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手描きの絵柄や刺しゅうが施された美しい着物を洋服に仕立て、新たな思い出づくりを

着物生地でオーダーメードドレスを作るサスティナブルデザイナー

山田百里恵

山田百里恵 やまだもりえ
山田百里恵 やまだもりえ

#chapter1

着物を用い、フォーマルドレスやワンピースなどをオーダーメード

 「着物は布を直線で裁つため、糸をほどいて組み合わせれば元の反物に戻り、いかようにも作り変えることができます。物を大事にする先人らの精神を引き継ぎ、現代らしい形によみがえらせるお手伝いをいたします。タンスにしまったままの着物をお持ちの方は、一度ご相談ください」

 そう語るのは、東京都品川区で完全予約制のプライベートサロンを営む「Morie Yamada」の代表・山田百里恵さん。着物生地を用い、フォーマルドレスやワンピース、ジャケット、コート、スカートといった洋服をデザインから制作まで行います。
 フルオーダーメードで仕立てた世界に一着だけのオリジナルアイテムは、着心地の良さにも配慮しているのが特長。特別な場面だけでなく、記念日の食事や観劇など日常生活も豊かに彩ります。

 「着物の色柄を拝見して、どんなシーンで着用されるのかをお聞きすると自然にイメージが浮かんできます。お客さまと着物にまつわる思い出話などをして、最後に簡単なラフ画を見ていただくと『どうして私の好みがわかるんですか』と皆さん驚かれます。デザインはあれこれ考えず、直感に従うのが間違いないです」

 声楽家や楽器奏者のステージ衣装も手掛ける山田さん。華やかな着物ドレスで舞台に登場すると客席から歓声があがり、本人のテンションも高くなり会場全体が一体化するのだとか。
 「どういうパフォーマンスをするかを念頭に置いてデザインをしています。たとえ見栄えが良くても、発声や演奏の邪魔になるのはNG。着ていることを意識せず、歌や音を奏でることに集中できると好評です」

#chapter2

着物生地で作ったアイテムは、エレガントな雰囲気と軽やかさが魅力

 以前はアパレルブランドのデザイナーだった山田さん。着物は子どもの成人式などで着付けてもらう程度で、特に関心があったわけではなかったそう。

 「ある日、アンティーク着物の収集家として有名な故・池田重子さんのコレクションを見る機会があり、江戸時代の高貴な方のお召し物を見て衝撃を受けました。例えば振り袖には、手描きされた模様に丹念に刺しゅうが施されているんです。これまでにたくさんの生地を扱い、プリントはヨーロッパが優れていると思っていましたが、手仕事の美しさに言葉を失い、日本の『衣』について何も知らないと反省しました」

 魅せられるまま着物の生地を集め眺めていましたが、ある日洋服を作ってみようと思い立ちます。何点かを制作して、縁があった銀座プランタンでポップアップショップを開催します。
 「着物には裏地がありますが、表地だけだと驚くほど軽いんです。エレガントな雰囲気と柔らかな肌ざわりで、試着した方は『うっとりする』『優しい気持ちになる』とファンになってくださいました。トントン拍子にリメイクの店舗を立ち上げることになったんです」

 着物を使ったデザインと通常のデザインの違いは「生地の分量に限界」があること。そして、鶴や花のように大きな絵柄がある場合は、柄合わせが必要になります。
 「制約がありますが、それでもこの素晴らしい素材を知ってほしい思いが勝ります。手間がかかる難しい作業なので、縫製指示書をつけて専属の職人さんに依頼しています」

#chapter3

形見の着物やお気に入りの着物を洋服に仕立て直し思い出をつなぐ

 母から娘など、代々受け継がれる着物には家族の記憶が刻まれます。山田さんは、身にまとう人には特別な感情が湧くことを間近で見てきました。
 「新郎のお母さまの形見を、お嫁さんがウエディングドレスにして結婚式でお召しになりました。『お母さまと会ったことはないのですが、家族になった気がしました』と丁寧な手紙をいただき胸が熱くなりました」

 着物の生地にほれ込んでドレス制作をスタートしましたが、歴史や愛情を紡ぎ、ぬくもりに包まれてもらうことに、うれしさややりがいを感じます。

 「お孫さんの結婚式に出席したいけど、着ていく服がないと悩んでいる方は、自宅に伺い採寸をして留め袖ドレスをお作りします。高齢の方や体が不自由な方の『おしゃれをしたい』というご要望をかなえ、車いすの方でも脱ぎ着しやすいユニバーサルファッションも視野に入れています」

 着物を着る機会が少なくなり、処分する人がいる現状を「もったいない」と嘆きます。
 「お客さまのお家に訪問して、着物の仕分けもしています。相続したものなど大切な1着だけリメイクして、後は着物を活用するNPOに寄付する方法もあります。店舗への郵送でも対応しているので、お気軽にお問い合わせください」

 着物は新しい洋服に加工することができ、持続可能なサステナブルファッション。「1枚の布として再利用できる裁断の仕方を編み出した先人の知恵には、感服します。日本が誇る着物の魅力を多くの方に知ってほしいですね」と力を込めます。

(取材年月:2023年12月)

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専門家プロフィール

山田百里恵

着物生地でオーダーメードドレスを作るサスティナブルデザイナー

山田百里恵プロ

デザイナー

株式会社Morie Yamada

手描きの絵柄や刺しゅうが施された高品質の着物生地を使いオーダーメードドレスを制作。着物に込められた思い出や用途を伺い依頼主の雰囲気に合うドレスをデザイン。生地の軽さや優雅な雰囲気が人気です。

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