免震補強やシロアリ駆除にも対応する左官屋
畑ヶ谷孝
Mybestpro Interview
免震補強やシロアリ駆除にも対応する左官屋
畑ヶ谷孝
#chapter1
畑ヶ谷孝さんが営む「畑ヶ谷建物」のある中原区宮内は、かつて土壁の材料となる土が豊富にとれたため、左官職人の多い街なのだとか。「畑ヶ谷建物」もその一つ。創業は明治時代にまでさかのぼります。畑ヶ谷さんはそんな老舗の4代目。小学4年生のころから先代である父のもとで手伝いをしながら、左官の技術を身につけてきました。
「セメントが重くて、小さいバケツで何度も運んでね……」と楽しそうに小さいころの思い出を語る畑ヶ谷さん。その表情には老舗の誇りと仕事へのプライドがにじみます。
畑ヶ谷さんによる漆喰(しっくい)やなまこ壁などの伝統的な左官の手業は地元からの信頼も厚く、東日本大震災の影響で剥がれ落ちた寺の白壁も修復しています。都市化されているとはいえ、神奈川県内にはまだ農家も残っており、大きな土蔵の修理の依頼を受けることもあるのだとか。
また、新しい材料や技術も積極的に取り入れて研究し、良いものだけを客に提供しています。例えば、シックハウス症候群やアレルギー対策に良いと評判の珪藻土。同じ珪藻土でもその品質はピンからキリまで。最近はホームセンターでも珪藻土を買えますが、粗悪なものは樹脂などが混ざっているそうです。
「うちは自宅のトイレを珪藻土の壁にしていていますが、本物の珪藻土はタバコを吸ってもまったく黄色くならないんですよ。ちゃんとメーカーの講習を受けないと売ってもらえない珪藻土なんです。値段もそんなに変わらないので、確かなものをおすすめしたいと思っています」
#chapter2
「自分の家を直すような気持ちで、お客さんのことを考えているんです」と畑ヶ谷さんは言います。
かつて某リフォーム会社の仕事で風呂場のモルタル壁を張り替える際、シロアリで土台がボロボロになっていることに気付いた畑ヶ谷さん。土台は無視して壁だけを直せというリフォーム会社と意見が対立して、仕事を下りたことがあるそうです。
「その会社の社長は畑ヶ谷に頼むと高くつくって思っているだろうけど(笑)、それで仕事をはずされるならかまわない。それよりも5年、10年たったときに『あいつがやった仕事にはクレームがこない』と思ってもらった方がいい。見た目はキレイに仕上げても、すぐに壊してやり直すことになったら、お客さんにとっても高くつくからね」
最近は「リフォーム詐欺」という言葉があるように、お金だけとって工事は未完のまま逃げてしまうような業者も少なくありません。被害者の相談を受けて、畑ヶ谷さんがその後の工事をフォローしたこともあったそうです。
「今は株式会社が簡単に作れるので、そういう業者は社名だけ変えて何度も同じことを繰り返します。突然やって来る飛込みの営業に騙されないようにしてほしいですね。その点、地域に根ざして、長く続いている業者なら安心です。うちみたいのは変な仕事したら逃げられませんから(笑)」
#chapter3
左官業の枠を超えて、免震補強やシロアリ対策などの相談に乗ってもらえるのも畑ヶ谷さんの強みの一つ。確かな技術と仕事への情熱、そして人懐っこい性格は人を惹きつけ、職人同士を信頼関係で結びます。必要に応じて、腕のいい大工や板金屋が集結。ハウスメーカーが行うようなことは全て対応可能ということです。
「ちゃんとした職人としか仕事をしない人ばかり。そういう人は仕事が早くてきれいなんです。
実はうちも大工さんにすすめられて、3年前に免震補強をしたばかり。東日本大震災の時もひび一つ入らなかったですよ。免震工事は外から直す方法や、内側から直す方法などいろいろあるので、内装や外壁を直す機会に補強するのもいいと思います」
職人同士のネットワークもさることながら、簡単な工事なら畑ヶ谷建物で対応してくれることもあるそうです。
「左官工事に行ったら窓枠が壊れていたので、ついでに材木を買ってきて補強したりということもあります。黙っていればいいんでしょうけど嫌なんです。大工さんやペンキ屋さんを呼ぶと高くなっちゃいますしね。『トイが壊れてるから、今度来たときに直しときますねー』なんていうこともしょっちゅうです」
昭和に置き忘れてしまったような、温かい交流がここには健在です。畑ヶ谷さんのような人情深い職人さんのいる街がちょっと羨ましく感じられました。
(取材年月:2011年6月)
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免震補強やシロアリ駆除にも対応する左官屋
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