農業経営支援のプロ
前之園博一
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農業経営支援のプロ
前之園博一
#chapter1
行政書士・前之園博一さんの専門は、農業の経営支援です。今、農業が抱える、資金繰り、農地問題、後継者問題という3つの課題を、「経営」という視点から支援したい。これが、前之園さんが行政書士事務所を立ち上げた理由です。
「主な業務としているのが資金繰りです。生産者の方は、返すことを具体的に考えずにお金を借りてしまいがち。経営見通し、収支計画、償還計画をしっかりと立てて、利益を上げながら借金を返済していくことが大事です」。一口に資金といっても、施設や設備に投資する資金と、自然災害などで収入がなくなったりした場合などの運転資金があります。「たとえば米を主に作っている生産者の方なら、作付面積、面積当たりの収穫量である単収、単価などのデータをいただき、そこから計画書を作成します」。単収は技術力などによって違うし、単価も、地域や作っている品種で変わると前之園さん。資金調達をきっかけとした事業計画を出すことは、「生産者ご自身の、それまでの技術力や経営を振り返り、良くしていく機会にもなるんです。どこが悪いのかを見極め、そこを改善していく計画があれば、金融機関も融資をしやすくなります」。農業の世界には、技術指導や税金対策の支援をしてくれる存在はあっても、「経営支援」が不足していると前之園さん。「日々の作業などで手一杯なのが生産者。農業も“経営”であるという意識をもち、私のようなコンサルタントを導入してほしいと思います」と語ります。
#chapter2
前之園さんは、祖父の代からの農家に生まれ育ちました。大学は農学部に進学し、農業経済を専攻。農村調査などで、現場での聞き取り調査をし、机上の学問とは違う生の声に刺激されたと言います。「農業は、文系理系というだけでなく、複数の分野にわたる知識が必要であるということがわかり、ますます興味が湧きました」
大学卒業後、日本政策金融公庫に就職。ここで、農林水産業の融資や債権回収を担当したことから、「農業の経営支援」に対する思いが強くなっていきました。「金融機関は貸し手の都合で融資するし、借りる生産者も、知識がないまま勢いでお金を借りてしまう。身の丈に合わない借金で、1年後には双方が困ったことになることがあるんです」。そうなる前に、ブレーキをかけてあげられる第三者が必要と感じた前之園さんは、独立するに当たり行政書士の資格を取得。「行政書士は業務が幅広く、行政機関に出す書類やさまざまな権利義務関係など、扱う書類は1万種以上。農業は行政に対する許認可関係が多いので、行政書士は役立てます」。農業には国や自治体からの補助金もさまざま。なかなか広く行きわたらない補助金情報を伝える補助金セミナーや資金調達セミナーのほか、マイナンバーセミナーなど、農業以外の勉強会も開催し、生産者の経営力向上を支えています。
#chapter3
「知的資産経営という言葉があります。これは、いわば“決算書に出ない”強みのこと。生産者の持つ技術、ノウハウ、環境も立派な“資産”であり、それをきちんと文字や数字にして報告書に起こすことは、事業継承や資金調達にも役立ちます」と前之園さん。生産者が培ってきた技術や環境のポテンシャルを「見える化」する作業も支援してくれます。
「事業を譲る場合、相手が家族ならさほど複雑なことはありませんが、法人経営をしており、従業員や仲間の生産者、地域の担い手に継いでもらう場合などは、きちんとした事業承継手続きが大切。それもお手伝いします」。農業は今、後継者不足の問題もありますが、まったく違う業種や農家出身でない人の新規参入も少なくありません。「農家は世襲されており、農業への新規参入は難しかった。しかしそれでは発想が限られますから、異業種からの参入はいいと思うんです。でも、農業への理想と現実にはギャップもあります」。たとえば新規参入者には、農業でも週休2日、月15万から20万円の収入を確保したいと理想を描いてくる人も。それを、代々農業に携わる人が無理と断言して終わるなら何も先に進みません。「生産者に加え、資金調達、販路拡大、技術指導、それぞれの役割を持つ人がチームとなってネットワークをつくれば可能性も広がります。ベテラン農家の方々と、孤立しがちな新規農業参入者の方を橋渡しできるような仕事がしていきたいですね」。やりたくなる農業、また、次の世代に継がせたくなる農業の創出が前之園さんの目標です。(2015年9月取材)
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農業経営支援のプロ
前之園博一プロ
行政書士
前之園行政書士事務所
農業生産者を「経営」という視点から支援。作付面積や単収、単価などのデータから生産者の収支計画や償還計画を作成。経営計画をもとに資金繰りだけでなく、農地転用や農業の事業継承を行政書士として行う強み。
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