結婚を望む男女のイベントをコーディネイトするプロ荒木直美

結婚を望む男女のイベントをコーディネイトするプロ

荒木直美

カップル成約率は50％。婚活イベントは相手探しの「トレーニングの場」　

　「私の目標は、単にペアになることではありません。二人が良き仲となり、新しい門出を迎えることです。1回でベストパートナーが見つかるのはまれなので、中長期的なミッションとして心得ることが肝心。まずは、愛する気持ちを育てる恋愛力を身につけ、テクニックを磨いていきましょう」

　そう話すのは、「婚活界の瞬間接着剤」「歩くカップル製造機」などの異名を持つ、婚活コーディネーターの荒木直美さんです。

　「ヒットやホームランを打つためには、バッターボックスにたくさん入らないといけませんが、初めての場合はボールがよく見えませんよね。でも、場数を踏むとボールをきちんと捉えることができるようになります。婚活も同じで、トレーニングを重ねると周りの景色がはっきりしてきて、自分に合ったパートナーを見つけやすくなります」

　これまでに成立させたカップルの数は約1800組。イベントでのカップル成約率は約50％で、平均20％と言われる中、高い数字を誇ります。

　自分らしく活動できるように、事前のレクチャーを大事にしている荒木さん。笑顔のつくり方や話し方、話す内容、告白の仕方まで、二十余年に及ぶ実績の中で培った独自のメソッドを、丁寧に具体的に説いています。

　「婚活イベントに参加すれば何とかしてくれると思っている人が多いのですが、あくまでも出会いの場を提供するもので、自分で動かなければ先には進みません。ノウハウを知り、イベントでの実践トレーニングを通して、ここぞという時に使えるよう、婚活力を上げてもらいます」

仕事の原動力は荒木ベビー！婚活は、究極の少子化対策

　荒木さんの中で強く印象に残っているは、3年で20回の婚活イベントに参加し、お相手に巡り合えた40歳の男性です。

　「おとなしく、草食系を絵に描いたような方でした。『空振りは素振り』と励まし、数を重ねるうち、だんだん上達していきました。婚活はハートの筋トレ。彼もたくましくなり、あきらめなかったからこそ大ホームランを打ち、すてきな女性と結ばれました。彼のような人は何組もいます。今、みなさんにお話ししているのは20年以上、実証、検証してきたことばかりです。焦らず、心を強くしながら取り組んでいけば結果がついてきます」

　また、出会いの場所も意識してほしいと言います。
　「令和のキーワードは『3D』です。どこで、誰と、どんな風に生きていくのか、ライフスタイルで相手を選ぶ時代です。自分の好きなもの、人生観なんかを突き詰めてからイベントを選ぶことが必須。同じ趣味を分かち合い、共同作業をするテーマ婚活が増えていますが、アウトドア派がインドア派の催しに行くのはナンセンスです。自分らしく泳げるところでなければ自分らしさが出せません。自分の価値観と似た人が集まりそうなところに身を置くとことも大事です」

　講演やメディア出演と忙しく過ごす荒木さん。特に幸せを感じるのは、ゴールインした二人が子どもを連れて会いに来てくれたときだとか。
　「勝手に荒木ベビーと呼んでいて、もう100人を超えています。抱っこするとうれしくて涙がでます。命を生み出すお手伝いもさせてもらえたのかなと」

ハラスメントにならない「独身者向け結婚応援プログラム」で全国行脚　

　「35歳までの独身の男女で、男性7割、女性6割に彼氏彼女がいません。今の若い世代の人たちは、結婚よりももっと手前のところでつまずいています」
　
　荒木さんの元へは、従業員や地域住民の未婚化を憂える全国の中小企業、自治体などから悩みが寄せられます。先日も、「家庭を持つ気はないの？などと声を掛けたいが、ハラスメントを危惧しためらっている」と、男性社員ばかりの機械メーカーから相談がありました。

　「結婚はライフデザインの一つなので、ソロがいいという人はそれでOKです。しかし、そうでない人にとって婚活は『人生のリスクマネジメント』であり『防災』。婚活市場のハザードマップを示して『先延ばしは自滅の刃』であり、見て見ぬふりをして先送りするのは危険。少しでも早くアクションを起こすべきだと伝えました。会社からは、代弁してくれて助かったと喜んでもらいました」

　会社側は、社員が独り身を続けることで将来的に親の介護を理由に退職するケースなどがあるため、危機感を募らせているそうです。荒木さんは、経営者や管理職に向けて「ハラスメントにならない結婚支援方法」も指南しています。

　「『誰かいい人いないかなぁ』と、のんびりしている人が危なっかしくて見ていられないの！」と荒木さん。この仕事が天職だと朗らかに語ります。

　「まだまだこれから。今後は、各地の企業や自治体などで研修を行い、結婚したい人だけではなく、結婚を応援したい人たちもサポートしていくつもりです」

（取材年月：2022年7月）

婚活は人生のリスクマネジメント。自分らしく婚活するためのコツ、トリセツを伝えることが私の役目

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