人生に前向きになれるよう、後押ししてくれる現代版寺子屋運営者永島紀子

人生に前向きになれるよう、後押ししてくれる現代版寺子屋運営者

永島紀子

お寺という場所で、学びの可能性を広げる

　季節の花が咲き誇る「深谷山光明院瑠璃光寺」は、平安時代から1200年以上続く天台宗のお寺です。広い境内に新築された多目的ホール・光明殿で開かれているのが「未来を創る寺子屋光明塾」です。

　「墓じまいなどお寺受難の時代と言われる中で、お寺の可能性を広げ、限りある人生を自分らしく生きていくお手伝いをしたい」と語るのは、塾長の永島紀子さん。

　日本女子体育大学を卒業後、短大の保育学科で専任講師をする中で住職と結婚。「先代が他界し、主人が後を継ぐタイミングで大学を退職しました。先生、先生と呼ばれる立場からお寺の嫁になり、自分の存在が小さくなったようで最初は戸惑いました」と振り返ります。

　住職の妻として、3人の子を持つ母親として多忙な毎日を送りながら、悩んでいる人や、困っている人を放っておけない面倒見の良さがありました。そして、お寺は「人間の死」を身近に感じる場所でもあります。

　「ガンで闘病している方や、家族を亡くされた方など、遠い存在だった『死』を突然突きつけられ、受け止めきれずに苦しんでいる方に、私に何ができるのかと心を痛めるばかりで…」

　さまざまな声に耳を傾ける中で、「人生は必ず終わりがくる。だからこそ、その人らしく輝いてほしい」と切に願うようになった永島さん。突き動かされるように1997年に「光明塾」を開塾し、宅建合格講座やヨガレッスン、脳活性プログラムを展開するなど地域に貢献すべく尽力しています。

　「周りの人が幸せになることに関わりたい。それが自分の使命と強く思うようになりました」

相手に誠実に、プロフェッショナルとして応えるのが礼儀

　宅地建物取引士、社会福祉士、心理カウンセラー、コーチング、ヨガベーシック指導者など、永島さんは数多くの資格を取得しています。

　「最初は檀家さんのお話を聞くスキルを身につけたいと、子育てをしながら1年半ほどメンタルカウンセラーの教室に通いました。じっとしていられない性格なんです」と笑顔を見せます。

　その後、宅地建物取引士資格試験に挑戦し、50点満点中47点という高得点で合格を果たします。気になることがあれば関連書を読み尽くし、とことん追求する。学ぶことが楽しくもありました。

　「民生委員を頼まれたので、地域住民の相談に乗り、必要な支援へとつなげる社会福祉士、健康のためにヨガ教室をしたいと思ったのでヨガ指導者というように勉強を続け、気づいたら何の専門家かわからないほど資格が増えていました。資格がなくてもいいかもしれませんが、なんとなく流してしまうのは申し訳ない。教える者としての姿勢があります」

　何事にも真摯に取り組む永島さんの姿は、周囲の人たちに良い影響を与えています。自分は何もできないと後ろ向きだった人が一念発起して事業を成功させ、生き生きと活躍しているそうです。

　今後は、経営者を対象にしたコーチングにも力を入れていきたいとも。「会社のトップは従業員やその家族に対する責任がありますが、まずは自分自身が幸せであってほしい。感情コントロールや思考パターンなどを測る脳活性プログラムなどを使い、経営者と従業員の幸福度を高めていけたら」と話します。

子どもから経営者まで、社会を幸せに導く人を増やす

　月2回、FMクマガヤの「寺嫁日記」というコーナーでパーソナリティーを務めている永島さん。暮らしのマナーや人生観といったテーマについて発信しています。

　「男性優位の職場で働き、嫁入りして家事や育児に追われ、自分は何のために存在するのかと自問した日々があるので女性の葛藤がわかります。子どもの独立などで空虚な気持ちになり、空の巣症候群になっている同世代の方々には自分の世界を持ち、自立して前を向けるようメッセージを送りたいですね」

　また現代版の寺子屋として、学研教室（運営：学研エデュケーショナル）を開くほか、子ども向けの論語やそろばん学習のYouTube配信。「脳傾向性診断テスト」を活用して子どもの強みを引き出し、進路選択に役立てるプログラムを提供しています。

　「昨今は、子どもたちが学校に対し不信感を抱いている印象。公的な教育では限界があることを私塾がカバーし、子どもたちが生きていく上でよりどころとなる軸を作っていきたい」と言います。

　「人は欠けている部分に目が向きがちで、良い部分は見えにくいものです。第三者から見たその人の素晴らしさを伝え、自信を持てるようにサポートしていくつもりです」

　謙虚に人の意見を聞き、学び続けることは何歳になっても大切と語る永島さん。情報に左右されるのではなく、自分で判断ができる力があれば、何があっても乗り越えられるという思いがあります。自分軸を持つ凛とした人が「光明塾」から輩出される日も近そうです。

（取材年月：2021年10月）

魂を輝かせ、人生を謳歌する人を増やしたい

お寺という場所で、学びの可能性を広げる

相手に誠実に、プロフェッショナルとして応えるのが礼儀

子どもから経営者まで、社会を幸せに導く人を増やす

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