一生もののテーブルを一枚板から作り上げるプロ
岡田圭一
Mybestpro Interview
一生もののテーブルを一枚板から作り上げるプロ
岡田圭一
#chapter1
加賀国一宮・白山比咩神社のお膝元、石川県白山市鶴来町。白山麓で切り出された木材の集積地として古くから栄えました。この町で「木工所 ひびき」を営むのが岡田圭一さん。木そのものの風合いが味わえる一枚板のテーブルやカウンターの製造、販売を行っています。
岡田さんの一番のこだわりは、仕入れから加工、販売、納品まですべて自前で行うこと。
「一貫して行うことで、お客さまに責任を持って仕事ができると思っています。直売で中間マージンがかからず、その分価格を抑えることもできます」と利点を話します。
一枚板のテーブルに漠然とした憧れを持っていても、どんな商品を選んだらよいか分からない。そんなときこそ「自前での一貫生産が強みを発揮する」と岡田さんは言います。
「お客さまには、まず木の選び方についてお伝えします。住環境も見せていただき、どのようなテーブルがふさわしいかを一緒に考えていきます。徹底して打ち合わせをすることで、お客さまが求めているものは何かを導き出します」と力を込めます。
木材の仕入れ先は、県内の材木店や林業者などさまざま。遠くは岐阜市の競り市場まで片道3時間かけて足を運ぶこともあります。工場では、天然乾燥や機械乾燥で木の水分を抜き、加工。乾燥だけでも最低1年はかかる、手間暇をかけた作業です。
加工した木は工場併設のショールームスペースに展示。来店者は岡田さんの説明を受けながら、ずらりと並んだ天板からお気に入りの一枚を選ぶことができます。
#chapter2
学生時代はスタジオミュージシャンを目指して音楽を勉強し、アメリカのロサンゼルスに1年間留学した経験もあるという岡田さん。木材の仕事に突き動かしたのは、ギターでした。「ギターの音はボディーに用いられる木に影響されます。そこから木材に興味を持つようになりました」
石川県に帰郷後、家具の輸入販売・加工会社を経て製材所に就職し、一枚板テーブルの加工製造や企画販売に従事。「実務を通じて木に触れることで、木の良さをそのまま商品に反映させることができる一枚板の魅力に取りつかれました」と振り返ります。
そして2019年1月に自身の工房を立ち上げました。「大量の一枚板や加工前の板を、お客さまに見てもらえる場所はあまり多くはありませんでした。一枚板を好きな人は自分以外にもたくさんいるはず。そんな人たちに商品をイメージしてもらえる場所をつくりたいと思い、一枚板専門の木工所を開きました」と話します。最近では口コミで評判が広がり、福井、富山などの近県から訪れる人もいるということです。
新たな試みとして、インターネットで商品を購入してもらえるよう、販売サイトに専用ショップを用意。さらに、商品にならず廃棄されたり、山林に放置されたりする木材を林業者から安く買い取り、子ども向けのおもちゃに加工することも計画しています。「ヨーロッパで遊ばれているような、デザインがおしゃれでかっこいいおもちゃに仕上げたいですね」と意気込みを語ります。
#chapter3
「この子に出会えてよかった…」。購入したテーブルの天板をなでながら、しみじみと口にする顧客。一枚板テーブルの販売を始めて間もないころ、納品先で岡田さんが耳にした言葉です。この一言で、それぞれの木の特徴を生かしたテーブル作りの重要さに気付かされたと言います。
「一枚板を始めた当初は、どの板も画一的に加工することを目指していました。しかし、お客さまの声を聞いて、自分がやるべきことは、木の個性を引き出し、お客さまの生活様式にマッチングさせることなのだと強く感じました」
一枚板は、木の生育環境や製材方法により、曲がったり、大きさが変わったりすることがあります。まさに職人泣かせですが、岡田さんはこれらの不確定要素を「性格」と表現。欠点ではなく、木の持ち味として捉えています。
「節目や割れがある木はクレームにつながるので、ともすれば木材として敬遠されがちです。しかし、これらを木の性格として受け入れて、商品に仕上げるのが私の仕事。短所を長所に変えることで、お客さまから『想像を超えた出来栄え』と言っていただけるように努力しています」
「ひびき」という名前には三つの思いが込められている、と岡田さん。「音楽の『響き』のように、使い手の生活を豊かにする。『日々樹』の字のように、お客さまに一生涯、常に使っていただく。そして愛する我が子と同じ名前にすることで、仕事で妥協しないよう自分を追い込む。求められている以上の商品を提供することで、お客さまの人生の幸福に貢献できればうれしいですね」。ストイックな姿勢で、きょうも工房で木と向き合います。
(取材年月:2021年9月)
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Profile
一生もののテーブルを一枚板から作り上げるプロ
岡田圭一プロ
家具の製作・販売
木工所ひびき
木の特徴を存分に生かした一枚板のテーブルを製造。仕入れや加工にこだわり、顧客とのコミュニケーションを徹底することで、一生使える商品をともに作り上げていきます。
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