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修理とメード・イン・ジャパンのオリジナル時計製造の匠として、時と思い出を紡ぐ

職人技が光るオリジナル時計製造と各種時計修理のプロ

小林知之

小林知之 こばやしともゆき

#chapter1

職人技が光るオリジナル時計を提供し、時計修理の“駆け込み寺”の役割も

 「時計は単なる“時間を知る道具”ではありません。ものづくりの粋を尽くした作品です」と話すのは、長野安曇野市の「南安精工」代表取締役の小林知之さん。

 1967年の創業以来、機械装置の設計・製造、部品加工を主業とし、「精密機械を通じて生活を豊かにする」との理念で、オリジナルの機械式時計を製作・販売する「時計屋復刻堂」を運営しています。

 「末長く、幅広いシーンでご愛用いただくため、機能性や耐久性、意匠性を追求しました。メード・イン・ジャパンの高品質な時計を適切な価格で届けたいとの思いから、各商品は10万円前後からご提供しています」

 オーソドックスで上品なたたずまいの「Azusa CLASSIC(クラシック)」、ベーシックや赤針など7種類のモデルがあり、カスタマイズもできる「Azusa ORTHODOXY(オーソドキシー)」、1900年代のレトロな趣を独自の視点で復刻した「TMPL(テンプル)」といったブランドを展開しています。

 「ペアウオッチやプレゼントなどではメッセージを刻印し、ベルトやバックルの交換も承ります。企画から一貫して時計づくりをしている会社だからこそ、一人一人のご要望に柔軟にお応えすることができます」

 時計の修理や、部品を分解して点検・整備するオーバーホールにも対応。難しいケースも請け負い、愛好家の“最後の砦(とりで)”となっているようです。

 「アンティークや、海外製・国産を問わず扱い、メンテナンスに必要な部品の多くを調達でき、どうしても入手が難しい場合には自社で製作できる点が強みです。現存しない部品を作って復活させることで、大切な時計を未来へとつなぐお手伝いをします」

#chapter2

時計作りのノウハウと職人の技能を生かすため、時計専門店をオープン

 時計屋復刻堂プロジェクトがスタートしたのは2004年。「南安精工」の3代目である小林さんが旗振り役となりました。

 「当社は1980年から大手時計メーカーの協力工場となり、部品の加工や組み立てをしてきました。一方で、世界的な技術コンクールで入賞するような優秀な職人の方々が引退の年齢を迎えており、危機感を覚えました。長年にわたり培ってきたノウハウと時計職人の技能を次世代につなぐ方法はないか。考えてたどり着いた結論が、時計専門店と、オリジナルブランドの設立でした」

 小林さんは「いつまでも大切にしたいと思える価値のある時計」を指標に掲げ、試作と実験を繰り返します。試行錯誤のすえ、可能な限り日本製で仕上げる機械式時計が誕生しました。

 時計の心臓部となるムーブメントを職人の手仕事で改良、調整。フェイスは、硬度が高いサファイアガラスを用い、国内で数社のみが手掛ける技巧で滑らかな曲面を描きます。文字盤の目盛りは、分針の邪魔にならないギリギリの高さに調整し、視認性とデザイン性を兼ね備えるなど、細部まで丁寧に作りこんでいます。

 「手作業と機械作業を組み合わせ、自社工場で製造することで、価格を抑えることにも成功しまた。また、時計作りに携わる世界中の工場・工房を見学し、多くの人脈と知見を得たことも、メーカーや製造年代を問わず修理に応じる上で力となりました。おかげさまで、全国のお客さまから購入やお手入れの依頼を頂戴しています」

#chapter3

職人技を未来へつなぐ仕組みを構築。日本の時計文化を世界へ、次世代へ

 時計職人の減少が進む中、小林さんは、技術の可視化・レシピ化に取り組んでいます。

 「デジタルで残すことで、誰でも学べる環境を作り、個人ではなく組織として技能を守る体制を構築したいと考えています。データ化・マニュアル化して人材を育て、時計産業の未来を支えることが私どもの使命と感じています。アンティーク時計などの修理についても、お役に立てるようノウハウを継承していきたいと思います」

 また今後は、海外市場への展開にも力を入れていきます。日本製時計の精巧さと美しさを世界に発信することで、日本の時計文化を次世代へと引き継いでいくことが目標です。

 「日本製時計の魅力を理解してくださるお客さまは世界中にいらっしゃり、今は少しずつ接点を増やしている段階です。ヨーロッパでは伝統的に、その道を究めたマイスターに対するリスペクトがありますし、大量消費社会であるアメリカでは、人と違う物、こだわりの品を身に着けることに憧れを持つ人も多いんです。丹精込めた品を多くの方に手に取ってほしいですね」

 おはじきを連想させる丸みを帯びたレディースウオッチ「Marble-W(マーブル)」は、文字盤に真珠母貝をあしらい、光の当たり方によって色調が変化。裏蓋には「希望・前向き・美しさ」といった花言葉を持つガーベラの花冠を施しています。

 職人の魂を込めた時計が、時を超え国境を越えて愛され続けることを願う小林さん。時とともに思い出も刻む時計を届けています。

(取材年月:2025年2月)

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小林知之

職人技が光るオリジナル時計製造と各種時計修理のプロ

小林知之プロ

時計の製造・販売・修理

株式会社南安精工

大手メーカーの協力工場として長年培ったノウハウとお客さまからの意見を結集し、デザイン・機能性・耐久性・価格にこだわったオリジナル時計を提供。入手できない部品の製作も自社で行い、幅広い時計の修理に対応。

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