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包丁やはさみだけでなく食品加工会社が使用する特殊な刃物の研磨に対応

包丁やはさみだけでなく食品加工用刃物まで手掛ける研磨のプロ

古川晴海

古川晴海 ふるかわはるみ
古川晴海 ふるかわはるみ

#chapter1

野菜カットスライサーやマルチプレスカッターなどの研磨で実績を構築

 食材、紙などを切ったり刻んだりする包丁やはさみ。使い込むほど手になじみ、扱いやすくなっていく一方で切れ味は少しずつ失われていきます。

 私たちの生活に欠かせない刃物を丁寧に研ぎ磨き、切れ味を取り戻してくれるのは、三重県四日市市にある「ふるかわ商店」の古川晴海さん。2008年に刃物研ぎ事業に乗り出し、家庭用をはじめ、料理人や理美容師といったプロの道具も手掛けています。

 「私の実家は、鉄工所などに研削砥石(といし)を納入する卸に長年従事してきた商社でした。少子化の影響もあってか、新たに研師を志す人が減っているばかりか、鬼籍に入ってしまった熟練の職人も増えつつあったため、周囲から『どこに頼めばいいのか』と尋ねられる機会が多くなり、自分でやってみようと思い立ちました」

 近年は、食品加工工場で用いられる特殊刃物も請け負うようになり、これまでに、野菜カットスライサー、マルチプレスカッター、ラウンドカッター、トップシールカッター、パイナップル皮むき器などの研磨実績があります。

 「工業用は、摩耗してくるとメーカー側から再購入が推奨されているようですが、まだ使えるのにもったいないですし、費用がかさんでしまいます。たとえ新品同様にはできずとも、買い替えるより安い金額で、80~90%程度の状態には戻すことができます」

 古川さんは難易度が高い内容であっても、むげに断ることはしません。「むしろ、そういうご依頼こそやりがいを感じます。諦めていたお客さまが喜んでくださると、私自身もお役に立てたとうれしくなりますね」と語ります。

#chapter2

家業の砥石商社を承継し、砥石販売を手掛けるとともに技を磨いて研師の道へ

 1963年に四日市市で生まれた古川さん。駒沢大学経営学部を卒業後、砥石材の販売業者で1年間修行し、家業に入ります。専務として入社しましたが、出社初日に先代社長である母が引退を宣言。実質的にトップとして会社を率いていくことになりました。

 「長男ですから、いずれは後を継ぐつもりでしたが、まさかいきなり経営者になるとは。今思うと、母はあまり商売が好きではではなかったのかもしれません。いずれにせよ、『この子なら大丈夫』と見込んでのことでしょうから、『どうしよう』という戸惑いよりも、『期待に応えたい』という気持ちが強かったですね」

 23歳で事業を承継し、順調に商社を切り盛りしていた古川さん。しかし、2000年代に入ると研師の減少に加え、ネット通販のECサイトが台頭したことで競争が激しくなり、業績に陰りが出ます。

 状況を打開すべく自ら職人の道へ。公共事業にも着目し、道路などの雑草対策製品の開発・販売に乗り出しましたが、2018年にいったん会社を畳む決断をします。そして、個人事業主として再スタートを切りました。

 現在も、砥石、雑草対策製品の販売業を展開していますが、柱としていきたいのは研師としての活動です。「ギターを買ってきても弾き方が分からなければ音を出せないのと同じで、砥石があれば誰もが刃物を研げるわけではありません。石に当てる角度や、押し引きの強さには経験が必要です。お客さまにご満足いただけるように、これからもっと技を磨いていきたいと考えています」

古川晴海 ふるかわはるみ

#chapter3

食品加工工場などとパイプを築き、全国を対象に刃物研磨に応えることが目標

 刃物の研磨は、これまで地元住民が主たる顧客となっていました。今後は全国を対象に、広く対応していく方針です。個人客や飲食・美容従事者はもとより、食品加工工場とのパイプを築いていきたいと古川さんは言います。

 多方面から声が掛かり、ビジネスが軌道に乗り出したことから、事業拡大がうまくいけば法人化も視野に入れています。ただ、現在は何から何まで一人でやっている状態であり、人手が足りないのが悩みの種。業務に追われる古川さんの頼もしい味方が、息子の翔将(しょうま)さんです。

 「東京でサラリーマンをしている息子が、一緒に仕事をしたいと言ってくれています。技術を伝えていくのは簡単ではないにしても、手伝ってもらいたいことは山ほどあります。もちろん、強制するつもりはありません。本人の意思が一番大事ですから」と親心をのぞかせます。

 日々忙しく過ごす古川さんには、実は事業主以外の顔もあります。一つはスポーツクラブのインストラクター。週3~4日、業務を終えたあと小学生に野球やバスケットボールを教えています。「私自身にとってもよい運動になっています。子どもたちと触れ合うことで元気をもらえますし、おかげとても健康ですよ」と笑顔を見せます。

 そして、もう一つの顔がシンガー・ソングライターです。つやのある歌声が人気で、月に2回ほどライブハウスなどに出演。本業でもライフワークでも、身に付けた技能を生かしてニーズに応えています。

(取材年月:2023年6月)

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古川晴海

包丁やはさみだけでなく食品加工用刃物まで手掛ける研磨のプロ

古川晴海プロ

刃物研磨業

ふるかわ商店

長年砥石販売に携わってきました。事業を通じて得た知見を生かし、2008年から刃物研磨事業を開始。一般的な包丁やはさみだけでなく、食品加工工場で用いられている特殊な刃物の研磨も請け負っています。

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