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オリジナルブランド「LaFata」を通じて、唯一無二の漆アートジュエリーを展開

沈金と彫刻を融合させたジュエリーデザイナー

宮澤淑恵

宮澤淑恵 みやざわとしえ

#chapter1

ガラス工芸の「グラスリッツェン」と漆芸の「沈金」を融合した表現力が強み

 「私どもの商品は、すべて一点物です。同じモチーフでも石の形や色によってデザインを変えるため、二度と同じものは作れません。世界に一つだけの作品と一期一会の出会いを紡ぎ、唯一無二の価値を届けることを大切にしています」

 そう話すのは、東京都世田谷区に拠点を構える「ジュエリーサトウ」のデザイナー兼職人の宮澤淑恵さん。公益社団法人日本ジュエリーデザイナー協会の正会員でもあり、オリジナルブランド「LaFata(ラファータ)」を掲げ、花やチョウ、鳥、ユニコーンなどをあしらったネックレスやブローチ、腕時計を手掛けています。

 主な顧客は、上質なジュエリーを所有し、審美眼を持つミドル・シニア層の女性。上品で洗練された、エレガントな雰囲気をまとう大人にふさわしい品として愛されています。

 「年間で制作するのはおよそ120点。宝石が放つ自然美だけでなく、芸術性と実用性を兼ね備えた工芸として、希少性を認めてくださるお客さまに支持され、宝飾店や百貨店などで展開しています」

 最大の強みは、ヨーロッパ発祥のガラス加飾技法「グラスリッツェン」と、日本に息づく漆芸「沈金(ちんきん)」を融合させた独自の表現力です。

 「沈金は、彫った溝に漆を塗って金粉をまき、磨きをかけてつややかな光沢を出します。極細の針でレースのごとく装飾する、グラスリッツェンの細密なタッチを琥珀(こはく)やべっ甲に応用し、顕微鏡をのぞきながら刻む私の彫りは非常に細かいのが特長です。他の誰にもまねできない、繊細で優美な輝きを生み出せると自負しています」

 宮澤さんはグラスリッツェンの教室も開催。培った技術を伝える活動にも力を入れています。

#chapter2

ガラスに針で模様を施す「グラスリッツェン」を学び、ジュエリーの世界へ

 数々のアートジュエリーを世に送り出してきた宮澤さん。ガラスという素材に抱いた好奇心が、現職に進むきっかけでした。

 「光を通してきらめく透明感や、デリケートで壊れやすい『はかなさ』が好きだったんです。炎で加工するバーナーワークを習いたかったのですが、消防法の関係で個人が通える教室が見つからず、思案していた折に見つけたのが、ガラスに針で模様を施す『グラスリッツェン』でした」

 会社勤めをしながら身につけたスキルが大手雑貨店・東急ハンズの目に留まり、1989年から約20年間、講座を担当。講師を務める中で縁あって就職した宝石店で、現在の社長である佐藤和裕さんと知り合い、1995年、独立して会社を立ち上げる際、デザイナーとして合流しました。

 「当時はリフォームが主軸で、集客のために広告を何万枚も配布し、全国の百貨店を飛び回っていました。お客さまから貴重な宝石をお預かりし、熟練の一級技能士による秀逸で二つとない作品を数多く目にしてきた経験が、私のデザインの血肉になっています」

 近年はファッションが多様化。自分らしさを求める人のため、大量生産にはない独創性と、作家の体温が宿る創造性に満ちた沈金ジュエリーへと軸足を移しています。

 「ワシントン条約の影響でべっ甲が手に入りにくくなったり、漆を扱える職人さんが減ったり。苦労は絶えませんが、各地へ赴く中で見て、触れてきた『本物だけが持つ存在感』を、自分の手で形にするべく全身全霊で臨んでいます」

#chapter3

美しさと軽さを兼ね備え、日本の伝統技術が生きるジュエリーを海外にも発信

 一つ一つ異なる素材の個性を生かし、かれんに咲き誇る草花や躍動感あふれる翼など、豊かな感性で絵柄を描く宮澤さん。手仕事のやさしさとぬくもり、オンリーワンならではの品格が共存した作品は、オペラ鑑賞や観劇など特別な場面を彩ってきました。落ち着きのある美しいたたずまいと共に、高く評価されるのが軽やかな装着感です。

 「アクセサリーが重いと肩が凝るでしょう? 琥珀やべっ甲は軽くて、付け心地がいいんです。天然の接着剤の中で最も強いと言われる『漆』を使っているので、耐久性も抜群。親から子へ、世代を超えて末長く楽しんでいただけます」

 ダイヤを埋め込んだり、名前を入れたり、希望に応じたカスタマイズも可能。自分へのご褒美、記念日のプレゼントとして重宝される品を、ヨーロッパなど国外にも提案したいと考えているそうです。

 「かつて銀座の店頭で、海外の方が沈金のような和のアイテムを熱心に手に取る姿を拝見してきました。手間ひまをかけ、丹精込めて仕上げる日本の伝統技術の素晴らしさを伝えていきたいですね」

 2012年には、国際漆展・石川で「美と愛の女神 VENUS」が入選。創作への思いは尽きることなく、目の前にある素材と向き合う時間は、何物にも代えがたい喜びだと語ります。

 「一筋一筋、緻密に彫り進める作業が性に合っているんです。ジュエリーというキャンバスに、一幅の絵画のように奥行きのある世界観を表し、皆さまの装いに華を添えることができればと願っています」

(取材年月:2026年2月)

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専門家プロフィール

宮澤淑恵

沈金と彫刻を融合させたジュエリーデザイナー

宮澤淑恵プロ

ジュエリーデザイナー

有限会社ジュエリーサトウ

ガラス工芸の繊細な彫りを琥珀やべっ甲に応用し、独自の沈金表現を確立。極細針で刻む模様が優美な輝きを生み出し、一点物ならではの「美しさと軽さ」を兼ね備え、装う人の品格を支えます。

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