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「食感分析機器」のパイオニアとして繊細な感覚を計測し、食品の品質アップをサポート

食感分析機器で世界の「おいしい」を支える専門家

山口陽徳

山口陽徳 やまぐちようとく
山口陽徳 やまぐちようとく

#chapter1

「サクサク」「もっちり」などおいしさを決める食感。咀嚼を再現して数値化

 「私どもは、1966年、食感を分析する専門機器を世界で初めて製品化しました。お米をはじめ、餅、団子、パン、麺などの食味官能テストで用いられ、スルメイカのような硬い食品も計測可能です」

 そう語るのは、埼玉県川越市の「タケトモ電機」代表取締役の山口陽徳さん。食品分析機器「テンシプレッサー」を展開しています。

 「量・形を一定にした食品を板状の部品でせん断し、前歯でかむ動作を模倣して固さを測るのが食感分析の基本です。当方の機器では、複数回フラットな部品で押しつぶすことで、奥歯でかむ動作も再現。独自の食感分析プログラム『多重積算バイト測定』により、軟らかさやしなやかさ、噛み応えや崩れやすさも数値化できるのが特長です」

 舌で感じる“味”、鼻で感じる“香り”に加え、咀嚼(そしゃく)したときに感じる“食感”が“おいしさ”を大きく左右します。特に日本語は、「サクサク」「もっちり」「ほくほく」など食感を表す言葉が豊富だといわれます。

 「多彩な表現からも、食を味わうことに対する日本人の繊細さがうかがえますよね。当社は、“人が咀嚼した時にどう感じるか”にこだわります。“食感”という個人差のある感覚を数値で示し、できる限り見える化することで、食品の品質安定化や向上につながります」

 食品の硬さだけでなく、弾力も分析できる食感物性測定器「テンシプレッサー マイボーイ2」も開発。精度の高さから肉加工食品メーカーや畜産試験場、グミ菓子メーカーなどで採用され、「食べた時の感覚と分析結果がかなり近い」と好評を得ているそうです。

#chapter2

自社ブランド製品をカスタマイズし、幅広いニーズに技術で応えるのが喜び

 山口さんは大学で液晶分野の技術を研究後、精密部品メーカーにエンジニアとして就職。CCDカメラやアミューズメント関連機器の開発・設計を担当しました。

 転機は数年後。パソコンに向かい黙々と図面を引く日々に物足りなさを覚え始めた20代後半の頃、親族の葬儀で当時のタケトモ電機社長・西沢光輝氏と出会います。後継者不足の悩みを聞いたこともあり、後日、会社を見学。「正直、初めは『食感分析って何?』という所感でした」と苦笑しますが、事業のスタイルにひかれて転職を決意しました。

 「直接お客さまからニーズを聞き取り、自ら反映させていけるところに魅力を感じました。指示通り定められた仕様のものを作って終わりではなく、製品をカスタマイズしてユーザーの元で使用されるところまで責任が持てるのは、自社ブランドを手掛ける企業だからこそです」

 2000年の入社以来、山口さんは日本全国を飛び回り、販路を拡大。職人の勘頼みで味わいを標準化できなかった伝統菓子店、原材料の産地や素材のコンディションが変わる中でも品質を保たなくてはならない水産加工食品工場、多品目の商品を適正に評価したい総合食品会社、肌ざわりの質感“テクスチャー”を改良したい化粧品メーカー、農業関連の研究機関や大学など、多岐にわたるニーズに応えてきました。

 「正確な測定結果を導くには準備が肝心」と、サンプリングの方法を共有。製品の販売経路、消費者が食すタイミングをふまえたアドバイスも行っています。

山口陽徳 やまぐちようとく

#chapter3

おいしさを追求する日本市場で培った食感分析の技術・手法を世界へ

 2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、素材の持ち味を生かした料理が海外で人気を集めています。四季折々の山海の幸に恵まれ、また地域に根差した郷土料理が受け継がれている日本は、バラエティーに富み、成熟した食文化が息づいています。

 「東南アジアなどで発展を遂げている国でも、日本食を好む方が増えてきている印象です。おいしいものをいただく幸せは万国共通。日本のお客さまの厳しい目、味覚で育てていただいた技術や手法を使って、世界中の方々に多種多様な“おいしい”を届けるお手伝いがしたいと思っています」

 2023年、先代社長から事業を引き継ぎ新たなスタートを切った山口さん。近年は海外進出にも注力。アジア各国の展示会に参加したり、取引先の紹介を受けるなどして自社製品の販売協力店のネットワークを広げています。韓国、台湾、中国、ベトナムの協力店ではデモンストレーション用の機器を貸し出し、実演を通じてユーザーを増やす工夫をしています。

 畜産や漁獲による環境負荷を軽減するため、さらには健康志向の高まりを受け、市場が広がる肉や魚などの代替食品分野にも着目しています。

 「味よりも食感の再現は難しいと言われます。近づけたい食品の食感を測定・分析し数値化しておくことで、代替食品のクオリティーを高めることにも貢献できたらうれしいですね。各国・各地の食のプロフェッショナルに寄り添い、多くの人に喜ばれる“おいしい”を追求していきます」

(取材年月:2024年6月)

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専門家プロフィール

山口陽徳

食感分析機器で世界の「おいしい」を支える専門家

山口陽徳プロ

分析機器メーカー

株式会社タケトモ電機

味・香りとともに食品の「おいしさ」の要因の一つである食感を、人の咀嚼動作を再現した分析機器で測定。柔らかさ、噛みごたえなどを独自の食感分析プログラムで数値化することで、品質安定化や改良に貢献します。

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