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汚水処理に50年携わってきた経験と、技術士の知見を生かす水のコンサルタント

堀や池の水質浄化を導く技術、商品をもつ水の浄化のプロ

楠敏明

楠敏明 くすとしあき
楠敏明 くすとしあき

#chapter1

池や湖沼の浄化剤「アクアボール」と、余剰汚泥減量化剤「スーパースラッジ」を展開

 岡山には、岡山城の堀をはじめとする城址の堀や、児島湖、数多くのため池が点在しています。こうした水場では、水の流れが少ないことから、藻類やアオコが発生しやすく、景観や水質への影響が課題となる場合があります。一方で、県内で盛んなカキ養殖により発生するカキ殻についても、十分に活用しきれていない側面がありました。

 これら二つの課題に向き合ってきたのが、「アクアテクノス」代表の楠敏明さんです。汚水処理に約50年携わり、水資源・水質管理分野の国家資格である技術士(衛生工学・上下水道部門)を取得。水質を調査・分析し、改善策を提案する「水のコンサルタント」として活動しています。

 注力しているのが、岡山大学と共同開発し特許を取得した水質浄化剤「アクアボール」です。原材料は瀬戸内海産のカキ殻。殻に含まれる成分が、汚濁物を分解する好気性細菌の働きを促進することに着目し、独自技術で粉末化・球状化しました。水中につるすだけで使用でき、電気や機械を使わず、現場の状況によっては設置後1カ月ほどで透明度の変化が確認されるケースもあるといいます。
 併せて展開しているのが、工場排水などの処理過程で発生する余剰汚泥を減量化する溶剤「スーパースラッジ」です。活性汚泥法における微生物の生物相を整えることで、余剰汚泥の発生量を従来の3分の1以下に抑え、処理コストの軽減に寄与しています。

 いずれの製品も現場ごとの水質や規模に応じた活用を前提としており、楠さんは事前の調査・分析を踏まえ、導入方法や運用の考え方まで含めて提案。製品の提供にとどまらず、実情に即した水質改善を支援している点が特徴です。

#chapter2

美しい瀬戸内海を原点に、快適な水環境づくりを目指して

 子どもの頃、瀬戸内海で海水浴を楽しんでいたという楠さん。しかし高度経済成長期にかけて、汚水や下水が海へ流入し、赤潮が頻発。魚の養殖業をはじめ、地域に大きな被害が生じました。1970年には公害国会が開かれ、水質汚濁防止法が制定。国を挙げた取り組みが進み、30~40年を経て、瀬戸内海はかつての美しさを取り戻していきました。

 一方で現在も、良好な景観を維持するための池や堀の浄化、さらには児島湖に代表されるように、農業用水の環境基準を満たしていない湖沼やため池が多く残されています。こうした農業用水の課題に向き合う中で開発したのが、廃棄物であるカキ殻の成分を活用した水質浄化剤「アクアボール」です。汚水・廃水処理場から発生する余剰汚泥の量を抑える汚泥減量化剤「スーパースラッジ」も商品化しました。

 楠さんは広島大学工学部に進学し、発酵工学を専攻。微生物による水質浄化の基礎を学びました。卒業後は、下水処理場などの設計・施工を手がける会社に就職し、現場の最前線で数多くの「水のトラブル」と向き合ってきました。

 「水という資源に携わるうえで、施設や設備機器を構築するだけではなく、水質そのものを浄化することが重要だと考えるようになりました。技術士の資格を取得し、コンサルタントとして独立しましたが、現実は厳しいものでした」

 水処理施設の維持管理を担う顧客に有用な助言をしても、「人手や資金の問題で実行できない」と断念される場面が少なくありません。「もっと安く、もっと手軽に水質を改善できないか」。そう思案する中で楠さんの目に留まったのが、水槽の中に置かれたカキ殻でした。

楠敏明 くすとしあき

#chapter3

信頼性を高めるため、ゴルフ場の池や農業用ため池、城址の堀での実証実験を実施

 水質浄化に関する専門性と豊富な経験の両輪で課題解決に取り組む楠さんは、岡山市と玉野市にまたがる児島湖に、澄んだ水を取り戻す構想を描いています。生活排水などが流入し、かつては日本でも有数の水質汚染が深刻な場所とされた児島湖を、地域の子どもや県民が安心して憩える水辺としてよみがえらせたい。その思いから、水質浄化剤の開発に情熱を注ぎ生まれたのが、廃棄物であるカキ殻の成分を活用した水質浄化剤「アクアボール」です。

 効果の信頼性を高めるため、ゴルフ場の池で実証を行ったところ、設置から約2週間後には池の底に沈むゴルフボールが確認できるまで水の透明度が向上しました。水を攪拌(かくはん)・循環させる送風機を用いずに運用でき、維持管理の負担軽減にもつながっています。倉敷美観地区に隣接し、地域住民や観光客が集う複合文化施設「倉敷アイビースクエア」の堀でも採用され、一定の成果が確認されています。さらに、農業用ため池や撫川城址の堀でも実証実験を重ねてきました。

 「今後は実証事例をさらに積み重ね、最終的には児島湖の浄化に挑戦したいと考えています。農業用水の確保にとどまらず、魚介類の養殖や水辺のレジャー、県民の憩いの場として機能する湖へ。水産業や観光業など、地域の未来につながる水環境を目指し、取り組みを続けています」

(取材年月:2026年1月)

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楠敏明

堀や池の水質浄化を導く技術、商品をもつ水の浄化のプロ

楠敏明プロ

水のコンサルタント

有限会社アクアテクノス

景観や農業等の用水を確保する池や堀を、カキ殻に含まれる成分をボール状に加工して水中に吊るすだけで浄化が可能な商品を開発。多くの実績を持つ。安くて、維持管理費が不要。約5年間効果を発揮する商品である。

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