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暖か・エコ・おいしい、左官の道40年超の職人が手掛ける蓄熱式薪ストーブ「ペチカ」

暖かさ続く蓄熱式薪ストーブ「ペチカ」設計・施工のプロ

山口惠次郎

山口惠次郎 やまぐちけいじろう
山口惠次郎 やまぐちけいじろう

#chapter1

つづら折りの長い煙道で蓄熱暖房、オーブンやスモーク料理の調理機能も充実

 「ペチカはロシアでよく使われている蓄熱式薪ストーブです。一般的な薪ストーブより暖かさが続き、薪の消費も低減できます。コンロ鉄板やピザ窯も付けられ、冷燻もできるので、いろんなメニューが楽しめますよ」

 こう話すのは、ペチカの施工を行う「ECO WARM(エコウォーム)」の山口惠次郎さん。熱効率の良さと煙突掃除の必要がほとんどないのが大きな特徴と強調します。

 通常、薪ストーブの熱は一直線に煙突へと抜けていきます。ですがペチカは、レンガでつづら折りの長い煙道を作るため、熱をしっかりと蓄えることができます。
 「標高1300mほどの新築住宅に設置しましたが、一番寒い時期でも朝3時間たくだけで室温20度を1日中保っていると、お客さまから聞きました。夕方にお邪魔したところ、部屋中が心地よいぬくもりで驚きました」

 燃費がよく薪の量が少ない。ススも減り煙突掃除の必要がほとんどない。樹種を選ばず安価な薪でも使用できる。山口さんはそんなメリットも掲げます。

 さらにうれしいのが、調理器具としても活躍してくれること。レンガを一から組み上げるため設計の自由度が高く、鉄板コンロやオーブン機能のピザ窯付きのほか、スモーク料理ができるようにすることも可能です。
 「私も自宅で毎日、ペチカで冷燻した生ハムやベーコンを食べています。ゆで卵やチーズも簡単にいぶせて、とろけるような食感でとてもおいしいんです。ペチカは、家族や仲間が集うホームパーティーも演出してくれます」

 既存住宅にも取り付けることができるそうで、長野県伊那市を拠点に全国各地を飛び回っています。

#chapter2

ペチカの担い手となり、施工だけでなく、技術を伝える活動にも尽力したい

 父の背中を追い左官職人になった山口さん。40年以上にわたり、この道一筋で歩んできました。
 「一口に左官と言っても、しっくい塗り、タイル張り、レンガ積みと、いろんな作業があります。私は『何でも拒まず』という姿勢を大切にしてきました」

 こつこつと経験を重ねる中、2009年にペチカと出合います。地元の製材所から、施工を頼まれたのです。
 「図面を見せてもらい、できそうだと判断し引き受けることにしました。日頃の業務を通じて、私が身に付けたスキルが生かせる内容だったからです。むしろ最初から、『もっとこうした方が丈夫でクラックが入りにくい』などと考えていました」

 一つ、二つと案件をこなし、「コンパクトにしたい」「調理器具を付けたい」といった顧客の要望に応えることで、バリエーションも増えていきました。そして、ペチカを手掛けて10年ほどがたった頃、はるばる青森県から修理依頼が舞い込みます。

 「北海道の業者さんが作ったものでしたが、残念ながら技が継承されず途絶えてしまい、私に声を掛けてくださったようです」

 腕を見込まれ、さまざまな現場に赴くうち「ノウハウをいろんな人に伝えてください」とお願いされるように。期待に応えたいと、ネットでペチカに関する情報発信をスタートするなど基盤を固め、2022年春に法人を立ち上げました。
 「お客さまの言葉で、日本におけるペチカの担い手になろうと気持ちを固めました。今後は、技術をしっかりつないでいきたいですね」

山口惠次郎 やまぐちけいじろう

#chapter3

ペチカの良さを知ってもらうために、優位性を示すデータ化にも取り組み普及を目指す

 ペチカづくりで実績を積み、これまでに山口さんのもとで請け負った件数は、全国で約60カ所に上ります。「作り方を教えてほしい」というオファーも入るようになり、東北のゼネコンや、四国の自治体から招かれる形で指導に出向きました。
 
 裾野を広げるためにも、多くの人にペチカの魅力を知ってもらい、知名度を高めていきたいと語る山口さん。さらなる普及に向け、ペチカが持つ優位性を数値などで分かりやすく示していくことも視野に入れています。
 「薪ストーブをペチカに置き換えたお客さまからは、『薪の量が4分の1に減った』という報告をいただいています。また、煙突から出るススは、25分の1から50分の1にまで軽減されると言われています。ペチカの性能をデータにまとめ、お客さまのへ提案に活用したいと思っています」

 山口さんいわく、初期投資額は薪ストーブと大差はないとのこと。しかし、蓄熱性が高いため燃料費を抑えることができ、煙突掃除もほとんど必要ないのでランニングコストは安くなると説明します。

 「また近年では、自然エネルギーを利用したエコな暖房器具として、自治体がペチカを含む薪ストーブに対して補助金を用意しているケースもあり、導入の際の相談にも乗っています」

 現在は親子2人で活動していますが、もう一人の息子を加え、体制を拡充する予定だとか。
 「空間を優しく暖めるペチカを住まいに取り入れることは、環境への貢献にもつながります。時代の求めにも応じて、ぜひ前向きに検討していただきたいですね」

(取材年月:2022年11月)

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専門家プロフィール

山口惠次郎

暖かさ続く蓄熱式薪ストーブ「ペチカ」設計・施工のプロ

山口惠次郎プロ

左官職人

株式会社ECO WARM

ベテラン左官職人が施工。ペチカは蓄熱性に優れ、使用する薪が少なく、煙突から出るススも軽減され、環境にやさしい面も。オーブン・コンロ・かまど等オリジナルの調理設備を付け顧客のニーズに答えている。

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