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技術者の育成は私の使命

左官職人を育て、住まいづくりに技術・技能を提供するプロ

藤原陽吉

藤原技研工業・藤原陽吉氏
藤原技研工業・藤原陽吉氏 鏝絵(こてえ)

#chapter1

親代わりとなって技と人間性を磨く

 「かつては石見地方の左官職人が全国で活躍していた。すばらしい鏝(こて)絵もたくさん残っています。この技術を後世に伝えていくことこそが私の使命です」と熱っぽく語るのは島根県松江市松江市八幡町、株式会社藤原技研工業の代表取締役会長藤原陽吉さん。創業時から毎年、1人から2人の新規雇用を続け、これまでに58人の技術者を育ててきました。同社の確かな技術は業界でも知られた存在です。

 若者を自宅で預かり、親代わりとなって腕と人間性を磨くのが「藤原流」。順調な足跡の若者ばかりではありません。問題を起こし、行き場を失った若者も引き受けます。「これまでの友人関係を整理できるかどうかが一つの山ですね。時には厳しい意見を言うこともあります」。新人たちは、技術を身につけ黙々と仕事に励む先輩の姿を見て変わっていくといいます。日常の声掛けも、若者たちの心をほぐします。

 藤原さんは技能五輪や技能グランプリへの出場も奨励しています。これまでに金メダル1、銀メダル3など多数の入賞歴を誇り、日本代表として技能五輪世界大会に出場し8位入賞した技術者もいます。

「全国の左官職人の平均年齢は60歳を超えました。優れた建造物など国の宝を守っていくためにも、技術者の育成は私の使命だと思っています」。

#chapter2

景気のいい時期に次への備え

 藤原さんが左官を志したのは小学4年生の時。父親が事業に失敗。兄は障がいがありました。当時自宅を改築中で、職人たちの仕事ぶりをつぶさに観察。「左官になって家を支える」気持ちが芽生えたといいます。中学卒業後、職業訓練校を経て松江市内の事業所に弟子入り。やる気を支えに腕を磨きました。「名工ともいえる長老の人たちにずいぶんかわいがってもらったものです」。

 4年後の1968年に独立。20歳になったばかりでした。「怖いもの知らずでした」と当時を振り返ります。修行時代から馬が合った現同社専務の田中道夫さんが仲間に加わり、藤原さんが営業、田中さんが現場と役割を分担。「周囲の人が応援してくれて、仕事をいただきましたが、お金のことが切り出せず集金ができない。米びつがいつも底をついていました」。―[胸を張ってお金をもらえ・人はみな平等・芸は身を助ける]―さまざまな人から多くのことを学びました。持ち前の明るい性格で、相手の懐に飛び込んだのです。

 景気のいい1970年代、外構工事や土木、リフォームなど仕事の幅を広げました。「好景気の反動が必ず来る。1人3種くらいの技能を身につけなくては生き残れない」との思いからです。他社からノウハウを学び、仕事を受注して実践。先見性と行動力が「藤原技研に頼めばなんでもやってくれる」という評価を固めました。91年に有限会社、03年に株式会社に組織変更。関連会社の株式会社「住まいと介護の相談室」も設立しました。82人の専属技術者を抱えています。

 近年は、住宅建築にも健康志向やエコ感覚が浸透し、自然素材で環境に優しい塗り壁が見直されています。調湿性や断熱・保温性に優れた素材でシックハウスの有害成分を吸着し、優れた消臭機能を持つ珪藻土壁やシラス壁工法などに注目、時代のニーズに合った職人の技術を提供します。

藤原技研工業・陽恵苑

#chapter3

世の中に役立つ事業を

 藤原さんは05年、脳梗塞(こうそく)で倒れ、3カ月入院。治療、リハビリを通して医師や作業療法士の患者に対する熱い思いを知りました。「自分も世の中の困りごとの手助けをできないか」。ベッドの中で思いついたのが老人介護施設です。運営主体となる有限会社「サン・リンク」を設立し、07年にグループホームとデイサービスの「陽恵苑」を長寿の神様・武内神社近くにオープン。建物は土壁を利用したぬくもりにあふれた木造建築で、「自宅に近い感覚で過ごしてもらうため、広い敷地には日本庭園を設けています」。2011年3月、隣接してもう1棟グループホーム「心」を開設。さらに、新たな世の中に役立つ事業の展開を検討しています。
(2010年8月取材:2018年10月一部改訂)

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藤原陽吉

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藤原陽吉プロ

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株式会社藤原技研工業

 

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