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子どもを取り巻く環境が変化しても、気持ちに歩み寄る保育を届けたい

子どもの主体性を育むため、気持ちに歩み寄る保育のプロ

松尾肇浩

松尾肇浩 まつおもとひろ
松尾肇浩 まつおもとひろ

#chapter1

自分らしく、さまざまな友達といろいろな遊びを通じて子どもの主体性を育む

 「人間形成にとって重要な幼児期に、子どもが生き生き、伸び伸びと自分らしく過ごし、さまざまな友達といろんな遊びを展開することが大切です」
 そう話すのは、長崎市に拠点を置く「正道会」の理事長、松尾肇浩さん。長崎、福岡のほか、東京や神奈川で保育園やこども園、学童くらぶ、病児保育室などを展開しています。

 「大人は『できる、できない』を考えてから行動に移すけれど、子どもは知らない物事に興味を示し、やってみよう、触れてみようとします。この探索活動は0歳から始まります。子どもの主体性を育むには、『何かをしたい』『やってみたい』という発信を、われわれ保育者がしっかり受け止めなければなりません」

 自由に行動できる環境で、わきあいあいとした空気ができあがると、仲間に入りたいと他の子も自然に集まるように。「たくさん遊んで楽しい」と感じられる時間を大事にしている松尾さん。

 子どもが好奇心旺盛なのは今も昔も変わりませんが、保育のアプローチは変化していると言います。
 少し前までは、家庭にも公園にも、そして地域にも子どもの社会的な営みがありました。現在は核家族が進み、保育の在り方にも変化が必要です。つまり地域に子ども集団が減少した今、園で年齢に拘らない子ども集団を形成する必要があるということです。従来のやり方を続けるばかりがいいわけではなく、いかに望ましい保育に変えていくか、今はその過渡期です」

#chapter2

理想と現実のギャップに悩み試行錯誤しつつも、保育の面白みや深みを実感

 若者の引きこもりが懸念され始めた1990年代に、高校卒業を迎えた松尾さん。野外活動によるコミュニケーションで社会復帰を図るプログラムを習得するため、アメリカに留学しました。学びを深めるため大学に編入を決めた時、保育事業を営む父親から「保育園に興味はないの?」と声を掛けられます。

 「問題が起きてから解決する方法もあるけど、0~5歳までにきちんとした育ちがあれば、生きづらさなどを抱える子どもが減るのではないかと、保育士や幼稚園教諭の免許を取得しました」

 自身も5人のわが子の子育てに奮闘。「保育者には理想論があります。「ちゃんと子どもの気持ちを受け止める!でも理想通りいく時ばかりではありません。現実を目の当たりして苦悩することはしょっちゅうです」とほほ笑みます。

 試行錯誤と反省の日々ですが、子どもが生まれ、保育の仕事の面白みや深みを実感しているそうです。「自分にかけがえのない存在がいるからこそ、園児一人一人としっかり向き合い、関わっていこうという意識も強くなりました」

 息子が交友関係につまずいて登校できなかった時は、教室に赴きクラスメートと話す機会をもらったことも。
 「『息子は小柄でおとしいかもしれないけど、兄弟の中ではたくましいんだよ。君たちが見ていることがその子の全てではなく、違う側面があることを意識してほしい』と伝えました。学校で私の認知度が上がると話題も増えて、子ども同士の関係が良くなりました。親としても保育者としても、“子どもに歩み寄る”という姿勢は持ち続けたいですね」

松尾肇浩 まつおもとひろ

#chapter3

保育事業の役目は、誰一人取り残すことなく多種多様な居場所を作っていくこと

 コロナ禍においては、子どもたちを取り巻く状況が一変。地域との交流が途切れ、園でのイベントも制限される中、松尾さんは苦慮の末、年長のお泊まり保育を実施しました。
 「夜、寝かしつけていると『みんなと一緒にいられてうれしい。園長先生、ありがとう』って園児が言ったんです。私たちの頑張りを理解してくれていたことに感激し、勇気づけられましたね」

 少子化が進む昨今、保育業界はいかに園児を獲得するかという競争社会でした。「これからは、共に創造する“共創社会”を目指していきたい。幼稚園や保育園にうまく順応できない園児や、不登校の児童、誰一人取り残すことがないよう、多種多様な居場所を作る役割を担っていきたいと考えています」

 松尾さんのもとで運営する「学童くらぶ 寺子屋」には、学校に行けない児童がやって来て、園の子どもたちと遊んだり、おやつの用意を手伝ってくれることもあるそう。また地域の中で安心して楽しく子育てができるように、子育て支援拠点施設「はらっぱ」の利用も呼び掛けます。

 「子育ては戸惑いの連続です。どうか、『悩まない』ということを答えにしないでください。悩むことは相手の価値観に寄り添っている証拠です。保育者はみなさんと同じ思いですので、悩みながら共に進んでいきましょう。ぜひ、つらくなる前に私どもを頼ってください。子育てをしている人とつながり、愚痴を言い合って、気持ちを共有していきましょう。私たちはいつでも待っています」

(取材年月:2022年12月)

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専門家プロフィール

松尾肇浩

子どもの主体性を育むため、気持ちに歩み寄る保育のプロ

松尾肇浩プロ

保育施設の運営

社会福祉法人 正道会

保育園の運営に加え、学童保育や子育て支援施設などの事業も展開し、多種多様な人の居場所づくりに力を入れる。子どもを取り巻く環境が変化する中、ICTなどを取り入れて時代に合わせた保育のアプローチも追求。

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