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フラメンコで“私”を解き放つ。内に秘めた感情をありのままに表現できるレッスンを展開

心身のパワーを解き放ち人生を豊かにするフラメンコ指導のプロ

藤井かおる

藤井かおる ふじいかおる
藤井かおる ふじいかおる

#chapter1

初級編から実践力を磨くクラス、ゆったりしたエレガンテなど幅広い層に対応

 スペイン南部のアンダルシア地方で生まれ、移動生活を送る民族・ジプシーの間で継承されてきたフラメンコ。踊り手・歌い手・ギター奏者の3人が1組となり披露されます。ダンサーが足を踏み鳴らし、手をたたき、情熱的に舞い、歌・演奏・踊りが一体となって喜怒哀楽を描くことで、見る者の琴線に触れ、独特の高揚感へいざないます。

 「職場でも家庭でも、大人になるほど日常生活で感情を出すことが少なくなるのではないでしょうか。フラメンコは、ジプシーが生きる喜びや苦しみ、孤独や悲哀を踊りと音楽に託したもの。感情をストレートに全身で表すので、言葉にできない心の機微を解き放てるのだと思います。悲しい時は悲しいまま、うれしい時はうれしいまま。ありのままの自分を表現して、ご自身の人生を豊かにしてほしいですね」
 
 そう話すのは、仙台市青葉区でフラメンコスタジオ「cincopuentes(シンコプエンテス)」を開く藤井かおるさん。基礎を学ぶ入門・初級クラス、音楽の捉え方など実践力を磨く振り付けクラスのほか、激しい動きではなくゆったりと踊るエレガンテクラスも用意。幼稚園児や小学生、親子の受講も相談に応じ、幅広い世代を迎え入れています。

 「20代は体力があり躍動感を、30代では表現力がつき、40代、50代で生きてきた軌跡により情感が高まる。人生経験が増えるほど深みを増すのもフラメンコの魅力です。それぞれ歩んできた道のりが異なるように、踊りも一人一人違う形で上達していきます。何歳からでも始めることができますので、ぜひ見学や体験にいらしてください」

#chapter2

スペイン留学で気づいた、日本人ダンサーとしてのアイデンティティー

 藤井さんは21歳のとき、社交ダンスを習う予定で参考のために見た映画のワンシーンでフラメンコと出会い、運命的なものを感じます。

 本格的に学ぼうと上京し、日本を代表するフラメンコダンサー小島章司氏が主宰する舞踊研究所「エストゥディオ・コジマ」に入所。約6年の在籍中に数々の公演に参加して経験を積み、2001年、念願のスペイン留学に臨みます。

 世界的な女性フラメンコダンサーであるイニエスタ・コルテス氏やパストーラ・ガルバン氏などに師事した生活は、刺激的でした。

 「練習ばかりしていると『もっと気持ちを込めて、恋人のことを思い浮かべて!』と言われて(笑)。『人生を楽しみなさい』と海や食事にもよく連れて行かれました。“上手に”踊ろうとしていたけれど、日々の営みの中で育まれたフラメンコの本質は違うのかもしれないと考えるようになりました」

 また地中海に面した街で、日本と気候風土が異なる環境にいると、日本人である自分を強く意識したと語ります。

 「おおらかで明るいスペイン人に憧れても、日本人の私は感情を内に秘めるし、繊細な部分がある。だったら日本人のフラメンコを踊ろうと。『空が青い』とか『花が咲いている』とか日常の細やかなことに目を向けながら、普段は胸にしまっている悲喜、情愛の全てを踊りの糧にしようと決めたんです」

 帰国後、藤井さんはソロダンサーとして国内のフェスティバルやライブに出演。2004年、故郷仙台で長年の夢だったスタジオを開設しました。

#chapter3

心の触れ合いを大切に誰もが楽しめるスタジオを目指し、20年来通う生徒も

 生徒にレッスンする傍ら、指導者の育成にも尽力してきた藤井さん。一人で始めたスタジオですが、現在では11人ほどの講師が在籍。「みんなフラメンコが好きで教えることが好き。生徒さんの上達を第一に考えているメンバーばかりです」と笑顔を見せます。

 「設立時から誰もが平等に楽しめるスタジオを目指し、心の触れ合いを大切にしてきました。中には、20年にわたって通う生徒さんもいらっしゃいます。お互いにいろいろな話をして信頼し合い、長年の友人のような感覚もありますね」
 
 生徒は40代~60代が中心。思うようにできない人には手を差し伸べて助け合うので、クラスみんな和気あいあいとした雰囲気だとか。

 「仕事や子育て、親の介護、自身の体調など、さまざまな課題が押し寄せる年代だけれど、私自身も心が弱っている時ほど踊る力が湧いてきますし、『フラメンコのおかげで頑張れる』と励みにしてくださる生徒さんもいます」

 1年半から2年に1度は、練習の成果として発表会を開催。依頼を受けて地域のイベントなどにも出演し、自ら積極的に参加する生徒が多いと言います。

 「頭も体も、感性も感情も全て使うのがフラメンコ。生徒さんからは『ゴールがないからずっと追求できる』『一人一人が尊重されて自由なのがいい』という声をいただきます。私も同じようにフラメンコに魅了されている一人です。力強く激しく、軽快に華やかに、自らを解放する機会としてフラメンコを伝えていきたいですね」

(取材年月:2024年5月)

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藤井かおる

心身のパワーを解き放ち人生を豊かにするフラメンコ指導のプロ

藤井かおるプロ

フラメンコ講師

藤井かおるフラメンコスタジオ cincopuentes(シンコプエンテス)

頭・体・感覚・感情の全てを使い、人生の喜びや悲しみを踊りと音楽で表現するフラメンコ。一人一人に寄り添い、個々の内に秘めた感情を引き出すレッスンを提供。個性を出す体の使い方も細かく丁寧に指導します。

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