左官職人を育て、住まいづくりに技術・技能を提供するプロ
藤原陽吉
Mybestpro Interview
左官職人を育て、住まいづくりに技術・技能を提供するプロ
藤原陽吉
#chapter1
「かつて、石見地方の左官職人が全国で活躍し、すばらしい鏡(こて)絵もたくさん残されています。この技術を後世に伝えていくことこそが私の使命です。あと数年で創業60年を迎えますが、今では皆がプロの職人として活躍しています」と語るのは島根県松江市八幡町、株式会社藤原技研工業の代表取締役会長藤原陽吉さん。創業以来、同社は多くの技術者を育ててきました。その技術は業界でも高く評価されています。
「藤原流」では、若者を自宅で預かり、親代わりとなって技術と人間性を共に磨きます。しかし、順調に成長する若者ばかりではありません。問題を抱え、行き場を失った若者も受け入れています。新人たちは、技術を身につけ、黙々と仕事に励む先輩の姿を見て変わっていくのです。
「弊社の技能と技術がお役に立てていると実感するたびに、これまで頑張り努力してきて良かったと感じます。皆が成長し、大人になって要職を担い、お客さまとのコミュニケーションも取れるようになり、本当に楽しい職場となりました」
近年、若者の建設業離れが進んでいることも藤原さんは懸念します。
「もう一度原点に帰り、若い人たちを育てていきたいと考えています。今では、この職業が本当に良きパートナーとなり、人生をより楽しくさせていただいています。今後は、人々のため、社会のために尽力していきたいですね。そして、優れた建造物など国の宝を守っていくためにも、技術者の育成は私の使命だと思っています」
#chapter2
藤原さんが左官を志したのは小学4年生の時。父親が事業に失敗。兄は障がいがありました。当時自宅を改築中で、職人たちの仕事ぶりをつぶさに観察。「左官になって家を支える」気持ちが芽生えたといいます。中学卒業後、職業訓練校を経て松江市内の事業所に弟子入り。やる気を支えに腕を磨きました。「名工ともいえる長老の人たちにずいぶんかわいがってもらったものです」。
4年後の1968年に独立。20歳になったばかりでした。「怖いもの知らずでした」と当時を振り返ります。修行時代から馬が合った現同社専務の田中道夫さんが仲間に加わり、藤原さんが営業、田中さんが現場と役割を分担。「周囲の人が応援してくれて、仕事をいただきましたが、お金のことが切り出せず集金ができない。米びつがいつも底をついていました」。―[胸を張ってお金をもらえ・人はみな平等・芸は身を助ける]―さまざまな人から多くのことを学びました。持ち前の明るい性格で、相手の懐に飛び込んだのです。
景気のいい1970年代、外構工事や土木、リフォームなど仕事の幅を広げました。「好景気の反動が必ず来る。1人3種くらいの技能を身につけなくては生き残れない」との思いからです。他社からノウハウを学び、仕事を受注して実践。先見性と行動力が「藤原技研に頼めばなんでもやってくれる」という評価を固めました。91年に有限会社、03年に株式会社に組織変更。関連会社の株式会社「住まいと介護の相談室」も設立しました。82人の専属技術者を抱えています。
近年は、住宅建築にも健康志向やエコ感覚が浸透し、自然素材で環境に優しい塗り壁が見直されています。調湿性や断熱・保温性に優れた素材でシックハウスの有害成分を吸着し、優れた消臭機能を持つ珪藻土壁やシラス壁工法などに注目、時代のニーズに合った職人の技術を提供します。
#chapter3
藤原さんは05年、脳梗塞(こうそく)で倒れ、3カ月入院。治療、リハビリを通して医師や作業療法士の患者に対する熱い思いを知りました。「自分も世の中の困りごとの手助けをできないか」。ベッドの中で思いついたのが老人介護施設です。運営主体となる有限会社「サン・リンク」を設立し、07年にグループホームとデイサービスの「陽恵苑」を長寿の神様・武内神社近くにオープン。建物は土壁を利用したぬくもりにあふれた木造建築で、「自宅に近い感覚で過ごしてもらうため、広い敷地には日本庭園を設けています」。2011年3月、隣接してもう1棟グループホーム「心」を開設。さらに、新たな世の中に役立つ事業の展開を検討しています。
(2010年8月取材:2018年10月一部改訂)
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