漢方薬の専門家
新井吉秀
Mybestpro Interview
漢方薬の専門家
新井吉秀
#chapter1
地下鉄御堂筋線西田辺駅から歩いて約5分、シャープ本社の南に「漢方誠芳園薬局」はあります。JR阪和線鶴ヶ丘駅からなら徒歩約2分で、5年前に「遠方から車でお越しの方も多いので」と、車3台が駐車できる新店舗へ移転し、完全予約制にしました。明るい店内は漢方薬局というより、カフェや美容院のような温かさとセンスのよさがうかがえます。店内には漢方薬のにおいがあふれ、そこにいるだけで体の中が浄化されていくような、心身ともに穏やかな気持ちになります。
薬剤師の新井吉秀さんは漢方薬を専門に扱って30年になるそうですが、威厳と言うよりは「柔和さ」が魅力。「うちにいらっしゃる方は、病気に対して大きな不安や深刻な悩みをお持ちの方が多い。私はまず、症状や今までの治療、検査の数値などをうかがい、30分以上かけて丁寧に説明します。なんと言っても目的は病が良くなることなのですから、今の状態を解説し、『どうすれば良くなるか』ということを理解していただき、不安を安心に変えて希望を持って笑顔で帰っていただきたいのです」と新井さん。
「『体質によって(薬が)合う合わないはありますか?』という質問も時折ありますが、体質によって合うかどうかではなくて、合わせる側の、私たちサイドの上手か下手かの問題です。また、検査値があれば持ってくることをお願いしています」と、淡々とした口ぶりの中に、自信があふれています。
#chapter2
一口に東洋医学・漢方と言っても、いくつもの流派があるそうで、新井さんが師事したのは、大阪で漢方薬を主体とした内科医院を開業していた山本巌先生でした。当時は今以上に西洋医学と東洋医学の垣根が高かったそうですが、「山本先生は『東洋医学の道を歩むのならまず西洋医学を勉強し、理解した上で漢方医学を研究することが大切だ』と、一般の漢方医とは正反対のことを常々おっしゃっていた」と振り返ります。実際、山本先生のもとには、大学病院からも難病の患者が紹介されてやってきましたし、日本全国から医師たちが勉強に訪れていました。
現在、新井さんは山本先生の教えに従い、漢方薬を処方する際にも、血液検査などのデータを分析します。「一般的に日本漢方も中国漢方も西洋医学の良さを取り入れることなく、腹診や脈診によって処方を決定しますが、それでは『ちょんまげ時代』と何の進歩もありません。現代では西洋医学の『病因』『病態生理』を取り入れて、病気の原因をより正確に把握し、それにあった処方を行えばいいのです。相手をぼんやりとしか知らないより正確に知っている方が、正確に対処できますから」
「病気を治す」。そのためだったら東洋医学も西洋医学も、それぞれのいいところを使えばいい。新井さんのシンプルな考え方が、とても新鮮で、潔い。このあくまで相手の立場に立ったスタンスが、大きな信頼につながっているのでしょう。
#chapter3
山本先生の教えに従い、新井さんは病態をより正確に知るために様々な分野の研究を続けています。新しい病名と出合えば調べ、データと突き合わせ、それぞれにあった調合を考える。その執念は一体どこからわき出ているのでしょうか。「『目の前のひとりを大切にすること』に尽きます。病に苦しんでいるのは、本人だけではなく、その周りの友人や家族も一緒に苦しんでいます。そう思うとより強く『治したい』と思うのです。だから、いい結果を出すにはどうしたらいいか探究する。その繰り返しです。『かけがえのない生命の相談』にあずかるのですから真剣です。必然的に、東洋医学だけではなく、西洋医学の病態生理、血液検査、免疫学、そして心療内科から人生哲学まで熟達していなければならない。こうなると、私の相談机上は、時折、3次元を超えて4次元の空間ができたこともあったような気がします」と新井さんは笑います。
新井さんのもとには、自己免疫疾患(こう原病)やぜんそく、アレルギー性鼻炎、がん、甲状腺、婦人科疾患など、まるで総合病院のようにありとあらゆる病気を抱えた人が、日本全国から駆け込んできます。忙しい毎日の中で、新井さんは今、「漢方医学界に山本先生の教えを伝えたい」という新たな使命を感じています。
(取材年日2009年11月)
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Profile
漢方薬の専門家
新井吉秀プロ
薬剤師
漢方誠芳園薬局
東洋医学はもちろん、病態生理や免疫学など西洋医学の長所も利用。相談者には、症状や今までの治療、検査の数値などもうかがう、丁寧なカウンセリングにも定評がある。
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