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季節を感じて暮らしを豊かに。地元の野菜で作る家庭料理教室

季節野菜と暮らしを愉しむ家庭料理研究家

鎌田忍

料理に関する疑問に丁寧に答えます
レモン農家を訪ねて

#chapter1

食に関する知識や、滋味深い旬の素材を引き出す調理法を伝授

 「四季がある日本には、季節ごとに旬を迎える食材が数多く存在します。栄養価が高く、味もしっかりしているため、手間をかけずにおいしく食べることができます。野菜についての知識や素材の味を生かした調理法をお伝えしますので、日々の生活に取り入れてみませんか」

 こう呼び掛けるのは2015年から神奈川県茅ヶ崎市で、料理教室「BOO's HOUSE」を開く鎌田忍さん。「季節を感じ、暮らしを愉しむ」をコンセプトに、地元・湘南の季節野菜を使った家庭料理を教えています。
 味がすでに整っているのに、余計な調味料を付け足したり、本来必要な下ごしらえを省いてしまったり、そうした“もったいない”調理をしている人が意外と多いのだとか。レッスンでは、「なぜこの下ごしらえが必要なのか」「なぜこの調味料を使うのか」といった理由まで丁寧に説明します。

 「今は、SNSで検索すると膨大な数のレシピが出てきますが、その中から自分好みの味の調理法を見つけるのは至難の業です。正しい知識を身に付けることで、必要な工程や材料が自然と見極められるようになり、自分好みの味に近づく近道にもなります」

 また、「料理のバリエーションを増やしたい」「栄養バランスの取れた料理を作りたい」など、一人一人のニーズに合わせた個人レッスンも行っています。受講生からは、「買い物の時間が短縮され、余計な物を買わなくなり、時間に余裕が生まれ節約もできた」「つらかった料理の時間が癒しの時間に変わった」といった声も寄せられています。その中には男性の姿も。

 「学びを深めていくと、食卓に花を飾ったり、料理の器や盛り付けを楽しんだりして、食を楽しんでいる自分に気付くと思いますよ」

#chapter2

地元野菜の周知を図り農家を応援。梅干しやみそなどの保存食作りの教室も

 鎌田さんが地元の野菜にこだわるのは、生産者を応援したいという思いがあるからです。茅ヶ崎市とその近郊で栽培される湘南野菜は、収穫から出荷を経て、消費者の元に届けられるまでの時間が短いことから、新鮮さに定評があります。しかし、その存在は地元の人々にもまだ広く知られていないのが現状。料理教室で使用することで、野菜の認知度を高めていこうとしています。

 生産者の顔が見える食材を使うことも心掛けており、生産者の元を訪ねて栽培の様子を写真や動画に収め、教室で紹介することも。

 「シロップ作りで使ったグリーンレモンは、若い姉妹が祖父母から受け継いだ小さな畑で育てたものでした。太陽の光が注ぎ、うぐいすの鳴き声が聞こえる自然豊かな土地で、丹精込めて作られていました。私が見聞きしたことを伝えることで、生産者と消費者の橋渡しができればと思ったのです」

 また、鎌田さんは、野菜ソムリエプロが主催する野菜塾でも学び、季節野菜の知識と野菜料理を学べる教室も開講。発酵文化推進機構が認定する発酵食品ソムリエの資格を取得し、梅干しやみそ作りなどの保存食作りも教えています。

 「日々の忙しい生活の中でも、季節を感じながら暮らしを楽しめるのは、ある意味ぜいたくなことだと思います。季節の手仕事の中でも、梅の一粒一粒に愛情をかけて丁寧に作業する梅仕事は、私にとって静かに自分を見つめ直す時間にもなっています」

季節の恵みに感謝しつつ

#chapter3

日本の食文化を次世代につなぐための料理教室を開催。社会問題の解決にも意欲

 和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、世界的な評価を受ける一方で、今後、自国の食文化を語れる人が減るのではないかと危惧する鎌田さん。次世代につなぐべく、小学生から高校生までを対象にした料理教室も開いています。そのきっかけとなったのは、保育施設で食育講座を行ったことでした。朝食で何を食べてきたのかを子どもたちに尋ねると、全員がパンやシリアルと答えたそうです。

 「食育の観点を踏まえて、コロッケなどの工作感覚で楽しめるものや、最近は作る人が少なくなっている日本の伝統食のお節、節分や節句などの行事食もレッスンに加えるようになりました。節分の時は、一緒に豆まきをして、由来や豆まきをする理由などにも触れています」

 地域の飲食店のメニュー開発や、企業のチームビルディング研修にも取り組みたいと意欲を見せる鎌田さん。インクルーシブ教育などの社会問題にも目を向けます。インクルーシブ教育とは、障がいの有無や国籍などにかかわらず、全ての子どもが共に学び合う教育のこと。障がいのある子どもを持つ保護者が、わが子の将来に不安を抱いていることを知り、料理というツールを通して、子どもが人を思いやる気持ちや自立心を育めるようにしたいと考えたそうです。地産地消を心掛け、環境に配慮した調理道具や食器を使うなど、SDGsも意識します。

 「野菜を千切りする音に心地良さを感じたり、鍋のふたを開けた時にふわっと漂う香りに気持ちが満たされたり、料理には小さな幸せがたくさんあります。五感を働かせていくと、さらに料理が楽しくなりますよ」

(取材年月:2025年5月)

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Profile

専門家プロフィール

鎌田忍

季節野菜と暮らしを愉しむ家庭料理研究家

鎌田忍プロ

家庭料理研究家

BOO's HOUSE

食についての深い知識と豊富な指導経験を持ち、季節野菜を使った家庭料理を紹介。料理の基礎を教え、受講生の疑問に丁寧に答える。企業の社員食堂のメニュー考案やイベントケイタリングのアシスタント等も経験。

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