“心”と“身”を育む空手指導者
田口恭一
Mybestpro Interview
“心”と“身”を育む空手指導者
田口恭一
#chapter1
世田谷区の三軒茶屋で田口さんが営むのは、国際空手道連盟・極真会館の「城西世田谷東支部」。極真空手といえば、かの大山倍達が創設した、空手道において最も有名な団体です。
その看板がイメージさせるのは、いかにも無骨で過酷な鍛錬の場……といった雰囲気ですが、実際には門下生は4歳から70代のシニアまでと、文字通りの老若男女がともに汗を流しています。
「年輩の方向けには、『健康空手教室』という、空手の動きを採り入れた健康づくりのための教室を設けています。1人で黙々とトレーニングするのではなく、号令に合わせながら複数の人たちと一緒に取り組む楽しさは、道場ならではでしょう。また、太極拳のようなゆっくりとした動作でインナーマッスルを鍛えるプログラムなので、負担をかけずに体作りができるのです」
地域の人々に、いつまでも健やかでいてほしいという、社会貢献の意味から作られたこの教室。商店街に近い立地も手伝い、周辺住民の皆さんを中心ににぎわっています。
一方で、競技として稽古に励む現役選手も多数在籍しています。田口さんは、「今年は4年に1度の世界大会もありますから、なんとか選手を送り込めるよう、一丸となって頑張っているところです」と、今日も指導に余念がありません。
三軒茶屋から世界的な選手が登場する日も、そう遠くないのかもしれません。
#chapter2
田口さん自身が空手を始めたのは、大学生の時。友人に誘われるまま稽古に励み始めると、メキメキと頭角を現し、全国大会上位の常連選手となります。
卒業後、一度は就職するものの、翻意して空手の世界に身を投じた経緯があります。それほどにまで空手にのめり込んだ理由について、田口さんは次のように語ります。
「何よりも、道場の雰囲気が心地良かったですね。経営者もいれば警察官もいたりして、様々な立場の人が同じ目線で稽古に励んでいる様子は、新鮮で楽しいものでした。それに、道場で出会う人たちは誰もが皆いつも前向きで、私にとってとてもいい環境だったと思います」
現在、道場には会社員やOL、主婦など、300人以上の門下生が集まっていますが、とくに多いのは小学生前後の子どもたち。
「極真空手ですから、もちろん強さを追求するという前提はあります。それは純粋に選手としての強さだけでなく、4歳児には4歳児の、70歳には70歳ならではの強さというのがあるはず。空手の稽古を通して、すべての世代に通ずる強さを提供することが、私たちの目的ですね」
つまり、鍛えるべきは“心”と“身”。あえて武道である空手を選んで入門した人たちだからこそ、それぞれが練磨したいと望む部分を強化するお手伝いをしようというのが、田口さんのモットーなのです。
「入門当初は大勢の人がいる場を怖がっていた子どもでも、やがて大きな声で挨拶ができるようになり、自分より大きな相手に立ち向かっていくほどに成長するケースはたくさんあります。社会人の方にとってもいいストレス発散の機会になっているようですし、職場とはまた違ったコミュニケーションを楽しめる場として喜ばれています」
#chapter3
最近の傾向として顕著なのは、入門希望者の「低年齢化」だと語る田口さん。空手を通して、我が子の健やかな成長と人格形成を、と望む保護者は年々増えているのです。
だからこそ、指導者も責任重大。田口さんが何よりも大切にしているのは、創始者から今日までに伝えられてきた、極真空手の理念です。
《頭は低く、目は高く、口慎んで、心広く、孝を原点とし、他を益する》
「極真空手というのは、実はいろんな人のニーズに応えられるものだと思います。純粋に強くなりたい人には、試合という機会を提供できます。健康づくりなら、フィットネスやダイエット目的にも対応できます。また、武道として精神修養に役立てることだってできます。老若男女、ゆりかごから墓場まで、様々な形で自身を高めて、豊かな人生を送れたら素晴らしいですよね」
子どもの指導にあたっては、空手の稽古だけでなく、地域の人々への挨拶を徹底するよう指導し、さらには月に一度、商店街の清掃活動にも取り組んでいます。
「今後、目指す形は寺子屋ですね。学校ではできない教育が、空手道場ではできるのです。今も稽古後には子どもたちにいろんな話をしますが、行く行くは座学として、武士道のようなものを教えていける場にしていければ……」
そして最終的には、すべての年齢の人に「極真空手をやっていて良かった」と思ってもらうことが、田口さんの一番の目標です。
(取材年月:2011年2月)
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Profile
“心”と“身”を育む空手指導者
田口恭一プロ
格闘家
国際空手道連盟 極真会館 東京城西世田谷東支部
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