声と話し方のプロ玉野井ちさと｜マイベストプロ大分

声と話し方のプロ

玉野井ちさと

心掛けているのは一人ひとりに合わせた丁寧な指導

　大分市岩田町の閑静な住宅地に、音と声のプロフェッショナルスタジオ「音や」の看板が掲げられています。「音」専門のプロダクションであるとともに、ここでは「しゃべりて」を目指す人たちを対象にしたスクールを開講。その指導にあたっているのが、民放局の元アナウンサー・玉野井ちさとさんです。

　ご本人も現役のしゃべりてとして活躍しながら、アナウンサー時代の経験や教本を参考に、「玉野井メソッド（理論）」とでもいうべきカリキュラムで、後進たちの指導に力を注いできました。指導の柱は4つ。＜基礎力＞＜表現力＞＜読解力＞＜人間力＞。これら4つをしっかりと身に付けると「伝える力」が付き、「伝える力」は人を感動させ、突き動かすことができる。これが玉野井さんの掲げる理論です。

　指導者としてなにより嬉しいのは、生徒が変わる瞬間。サ行が苦手な人に、歯をかみ合わせた状態でスー…と子音を出させ、母音と共にサ行を言わせてみると、驚くほどきれいな音に変化する…など、個々人の舌の形、歯並び、顎の骨格に合わせ、的確で具体的な指導に力を入れています。
　2007年からは、大分県立芸術文化短期大学でアナウンス講座を担当。授業を受けた学生がしゃべりのプロを目指し、再び玉野井さんのもとを訪ねることも少なくありません。

知人や後輩から「教えて欲しい」と言われ講師に

　結婚を機に民放局を退職した玉野井さん。第一子を妊娠中のある日、近くに住む女性から「アナウンスのプロになるための基礎を教えて欲しい」と頼まれ、自宅でレッスンを始めました。これが講師としての第一歩。次第にレッスン希望者が増え、玉野井さん自身も、もっとわかりやすく効果的に基礎を身につける方法は…？と知恵を絞り、アンテナの感度を上げて情報を収集、カリキュラムのベースを作り上げていきました。

　ずっと大切にしているのは、アナウンサー時代に先輩から頂いた「マイクの向こうにお母さんがいるつもりでしゃべりなさい」の言葉。いちばん好きな人に話しかければ愛情のこもった伝え方ができるという教えです。と同時に、東京で活躍しているナレーターの方から「愛情だけではない、テクニックが大事」のアドバイスをもらい、表現技術にも、一層力を入れるようになります。こうして「玉野井メソッド」はより深みを増していきました。
　最初に生徒を受け入れてから約30年、玉野井さんのもとを巣立ち、プロとして活躍している教え子たちは100人近くにのぼります。

表現することはコミュニケーションの原点

　最近は、声優志望の若者や語彙を増やしたいという人が多いと言います。玉野井さんは声優になるための本の中から実践向きのものを選んだり、語彙を増やすために小学生向けの国語ドリルや慣用句の本を併用しながら、面白くてわかりやすいレッスンを開いています。「練習題材はどこにでもあるんです」小学生用の教材を使うといった意外で面白い試みが、いかにも楽しそうな玉野井さん。
　その人に必要なポイントを具体的に指摘する。できたら褒める。できたことを繰り返しインプットさせる。できた実感とできる自信が、その人を必ず伸ばし、変えていく。すべてはその人の夢を叶えるために。そう信じて生徒の前に立っています。　さて、プロ志望者のレッスンを続けるうちに、「このスキルはビジネスにも必要なのでは…？」と感じることが多くなりました。そこで社員研修プログラム「スマイル＆スマイルボイストレーニング」を立ち上げ、元気な返事、明るいあいさつ、誰からも愛される愛嬌のある人柄になるための基本を、社員研修として一般の方にも教えるようになっています。

　玉野井さんはまた、絵本の朗読グループ「大分のえんどうクラブ」を主宰しています。「大分のえんどうクラブ」はプロのしゃべりてによる朗読グループで、九州各県の点字図書館などに朗読CDをプレゼントしたり、2年に1度朗読ライブを行うなどの活動をしています。「朗読は表現の集大成。ライフワークです。」と、滑舌の良いよく通る声で語ってくれました。そばにいるだけで元気をもらえる、玉野井さんはそんな素敵な女性です。
（取材：2012年4月）

声で伝える、心が伝わる～しゃべりを基礎からレッスン

心掛けているのは一人ひとりに合わせた丁寧な指導

知人や後輩から「教えて欲しい」と言われ講師に

表現することはコミュニケーションの原点

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