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Mybestpro Interview

それぞれが夢の舞台に立てる日本舞踊のお稽古所に

美しい技と心を伝える日本舞踊の師範

尾上菊右佐

美しい技と心を伝える日本舞踊の師範 尾上菊右佐さん
尾上菊右佐さん(舞い)

#chapter1

「日本文化の種まきをしたい」という願いを込めて

 たおやかで優雅な動きによって、見る人を魅了する日本舞踊は、日本の伝統芸能に親しみながら、美しい所作やマナーを身に付けられる習い事として、子どもから大人まで今なお根強い人気があります。
 小学校の時に出合って以来、日本舞踊が本当に好きでずっと続けてこられたという尾上菊右佐さん。東京都・町田市で「近隣の方々にも日本舞踊の良さを知ってもらいたい」という願いから始まった稽古所は、教室を開いてから今年で11年目。一人一人の年齢や個性、技術習得度に合わせた丁寧な手ほどきが評判を呼び、習いに来る方が増えています。
 稽古所での個別指導の成果を披露するために、年に一度の発表会として「尾上菊右佐 おさらい会」を開くほか、市内の小学校での指導や、障害者クラス向けの体験授業、地元の多目的施設「ひなた村」で町田市文化事業の日本舞踊教室を毎年開催したりするなど、地域に密着した幅広い活動を精力的に続けています。それはひとえに、「次世代を担う子どもたちのために、日本文化の種まきをしたい」という願いにほかなりません。
 日本舞踊は、限られた動きの型と間でどれだけの身体表現ができるかが要となりますが、踊る人そのものが如実に表れる芸術。そのためには、人格形成が非常に大切だといいます。「型を伝えることはもちろん肝要ですが、人としての思いやりなどの心も伝えていきたい。私自身も日本舞踊によって生かされていますので、お弟子さんたちと育ち合い、響き合っているという気がしています」

#chapter2

日本文化の裾野を広げるために、日本舞踊でできること

 一対一で基礎から丁寧に指導する尾上菊右佐さんの稽古所では、踊りそのものだけでなく、美しい所作や立ち居振る舞い、正しい姿勢、挨拶、お辞儀の仕方などが自然に身に付くことでも定評があります。またお子さんの場合、小学校1年生で半巾帯、中学生でお太鼓結び、そして成人式を迎える頃には自分で振袖をきれいに着られるようになるまで、着付けの心得を教わります。
 教え子である男の子が、社会見学でお寺に参った時のこと。彼のお辞儀を見た和尚さんが、思わず「君は何か習っているのかね?」と尋ねたほどの礼儀正しさだったのだとか。
 指導にあたって常に心掛けているのは、それぞれの良いところを伸ばすこと。お弟子さん、特に小さなお子さんが「ここへ来ると楽しい。もっと教えてほしい」と自発的な気持ちと姿勢で臨めるように、各自の様子や成長過程を見守ることが大事な役割ですと語っています。
 日本舞踊には決して欠かすことのできない着物ですが、自宅のたんすの中で眠らせたままにしている人は、意外に多いもの。「10年来、稽古所に通っているお子さんを持つ、オートバイのライダーでもある活発なお母さんが『先生、着物っていいですね』と、卒業式に着物をお召しになったんですよ。ご本人ももちろん、稽古に通うお子さんも、非常に喜んでくださって」と目を細めています。またある時は、小学校で着付けを教えると、喜々としている子どもたちを見て、「私にもできますか?」と先生方も意欲を見せるようになったそうです。
 尾上菊右佐さんの地道な活動が結実し、暮らしに彩りを添える日本文化の裾野は、ますます広がっていきます。

尾上菊右佐さん 舞台風景

#chapter3

日本舞踊を通して誰もが輝き、“夢をかなえる教室”を目指して

 日本舞踊はとても高尚で、ハードルが高いというイメージがあるものの、実はご自身がサラリーマンの家庭で育ったことから、より多くの方々に親しみを持ってもらうために日本舞踊を続ける意義を感じているのだとか。
 「昔、一緒に習っていた方々がやめてしまっても、口をそろえて『日本舞踊を習っていて本当によかった』とおっしゃいます。日本舞踊は、何歳から始めても決して遅くはありませんし、人生をより豊かにしてより生き生きと美しくしてくれます。それぞれの人生の歩みの中で、日本舞踊を習ったことがプラスになれば、何より嬉しいですね」
 お弟子さんの中には、日本舞踊を50歳になり初めて習い、熱心に10年稽古し名取を取得した方もいます。大学の芸術学部で日本舞踊を学ぶ人、女優への道を目指す人もいれば、京都の舞妓さんになった人、あるいは宝塚歌劇団に入団した人もいます。尾上菊右佐さんの稽古所は、まさに“夢をかなえる教室”として、日本文化の種が花開いています。
 尾上菊右佐さんも、今後中学校や高校と連携して日本舞踊の授業や、年配の方の心と体の健康維持など、活動の幅を広げていきたいと思っています。
 深い呼吸をしながら、しなやかな動作で心と体が一緒に整い、健康やリフレッシュにも最適。「百年踊り続けられる」といわれ、誰でも、いつでも、いつまでも続けられる日本舞踊を、一度体験してみてはいかがでしょうか。

(取材年月:2019年10月)

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尾上菊右佐

美しい技と心を伝える日本舞踊の師範

尾上菊右佐プロ

日本舞踊家・師範

尾上菊右佐 日本舞踊稽古所

お弟子さんの年齢や個性、技術習得度に合わせ、優しく丁寧な個別指導を行います。日本舞踊だけでなく、着付けの心得、日本ならではの美しい所作や礼儀正しさが身に付きます。三歳から八十代まで稽古しています。

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