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難病と闘う一級建築士が目指した新たな家づくりのカタチ

将来を見据えたユニバーサルデザインの家づくりのプロ

眞部好昭

将来を見据えたユニバーサルデザインの家づくりのプロ 眞部好昭さん
眞部好昭さん設計風景

#chapter1

大切な仲間とともに実現した、生涯住人を守る家

 直線的なラインを強調した、数寄屋造りの重厚感ある佇まいが印象的な「まことの家」。こちらは株式会社真工務店の代表取締役・眞部好昭さんが高松市前田東町に自邸として建設し、予約制で見学することが可能です。和室へと直接移動もできる広々とした玄関やコンクリート壁のスタイリッシュなキッチン、大容量の収納など魅力的な要素がたくさん詰まっています。この家は難病を患った一級建築士の眞部さんをはじめ、眞部さんの父の代からお世話になった棟梁、信頼できる社員、長年の友人、医師などさまざまな人の思いが詰まった“家族の幸せ”を基本に設計された「生涯住人を守る家」です。

 先代の父から会社を受け継ぎ、一級建築士として忙しい日々を送っていた眞部さんに突然、病が襲いかかりました。2012年の夏に末期癌を患った父の介護をしながら、会社の経営に奮闘していたある日、手足の痺れと違和感を感じたそうです。さまざまな検査の結果、伝えられた診断名は「(指定難病十四)慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー」略して「CIDP」という手足の神経が炎症によって動かなくなってしまう難病。眞部さんは発症から1カ月程でトイレも自力で行くことが困難になってしまいました。そして自身で設計した自宅で、車椅子や歩行器での介護生活には対応できていない仕様や寸法が多いことに気がつき、手すりやスロープなど後付け工事では解決できない現状に直面します。そこで眞部さんは、一級建築士として自分自身が困ったことを元にゼロから最新の住宅仕様で、障害があっても住みやすい家の設計に取り組みました。

#chapter2

自分自身が困ったことやストレスを感じたことを元に、住宅の問題を解決

 眞部さんが闘病時に困ったことなどをメモした「まことの家ノート」は5冊にも渡り、細かく綴られています。眞部さんは一級建築士の観点から、さまざまな問題をどうすれば解決できるかを考えました。最初に日常生活で困ったことは階段の上り下りでした。入院中の懸命なリハビリで階段が数段上がれるようになった眞部さんは、外泊許可を取り自宅の階段に挑戦。しかし、自宅の階段は全く上がることができなかったそうです。眞部さんはそこで諦めるのではなく、リハビリ施設の階段を基に設計した4〜5段の階段の試作品を作ってもらい試したところ、自力で上がることができました。「まことの家」ではこの階段を標準化しています。階段の奥行きや高さ、材質、手すりの形など細部までこだわっているため、驚くほど上がりやすく、階段が苦手な年配の人にも好評です。

 まことの家づくりの7つのこだわりは「愛情へのこだわり」「季節感」「質感」「健康住宅」「ユニバーサルデザイン」「メンテナンス」「時代」。車椅子のまま利用できるキッチンやカウンター、浴室、トイレなど住む人の心地良さを追求した要素が多数盛り込まれています。医師のアイデアを採用した「ハウスダスト対策」は部屋の壁の高さや窓の位置を工夫して、家の中に風の通り道を作ることでした。窓を1つ開けると、その風が一気に家の中を巡る仕組みです。

 また、季節の太陽高度を計算した軒の造りで夏は涼しく、冬は暖かい快適な空間を実現。車椅子でも利用しやすいように、コンセントの位置も工夫されています。闘病中、約2年間をベットの上で過ごした眞部さんは天井の蛍光灯が目に焼きついてしまい、その悩みを改善するためにリビングや寝室、和室は間接照明を採用しています。

まことの家 リビング

#chapter3

顧客それぞれのベストを追求した、家族を守る保険的な考えの家づくり

 「まことの家」は決して障害者のためだけの家ではないと眞部さんは話します。「人間は歳を重ねていくうちに、必ず体力や足腰に不安が襲ってきます。明日、自分や家族がどうなっているか分かる人もいません。その為、保険に入るのが常識である現在、家の寸法や仕様に保険的な考えでプランを考えてみてください」と言います。顧客が100年幸せに暮らせる家づくりを考えて出来上がった家は、廊下や階段の手すりも握力がなくても握りやすい形状で、デザインの一部として馴染んでいるので若い世代が将来を見据えて建築する場合にも魅力的な家です。

 全国に2000人しかいない難病と闘い、医師も驚くほどの奇跡的な回復を見せた眞部さん。難病を患ったからこそ悩み、苦しんだことで人生を諦めるのではなく、一級建築士としての知識や技術を最大限に生かして、病気で苦しむ人や高齢の人など、さまざまな人がキラキラ輝いて生活できる居住空間づくりを追求しています。

 「住む人が幸せに暮らせるように守ってあげられる家づくりに集中して、いろんなノウハウを組み込んでいます。この家のすべてをそのまま建てるのではなく、顧客にとってのベストを一緒に探していきます。その人が必要とする部分を採用した家づくりをするのが僕の夢になりました」と話す眞部さん。

 令和元年11月11日に完成した「まことの家」で、これまでのバリアフリーのイメージをくつがえす、住む人に優しい家づくりの新たなカタチを体感してみてはいかがでしょうか。

(取材年月:2020年3月)

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専門家プロフィール

眞部好昭

将来を見据えたユニバーサルデザインの家づくりのプロ

眞部好昭プロ

一級建築士

株式会社真工務店

難病を患い、階段が上がれなくなった経験などを元に家の中などで困ったことを数冊のノートにメモし、様々な問題点を一級建築士の目線で解決。階段や手すり、ドアの寸法などを数値化し、オリジナル商品を多数開発。

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