PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

「贈って嬉しい、贈られて嬉しい」養殖ブリ

養殖ブリ生産のプロ

鶴長洋一

養殖ぶり生産のプロ 	鶴長洋一さん
ぶりの養殖場

#chapter1

独自ブランドの「ボンタンぶり」と「昇格ぶり」

 鹿児島県長島町は、国内有数の養殖ブリ生産量を誇るまち。日本三大急潮として知られる長島海峡の潮流で育つ養殖ブリは、身が引き締まり、「天然ものに勝る食感」と言われ、多くの人に親しまれています。

 鶴長洋一社長が経営する「有限会社 鶴長水産」が生産する独自ブランド「ボンタンぶり」もそのひとつ。阿久根市特産の柑橘・ボンタンをシャーベット状にし、餌に混ぜ合わせて生育。そのため、ほのかに柑橘の香がして、特に刺身で食べたとき、臭みがなく、「普通のぶりに比べると脂っこくない」「一度食べると忘れられない」、「地元の芋焼酎によく合う」などといった絶賛の声が多数寄せられています。

 同社の強みは、種苗(しゅびょう)となるモジャコ(ブリの稚魚)採捕から、養殖、加工、販売までを一貫して自社で行っていること。「種苗は漁協が販売するものを仕入れるのが一般的ですが、弊社では養殖する魚の種苗を自社で育てることで、資源の確保、生産の安定をはかっています」

 もうひとつ、「ボンタンぶり」と並んで人気なのが、「昇格ぶり」です。こちらも独自ブランドで、同県で採れた天然の貝化石を餌に混ぜて育てたもの。貝化石にはカルシウムやミネラルが豊富に含まれているため、骨格がしっかりして身の引き締まった魚に育ちます。

「ブリは成長とともに、ワカシ、イナダ、ワラサ、そしてブリへと名前を変えていく出世魚。縁起のいい魚なんです。なので、会社や組織などで昇格や栄転される方への最高の贈り物になるのではないでしょうか。『贈って嬉しい、贈られて嬉しい』商品を提供し、あげる方ももらう方もともにワクワクしていただくことが、私たちのモットーです」と鶴長さんは微笑みます。

#chapter2

常に挑戦する気持ちを忘れず、いい商品を作れば、必ず道は開ける

 同社は1976年、鶴長さんの父親が創業。鶴長さんは幼いころから、養殖ブリやフグのために一生懸命働く父親の背中を見て育ちました。「『まずは体験が大事』というのがおやじのポリシーでした。養殖の仕方から出荷作業まで、中学生くらいから駆り出されてよく手伝っていましたね。『大きくなったら俺の後を継げ』と言われてきたので、将来は私もブリの養殖に携わるのが当たり前だと思っていました」

 21歳で父親の会社に入社。28歳のとき、正式に父親から仕事を引き継ぎ、代表になりました。しばらくは順調でしたが、次第に養殖ブリの価格は低迷し始め、相場の暴落などもあって、2012年ころには、このままいくと会社がもたないという、窮地に陥ることに。

「ずっと普通のブリの養殖をしてきましたが、生き残っていくためには、他社とは違う何か独自の商品を生み出さなければいけなかった。美味しいブリがあるのだから、ひと工夫すれば、必ずうちにしかない、独自の商品が作れると思っていました」

 そうして誕生したのが「ボンタンぶり」と「昇格ぶり」でした。「妻が阿久根出身でボンタンは身近な果物だったんです。飴などのお菓子が有名なので、『ボンタンぶり』と名付ければ語呂もいいなって(笑)。当初は県内のスーパーやホテルなどに営業してもあまり相手にされませんでしたが、発売して2年が経ったころ、東京の有名なホテルの総料理長から県庁を通じて『うちで仕入れたい』と連絡があったんです。逆指名ですよね(笑)。それ以降、右肩上がりで人気が出るようになりました。『昇格ぶり』の方は、東京の相撲部屋に飛び込み営業をしたところ、気に入ってもらった親方や力士の間で話題になりました」。これら二つの商品が消費者の心を掴み、少しずつ売上は伸びていきました。

 経営が厳しいときに新たなチャレンジをするのは資金面も含め、非常に大変なこと。「だけど、何もしないで指をくわえているだけでは、落ちていく一方です。私たちは鹿児島の小さな業者ですが、常に新たな挑戦をして、いい商品を提供すれば、必ず道は開けると信じています」

養殖ぶり生産のプロ 	鶴長洋一さん

#chapter3

美味しい魚を食べる喜びを届けたい

 今年はコロナ禍で売上が激減。特に緊急事態宣言が出ていた時期は「ほとんど売上がないくらいだった」とのこと。しかし、鶴長さんがめげることはありません。ピンチこそチャンスと捉え、地元の酒造会社とコラボして、芋焼酎の製造過程で出た焼酎かすを餌に混ぜて育てた新たな商品「島美人ぶり」を開発しました。

「焼酎かすにはタンパク質やミネラル、有機酸、ポリフェノールなどの栄養成分が残っていて、それらを食べたブリは栄養価の高いぶりに育ちます」と鶴長さん。「ボンタンぶり」と「昇格ぶり」に次ぐ3本目の矢は、この冬にも放たれる予定です。

「稚魚から丹精を込めて育てた魚が立派なブリになり、『美味しい』と舌鼓を打ってもらうこと。それが一番嬉しいです。魚離れした子どもたちにも、美味しい魚を食べる喜びをぜひ味わってほしいですね。これからも安全で美味しいブリを全国の食卓に届けていけるよう努めてまいります」と鶴長さんは語りました。

(取材年月:2020年9月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

鶴長洋一

養殖ブリ生産のプロ

鶴長洋一プロ

水産物養殖業

有限会社 鶴長水産

当社は創業昭和51年より、大小18の島々からなる長島海峡の恵まれた自然のもと、ブリ養殖業に携わってきました。徹底した生育・品質管理を行い、お客さまに「美味しいブリを世界中に届ける」が企業理念です。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ鹿児島に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または鹿児島読売テレビが取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO