企業の経営変革を進めるIT化のプロ小林真也

企業の経営変革を進めるIT化のプロ

小林真也

企業の課題や習熟度、資金面を考慮し、顧客にふさわしいITツールを提案

　原材料費の高騰や人手不足など、多くの経営課題が山積する中小企業。残業時間の削減と、賃上げといった処遇の向上を両立し、持続的に成長していくには、業務の効率化が重要となります。

　岡山県倉敷市西阿知町の「アイティ・コーチ」代表の小林真也さんは、さまざまな企業のIT導入を後押しし、定常業務の簡素化や経営の変革をサポートしています。

　「IT化で大切なのは、何を実現したいかを考え、明確にすること。システムがあれば全て解決できると思うあまり、導入自体がゴールとなってしまう『手段の目的化』のわなに陥りがちです。ITはあくまで手段であることを最初にお伝えし、自社でどのように活用していくのかを掘り下げます」

　小林さんはIT企業で公的機関や民間企業、大学などのITインフラを構築するエンジニアや営業職に就いていたほか、ユーザー企業として社内のシステム整備などを担当。作り手、売り手、使い手それぞれの立場を知り、多様な視点からアドバイスできるのが強みです。

　また、岡山県津山市の外郭団体「つやま産業支援センター」ではICTコーディネーターとして産・学・官・金、多業種との橋渡し、数多くの地場企業のデジタル化に携わった実績を持っています。

　「抱える課題やITに対する習熟度に合わせ、お客さまにふさわしい仕組みを提供。場合によっては無料の表計算ソフトなどを用い、費用を抑えたツールなども開発します。正解を一方的に示すのではなく、お客さまのなりたい姿をともに描き、答えを一緒に探すのが私のスタイル。社名のとおり、中小企業のITのコーチとして伴走します」

情報資産の有効活用や稼働率の把握・向上を通じ、企業組織の変革を促す

　「システムを入れたが、思うように業務改善が進まない」。小林さんの元には、製造業をはじめ多くの企業からデジタル化に関する相談が寄せられます。

　岡山県東部の金属加工会社も、省力化に悩む企業の一つでした。
　「人手不足を補おうと、思いつく限りのシステムを投入したものの、期待した成果が得られていませんでした。ヒアリングで課題を浮き彫りにして体系的に整理した結果、過去の図面や見積書を参考にせず一から書類を作成していたり、加工機械の稼働状況が把握できていなかったりすることが明らかになりました」

　効率化に向け、社の情報資産を一元化できるツールを導入し、稼働時間を可視化するために機械にセンサーを装備することを提言。IT業者への仲介役も担いました。

　「訪問を重ねるたびに、社員の皆さまが仕事に対して自信を付けているのを感じます。『どうすれば取引先に付加価値を与えることができるか』を考えるようになり、組織が変革している実感がありますね」

　県南部の理化学製品の商社では、業務に関する知識やスキルが社長に属人化。知見を共有するため、言語化されていない暗黙知を手順書などにまとめて形式知化し、社内全体で活用できるようにしました。

　さらに小林さんは、ITベンダーに自社の課題や要望を伝える提案依頼書（RFP）の作成・発行にも対応。経済産業省推進資格のITコーディネータを保有しており、オンラインセミナーや企業内研修を通じてITと経営を連携させる実践的なノウハウを提供しています。

公的機関での支援経験を生かし、元気な中小企業を増やして地域を活性化

　長崎県生まれの小林さんは、岡山大学大学院を修了後に農林水産省へ入省。成田空港で検疫業務に従事します。
　「ちょうど政府がe-Japan計画を推進していた時期。省庁で電子化が進むのを目の当たりにして、今後ITが主流になると考えてこの分野に進むことに決めました」

　ネットワークサービス会社などで経験を重ね、2021年につやま産業支援センターに入職。108社の企業を訪問し、IT化の支援やシステム・ソフト開発企業とのマッチングを手掛けました。

　「当時も現在も、ITに積極的に取り組む企業と、昔ながらの勘や経験に頼る企業の二極化が進んでいると感じます。デジタルに消極的な経営者には『従業員のためにも業務改善をしましょう』と説得し、具体的な方法が分からない企業には業務を棚卸しして無駄な工程を洗い出し、ITツールを取り入れるための補助金を紹介。お客さまのITリテラシーが十分育ったのちに、開発企業につなぐよう心掛けていました」

　ある工場では予定工程数の可視化を提案し、繁閑の波の平準化や過剰労働の防止を推進しました。3年の任期満了後、独立しアイティ・コーチを創業。「今後も中小企業を元気にしていきたい」と意欲を燃やします。

　「IT促進により生まれた余剰時間を、新しいビジネスの創出に使ってほしいと願っています。成長性の高い企業が増えれば、地元で働きたいという子どもたちの思いも育まれるはず。経済を活性化する好循環をつくり出し、地域社会に活気をもたらしたいです」

（取材年月：2025年4月）

多様な視点からIT導入を伴走支援し、業務改善や経営の変革をサポート

企業の課題や習熟度、資金面を考慮し、顧客にふさわしいITツールを提案

情報資産の有効活用や稼働率の把握・向上を通じ、企業組織の変革を促す

公的機関での支援経験を生かし、元気な中小企業を増やして地域を活性化

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