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見守り、失敗を受け止め「できること」を増やすことで、笑顔に満ちた人生を

地域と共生する障がい者グループホームを運営する専門家

佐伯重和

佐伯重和 さえきしげかず
佐伯重和 さえきしげかず

#chapter1

利用者が『帰りたくなる場所』を目指し、アットホームな障がい者グループホーム「笑顔の家」を運営

 「障がいのある人がどう日々を過ごし、どのように人生を歩んでいきたいかを考えたとき、グループホーム選びはとても重要です。ぜひ、ご本人に合ったところを見つけてほしいですね」

 そう話すのは、春日部市で障がい者グループホーム「笑顔の家」を運営する佐伯重和さん。昨今は異業種からの参入もあり事業者が増えているのは歓迎すべきことですが、選定には時間と労力を要するため、「親御さんが元気なうちに始めてほしい」と強調します。

 「障がいの特性、条件や立地など、親御さんが十分に考慮して選んだとしても、お子さんが生活していく中でどうしてもギャップは生じてしまいます。『思っていたのと違う』といった場合は、別のところを探せばいいのです。まずはお試しで、体験入居してから決めてください」とアドバイスします。

 利用者が『帰りたくなる場所』を目指し、アットホームな雰囲気づくりを心掛けている佐伯さん。わが家のように親しめる一戸建てのホームを4棟展開し、十余人が暮らしています。
 「温かみを感じてもらうために、朝晩は炊きたてのご飯を用意しています。食事や入浴などの介助、金銭、服薬の管理、通院同行のほか、訪問看護・訪問歯科と連携し、多方面からサポート体制を整え、一人一人に寄り添っています」

 一方、利用者の保有能力を伸ばすために “やらない支援”もあると説明します。「見守ることで、できるようになることもあります。『できること』を一つでも増やし、人生を豊かにしてもらうことが本意ですから。失敗しても、私たちがしっかりと受け止めます」
 佐伯さんは「できることを増やすのに『清く正しく』や『何でも出来るように』という前提を外し、本人の『やりたい、なりたい』という想いに寄り添っている」と語ります。

#chapter2

「お互いに支え合うことで社会は成り立っている」と感じたことがきっかけに

 現在の道に進むまで、広告マーケティング業界に約30年身を置いていた佐伯さん。当時は、視覚障がいがある人とエレベーターで一緒になっても、どう声を掛けていいか分からず、最初はあいさつもできなかったと振り返ります。
 「同じマンションの住人さんだったのに、情けないですよね。ある時、その方が区民プールに通っていると聞いて『すごいな』と驚きました。理由は、『できない』と思い込んでいたからです。私にもできないことはあり、人それぞれ範囲が違うだけ。お互いに支え合うことで社会は成り立っていると気づいたことで、自然に話しかけられるようになりました」

 その後、49歳で子どもを授かったことで現職につながる転機を迎えることに。「私も妻も高齢だったので、お産や生まれてくる子どもに与える影響について知りました。“障がい”をより一層身近に捉えるようになり、自立を後押ししたいという気持ちを強くしたことから、施設を立ち上げることにしました」

 佐伯さんは2019年に開業。事業を営む上では、前職で培った洞察力とマネジメント力、そして43歳から始めたトライアスロンの自己管理能力も役に立っているとか。
 「若い利用者さんが多いため、私の方が先に引退することになるでしょう。みなさんが生涯にわたって不安なく暮らしていけるように、基盤を作っていく必要があります。先々を見据えて準備することは、目標を設定し、練習を重ねて完走するトライアスロンと通ずるものがあるんです」

佐伯重和 さえきしげかず

#chapter3

地域の子どもたちと利用者が触れ合う場として、子ども食堂も検討

 佐伯さんは、ある家族の一言が印象に残っているそうです。「祖父母のもとで育った方がホームに入居することになったのですが、おばあちゃんが『この子はもう二度とうちに戻ってくることはありません』とおっしゃったんです。自分たちがいなくなった後を案じ、孫の人生を私どもに託す覚悟を受け取ると同時に、お二人にとって大切なお孫さんをお預かりする責任感が芽生えました」

 境遇はさまざまで、愛情をもって育てられた人ばかりではありません。天涯孤独の身の上や、虐待を受けてきた人がいるのも事実です。「すべての利用者さんが笑顔あふれる毎日を送れるよう、力を尽くしたい」と佐伯さん。

 かつて障がい者との間に心の壁を感じることもありましたが、今は対等に接することができるようになったと語ります。
 「利用者さんは苦手なことやできないことが多いだけ、感情を言葉でうまく伝えられないだけ。私は、『障がいがあるからかわいそう』なんて決して思いません。そう思うこと自体がおかしいからです。世の中を変えるまではかないませんが、少しずつ理解を求めていきたいですね」

 利用者と地域の子どもたちが触れ合う機会を設けるため、子ども食堂の開設も検討しています。
 「子どもたちをグループホームに招いて、みんなと一緒に過ごす中で、自分のまわりにはいろんな個性を持った人がいるんだと認識してもらえたらいいなと。利用者さんだけでなく、支援する人や地域の人たちの笑顔も増やしていきたいです」

(取材年月:2022年10月)

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佐伯重和

地域と共生する障がい者グループホームを運営する専門家

佐伯重和プロ

障がい者グループホーム運営

笑顔の家

利用者が安心して暮らしていける障がい者グループホームを目指し、食事などの生活支援、通院支援や金銭管理のサポート体制を整えている。また障害の特性と人生プランに合わせたグループホーム選びを呼び掛ける。

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