プロの中のプロを目指す墓石のプロ
港定明
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プロの中のプロを目指す墓石のプロ
港定明
#chapter1
岡山県瀬戸内市邑久町の瀬戸内市役所そばで、1929年から3代にわたって営業を続ける港石材店は、地域密着型の“石屋さん”です。
3代目代表取締役の港定明さんは税理士も兼ねる変わり種。「もと税務署員ですので、そのつながりで資格をとりました。石屋のお客さまに、ちょっと役立つ税の知識を提供できたら」とほほ笑みます。
港石材店を大きくしたのは港さんの父・実さん。精力的に働いていたそうですが、1988年に病気で急死しました。そんな中で持ち上がったのが後継者問題。「兄(長男)が継ぐのかと思っていたら、なぜか『お前、計算ができるんだからやれ』と次男の私におはちが回ってきまして…」
当時石材店の仕事をまったく知らなかった港さんは悩みましたが、「港石材店をごひいきいただいている、大勢のお客さまの期待を裏切れない」と29歳で新しい世界に飛び込む決心をしました。
「とにかく現場に出て、体当たりで学ぶしかない」と、港さんは熟練の職人さんの下で、一労働者として肉体労働。盆と正月を除いて休みなく現場で働きました。「体を壊したりしながらも、石屋として自信を持つことができました。そして、石屋の世界は職人目線の世界だということに気づきました。『素人(お客さま)は玄人(石屋)に黙ってまかせておけばいい』と、よく言えば職人はプロとしての自負を持っているのですが、お客さまの目線とは食い違う傾向があり、一層満足していただくためには、素人目線が大切なんだと気付いたんです」と港さんは力を込めます。
#chapter2
ゼロからの出発となった港さんは石屋の修行中にはいろいろ失敗もしました。特に石の業界だけで通用する慣習の数々には困らされたと言います。例えば、この業界では石材の長さは寸尺法で測るのですが、1寸を約3センチ、1尺を約30センチとする昔ながらの単位になかなか慣れなかったそうです。
「墓石用の石材を注文したら、届いた石が手のひらに乗るサイズ。驚いて確認すると、どうも電話口で寸と尺を間違えたらしい。注文書も作らないのが普通の業界で、本当に間違っていたのかどうかも分からず、制度改革しなくてはと強烈に意識しました」
石の業界のことを学ぶに従い、職人の美学と、一般のお客さまの考える美しさとの間には開きがあると感じるようになったと、港さんは言います。「お客さまのもうちょっとここを何とか…という要望が、実は職人にとっては自明のありえない造りということは多いんです。でも、それで終わっていては職人側の常識(美学)を押し付けているだけですよね」
職人の考える「正解」も大切だが、お客さまの「思い」も大切にしたいというのです。実際、港さんは石材業に就いて5年目くらいの時、職人さんとけんかをしたことも。「職人仕事に『ここをもうちょっと』と3回くらい文句を言ったら、『じゃあ、お前が気に入ったようにやれ』と怒られたことがあります。それでもたたき上げの石屋ではない私にとって、顧客寄りの感覚は無視できない大切な感覚。職人さんに分かってもらおうと四苦八苦しました」
一般の人が日常的に利用する店ではなく、知識が豊富なお客さまも少ない。だからこそ店側が工夫して、一期一会に満足していただける提案をする、その努力が不可欠だと港さんは力強く話していました。
#chapter3
小規模店ということもあり、港石材店は特に営業活動をしていません。これまでの仕事を評価したお客さまからの引き合いが大半です。「良い仕事をしてきた結果と胸を張りたいところですが、今後はそれだけでは厳しいと考えています」と港さん。なぜなら親子間で先祖供養の知識が引き継がれていないと感じていて、次の世代まで『お得意さま』と呼べる人がいるかどうかわからないからです。
「自分の家の檀家寺を知らない人も目立つ昨今、自分の家の墓を、どこの業者が作ったか、はっきり把握している人、特に若者は多くはないでしょう。将来のことを考えると、いかに石材店として情報を発信し、たくさんのお客さまと絆を強めていくかが大きな課題です」
定期的な石の情報紙発行や、石材店を訪れた人に税理士の知識を生かしたアドバイスをするサービスを考えているという港さん。店の知名度アップの方法をいつも模索しています。
また、実は港さん、日ごろから自分たちの手がけたお墓を見て回っています。何か不都合がおきていないかを確認し、小さな修理であれば無償で直しているのです。「ある意味自己満足だし、『そんなに簡単に港石材店の工事は不都合が起きるのか』と思われても困るから…大声では言えません」。このメンテナンスがサービス表に書かれていない理由です。
真心で最適な提案をすることをモットーとする港さんと、港さんを支える温かなスタッフが出迎えてくれる店。それが港石材店なのです。
(2011年11月取材)
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Profile
プロの中のプロを目指す墓石のプロ
港定明プロ
有限会社 港石材店
お客様目線を重視し、真心で最適な提案をする「地域密着型の石屋」です。
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