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ランドセルリメイクは、未来へ記憶を残す “魔法のような錬金術”

思い出を未来へ残すランドセルリメイクのクリエーター

西川正佐子

西川さん正面
作業台

#chapter1

愛着あるランドセルを、バッグや財布など日常使いができるアイテムにリメイク

 6年間、毎日使い続けたランドセルは、子どもの成長の証であり、親や祖父母の愛情まで込められた特別なもの。使わなくなった後も、そう簡単に処分できるものではありません。

 家族にとって愛着あるランドセルを、日常使いができるアイテムにリメイクしているのが、藤沢市の住宅街の一角に店舗兼ショールームを構える「SNAKER-handicraft-革製品専門店」。

 オーナーの西川正佐子さんをはじめ、主婦であり熟達した職人でもある4人のスタッフが、型抜きしたパーツをミシンでしっかりと縫製、細かい部分は手縫いを施します。

 サコッシュや長財布、パスケース、コインケースといった40種類以上のサンプルから好みのデザインをチョイス。再使用が可能な部分のサイズや形状に合わせて、組み合わせ方を工夫し、3点、5点と複数のアイテムが選べるコースを用意しています。

 店舗奥の工房には、全国から送られてきたランドセルが所狭しと待機。作業中は「ここのワンポイントが気に入っていたんだろうね」「この使いこんだ風合いは残してあげたいね」と、親目線のつぶやきも聞こえてきます。

 「完成まで約10カ月とお待たせしていますが、お客さまとの打ち合わせは細やかに、丁寧にと心掛けています。基本仕様でもこだわりポイントを優先したり、難しいオーダーには代わりのアイデアを提示したり、メールなどのやりとりの中で納得の仕上がりを目指します」と西川さん。

 トートバッグ、スマホケースといったオリジナル雑貨を販売するほか、スポーツチームの記念品や音楽グループなどのグッズも受注制作しています。

#chapter2

「思い出へのオマージュを込めてランドセルをよみがえらせたい」と創作をスタート

 訪れる人を、ハイトーンでややハスキーな声で迎え入れる西川さん。店内には革小物やレザーアクセサリーなどさまざまな品をそろえ、ちらりと顔をのぞかせる骸骨模型やドクロのイラストが子どもたちを驚かせることも。

 「10代の頃からヘヴィメタルバンドのボーカルとして活動していて、今もその本気度は変わらないつもり。そう話すと皆さん納得してくれます」

 結婚、出産を機に第一線から遠ざかるものの表現への情熱は衰えず、自己流で始めたレザークラフトをWEB上で販売。創作を楽しんでいたある日、家族で出掛けたリサイクルショップで、古いランドセルがあまりの安値で売られているのを発見します。
 
 「思い出へのオマージュを込めて、この手でよみがえらせないものか」と持ち帰り、実用的な小物の試作を始め、SNSにアップ。反響に応えて、専用のホームページを立ち上げることに。

 製品の完成度は百貨店からも声が掛かるほどでしたが、堅実にスキルを磨き、2013年に本格的に開業。当初はママ友たちの力も借りつつ、自宅の敷地内に設けたプレハブ小屋を作業場に、一つ一つ手づくりしてきました。

 「2020年に現在の店舗を構えてからは、季節行事の際に地域の子どもたちにふれあいの場を提供したり、一般向けのワークショップを開催したりと、オープンな店舗づくりに努めています。なにしろ、ちょっと足を踏み入れにくい雰囲気があるかもしれないので」と、ツーブロックの金髪を揺らして朗らかに笑います。

商品

#chapter3

手を加え、形を変えて新しい命を吹き込むランドセルリメイクで、未来へ記憶を残す

 西川さんは「将来リメイクして長く愛用することまで想定できれば、丈夫な素材や好みにマッチするものを、妥協なく真剣に選ぶのでは」と、ランドセルを購入する際の選び方もアドバイスしています。
 
 「6年間という期限で役目を終えてしまうランドセルを、日常使いできるものに作り変えて次のライフステージにも携えていくことは、世界的に広がるSDGs(持続可能な開発目標)の概念にも添うものではないでしょうか」

 「リメイクを、社会問題や家族の絆を考えるきっかけにしてほしい」と、不定期でレザークラフトを体験するイベントなども開催。今後はさらなる展開も検討中とか。

 「『入学のお祝いでもらった感謝を込めて、今度はおばあちゃんにプレゼントしたい』と相談を受け、フォトスタンドを作ったこともあります。何世代にもわたって思いを紡いでいくお手伝いができることが、何よりうれしいですね」

 ヘヴィメタルボーカリストと西川さんの掛け合いが際立つYouTubeのオリジナルコマーシャル動画も話題に。独特の世界観から繰り出す強烈なパフォーマンスで見る人をひきつけながら、クリエーター魂あふれるメッセージを込めたハートウオーミングなストーリーが描かれています。

 「ランドセルリメイクは手を加え、形を変えて新しい命を吹き込む“錬金術”のような作業。未来へ記憶を残す “魔法レベルの技”なのかもしれません」
 西川さんの製作意欲の根底には、今も熱いスピリットがたぎり続けているようです。

(取材年月:2024年2月)

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専門家プロフィール

西川正佐子

思い出を未来へ残すランドセルリメイクのクリエーター

西川正佐子プロ

革製品製作販売

SNAKER-handicraft-革製品専門店

思い出の詰まったランドセルを、40種類ものアイテムから自由に選び小物にリメイク。予算や好みに合わせて5点、3点コースを用意し、こだわりを優先しながら、一つ一つ手作りします。

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