剤を使い、徹底して脱臭処理を施します。
「最もプライベートな部分に携わる仕事だからこそ、本当に信頼できる業者に巡り会ってほしいと思っています。私どもの存在を知ってもらうべく、メディア出演やSNSでの情報発信にも力を入れています」
多忙で手が回らない。気力がわかず放置してしまったなど。個々の心情をくみ取り、事情に配慮する佐々木さん。部屋とともに心まで整えることを大切にする姿勢は、依頼者から教わったと言います。
「ゴミの中から探し出したお箸を握りしめ『おばあちゃんがくれたものなのにごめんなさい』と泣きじゃくる姿。『ブランドバッグは全部捨てていい、こっちが大事!』と小さなマスコットを抱きしめる姿を拝見してきました。お客さまのお気持ちに寄り添って一つ一つ丁寧に整理し、一歩踏み出すお手伝いができればと願っています」
(取材年月:2024年9月)
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Profile
ゴミ屋敷の片付けや特殊清掃を手掛ける専門家
佐々木薫プロ
清掃業
株式会社まごのて
ゴミ屋敷を作り出すきっかけは些細で、誰にでも起こり得る問題です。依頼者の心情や悩みを理解し、単にゴミを回収するだけでなく問題解決の手助けをすることが重要と捉え、全面的なサポートを実施しています。
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