住宅確保が難しい人に安心な住まいと生活を支援するプロ
石井久美子
Mybestpro Interview
住宅確保が難しい人に安心な住まいと生活を支援するプロ
石井久美子
#chapter1
少子高齢化や単身世帯の増加が進む現代社会では、高齢や障害、配偶者からの暴力、離婚など、さまざまな理由で現在の住まいの退去を余儀なくされ、次の住まいを見つけることが難しい人たちがいます。そのような人たちの住まい探しをサポートするのが、都道府県が指定する居住支援法人です。
「やむを得ない事情で収入が減り、家賃の支払いが難しくなり、退去を余儀なくされる。もしくは配偶者からの暴力で避難が必要な人。高齢で身寄りがなく、入居審査に通らない人。居住支援を通じて住まいを求める人の事情はさまざまです」そう話すのは、静岡東部地区を中心に県内で居住支援の事業に取り組む、有限会社グローブの石井久美子さん。
グローブでは静岡県指定の居住支援法人として、事情がある人でも借りやすい物件を探したり、内見の付き添いをしたり、入居時の保証審査が通るように緊急連絡先を引き受けたりなど、住まい探しを支援します。また、住まいの確保と並行して、自治体のどの窓口に相談に行けばいいのかなど、悩みに応じた公的支援への橋渡しなど、さまざまな角度から自立支援をサポートしています。また、近年、社会問題になっている家財整理、遺品整理、特殊清掃についても、法令やルールに則り、自ら現場に入り対応しています。
社会保険労務士であり、障害年金など年金の手続き、社会保険や労働保険の手続きも得意とする石井さん。各種申請の手伝いをするなど有資格者ならではの的確なアドバイスや支援も石井さんが提供するサービスの強みです。
#chapter2
社会保険労務士事務所の仕事と合わせて居住支援に取り組む石井さん。「困っている人の人生の灯りをともす社労士でありたい」という、そんな強い使命感が原動力になっています。
石井さんが社会保険労務士を目指したのは35歳の時。短大卒業後、さまざまな仕事に就くなかで、非正規雇用の割合の大きさなど、女性を取り巻く労働環境の難しさを目の当たりにしてきたといいます。
「より女性が輝いて働ける労働環境づくりに取り組んでみたい」と一念発起し、働きながら社会保険労務士の資格を取得。さらには誰もが安心して暮らせる社会づくりに役立ちたいと、居住支援法人としての活動を始めました。
「居住支援は単に住まいを見つけるだけの仕事ではありません。依頼者の多くは、いくつもの事情が複雑に絡み合っていることがほとんどです。その一つ一つの悩みに寄り添い、適切な支援に繋げていくことが私たちの仕事です」と話します。
例えば、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の場合、繰り返される暴力と支配により自尊感情が低下し、自己コントロールが難しいケースが多く、その対応にはより繊細さが必要といいます。過去には、DVによる精神的ストレスやトラウマに対処するために、被害者自身がアルコール依存症になり、避難してきたのにも関わらずアルコールの影響で加害者のもとへ被害者自ら連絡してしまう事例もあったそう。
「一つでも対応を間違うと、支援拒否など振り出しに戻ってしまうこともあります。何よりも、その人の人生や心に寄り添って、安心をつくることを大切にしています」と熱を込めます。
#chapter3
2017年の住宅セーフティネット法改正で、居住支援法人の指定制度が誕生しましたが、まだその認知は十分ではありません。
「家賃の支払いに困っていても、どこに相談してよいのか分からない。分からないから諦めてしまう。その結果、路頭に迷ってしまった。そのようなケースも見てきました。どんなことでもいいので、困ったことがあれば気軽に相談してほしいです」と石井さん。
困っている人が気軽に相談できる環境を整えたいと、事務所の空間づくりにもこだわっています。
もともと飲食店として使われていた物件ならではのスペースを活用し、料理用のカウンターテーブル越しに依頼者の相談に応じます。「このカウンター形式が気軽で話しやすいと皆さん喜んでくださいます」と笑顔を見せます。
「士業というと敷居の高いイメージがある人も多いのではないでしょうか。そんなイメージも変えていきたいと考えています」。弁護士や行政書士、社労士などが集う相談カフェを開催したことがあり、相談者に好評だったそう。今後も気軽に相談できる場所づくりの取り組みを広げたいといいます。
地域のつながりの希薄化や地域社会を取り巻く環境の変化で、社会的孤立や生きにくさを抱える人が多い現代社会。支援が必要な人がいても周囲から見えにくいという課題も抱えています。石井さんは「どんなケースでも相談に来た人が安心した表情で帰ってもらえるような対応を心がけています」と話します。
女性問題に人一倍関心を持ち、「同じ女性だからこそ理解できる悩みもあると思うので、どんなことでも気軽に相談してください」と笑顔で話してくださいました。
(取材年月:2025年11月)
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住宅確保が難しい人に安心な住まいと生活を支援するプロ
石井久美子プロ
社会保険労務士
有限会社グローブ
高齢者や障害者、外国人、シングルマザーなど暮らしに不安を抱える方へ、県指定の居住支援法人として、状況に応じた住まい探しや生活支援を提供。社労士資格を生かし障害年金などの相談にも対応しています。
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