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エクステリアとグリーンの融合で、日本の住宅に新しい庭を

エクステリアと庭の設計者

関欣司

湘南地区にオフィスを構えて17年。
パーゴラを兼ねた目隠しなら植栽も映え、隣家にも嫌味にならない。

#chapter1

理屈の通った提案で、10年後も美しい庭を

 エクステリア+庭づくり。オッフルの関欣司さんは、もともと別の業者が担当していた工事を一体化させて、植物を配した自然美あふれるエクステリアを提案しています。
 昨今の日本の一戸建て住宅は、すっかり洋風へ様変わり。特に首都圏では、「庭をつくるほどのスペースはないけれど、自然を楽しむ空間がほしい」「門から玄関までのアプローチを庭に見立てたい」という要望がふえているそうです。
 もともとオッフルは、エクステリアの設計、施工会社。関さん自身、エクステリアの専門家であっても、植物に関しては門外漢でした。そこで、「知り合いの植木職人から話を聞くことから庭づくりの勉強をはじめた」と言います。さらに、月に一度、都内で開かれる講座にも参加。学んだ知識や、植物関連の書物をひも解くなどして、洋風住宅に合う外来種の植物についても勉強。また独自で、地域に合った植木や植物のポートフォリオの作成・更新もしています。庭づくりのヒントを求め、海岸沿いで、湘南地区と似た住環境の街を旅したこともあるとか。
 「植物たちは、自分で動くことができません。植える側が、植物の特性を理解し、植物の気持ちになって植えさせてもらう、という姿勢が大事。そのお返しに、植物から安らぎや癒しを授かることが、自然との共存の第一歩と考えています」
 雑木を植えたアプローチ、コケ壁のある庭、芝生の駐車場など、関さんが施工を手がけた例は、空間を有効に活用しながら、個性的な表情も見せます。モットーとしているのは、「理屈の通った提案」と言います。
 「ただ見映えがいいだけではダメ。なぜ、その木を植えるのか、なぜ、その位置なのか。ちゃんと理屈で説明ができなければ、プロの仕事ではありません。私の場合は、その植物を植えたら、10年後、20年後に、どんな庭になっているかまで考えてプランニングしています」

#chapter2

湘南地区では、植物に潮風の塩害対策が必須

 関さんが施工を手がけるエリアは、神奈川県茅ケ崎市、藤沢市、鎌倉市、逗子市を中心とした湘南地区。このエリアで、植物を扱う際に、もっとも気をつけなければいけないのは、「潮風による塩害」だと言います。
 「植物に潮風があたると、塩分が葉の水分を吸い取り、茶色に変色したかと思うと、あっという間に葉を落としてしまうんです。湘南地区に長くお住まいの方は、塩害をご存知なので、強風が吹いたときは、真水をかけて、潮を落としていらっしゃいますが、残念ながら、間に合わないこともあるんですよ」
 そのため、木や草花を植えるときに、関さんは、「まず潮風に強い品種であること」を重要視しているそうです。
 「耐潮性の強い植物としては、黒松、オリーブ、ソテツ、ヤシ類、サンゴジュなどがよく知られています。花木なら、オオシマザクラ、タイサンボク、サルスベリなど。一年草や多年草、球根類なら、カンナ、ローズマリー、サルビアなども元気に育ちます。特に、湘南エリアでは、南西方向からの潮風が通る場所では、塩害対策に特別な注意が必要。おすすめなのは、オリーブ、ナンキンハゼ、ウエストリンギア、グレビレアなどです」
 「南西方向からの風」というのは、関さんが、地道に観察を重ねて得た結果。地元の専門家だからこその情報力です。「海を身近に感じていない業者さんでは、ちょっと思いつかないかもしれませんね」と、胸を張ります。

庭、アプローチ、駐車場までをリフォーム。ウッドデッキは施主の癒し空間。

#chapter3

自宅の庭でリラックスを提供したい

 関さん自身、ダイビングが趣味で、「海の近くに住みたい」と、1994年に東京都下からオフィスと住居を藤沢市へ移転。そして、2003年より茅ヶ崎市の現住所へ移り、新オフィスを開きました。
 この仕事にやりがいを感じるのは、「ふだん忙しく働いている人に、リラックスした時間を持ってもらえたとき」と言います。
 「できあがった庭で、主人が週末にビールを飲んでいました、という話を聞いたりすると、心から良かったなと思うんですよね」
 ただ、エクステリア業界としては、まだ「これが王道」という庭づくりが整備されておらず、それが業界全体の課題と関さんは考えています。
 「今は、いろんなやり方が混在している状況。昔ながらの日本庭園や、英国のガーデニングもそれぞれにいいところはあります。でも、それが提案する側の押しつけになってはいけない。ただの思いつきや設計者の好みで構成された設計は、すぐに飽きられたり、完成時をピークに朽ちていくものになりがちです。意味や理由のしっかりしているものだけが、大切に引き継がれ、さらに成長し続け、やがて精査され、文化や伝統にまで発展するのだと思います。一つ一ついいものをつくって、業界全体に貢献しながら、この仕事を次の世代につなげていけたらいいですね」
 「庭づくり」という仕事への愛情が感じられました。
 
(取材年月:2011年10月)

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専門家プロフィール

関欣司

エクステリアと庭の設計者

関欣司プロ

職人

有限会社オッフル

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