事業と家計の総合サポートで「小さくても強い会社」をつくるプロ谷口薫

事業と家計の総合サポートで「小さくても強い会社」をつくるプロ

谷口薫

小規模事業者の経営・財務の課題と家計を見渡すワンストップ支援

　JR小松駅から車で5分の場所にあるコンサルティング会社「5win（ファイブウィン）」。経営・財務・家計まで一体的に見渡す独自の支援スタイルで、小松市内を中心に、従業員数5人以下の零細企業や個人事業主に向けて「小さくても強い会社づくり」を支援しています。

　代表を務めるのは、元ハンドボール実業団選手の谷口薫さん。引退後は銀行員として法人融資に携わり、その後は生命保険会社で10年以上にわたり家計や資産運用の相談を受けてきました。現在は、経営者の本音に耳を傾け、事業と家庭を切り離さず「トータルでお金を見る」ワンストップコンサルティングを実践しています。

　「家族経営のような小規模な店舗や事業所からは、『仕事は忙しいのに手元にお金が残らない』『節税や業務の見直しまで手が回らない』といった声をよく聞きます。経営者自身の生活も苦しく、親族にも相談できず、不安を一人で抱えている方も少なくありません」

　こうした漠然とした不安に応えるため、谷口さんは「0円コンサルティング」や決算書分析サービス「会社の健康診断」など、相談しやすい仕組みを整え、経営者が不安を言葉にできる場を提供。経営診断で財務の弱点を明らかにし、生活面では貯蓄や保険の最適化を提案するなど、短期の改善策から長期のライフプランまで見通しながら伴走します。

　また、専門知識がなくても短時間で自社の決算書が読めるようになる「決算書セミナー」を商工会議所で定期開催。分かりやすい解説と実際の数字を読み解く実践ワークで、自社の課題を可視化し、解決への糸口を探るためのサポートをしています。

声援を受ける側から事業者を応援する立場に。苦境を力に変えて次のステップへ

　谷口さんは、ハンドボール実業団チームの強豪・北國銀行に入行。選手として培った「目配り・気配り・心配り」を糧に、キャリアチェンジ後も全力で取り組んできました。

　「声援を受ける立場から、事業者を応援する立場に変わり、新鮮な喜びを感じていました。ただ、企業の一員としてできることには限界があります。力になりたくても職務の枠組みを超えるわけにはいかず、ジレンマに苛まれました」

　その矢先、体に病変が見つかります。
　「病気は、本当にやりたいことを抑えてきた自分へのメッセージかもしれない」。そう気づいた谷口さんが書き出した目標は、「40歳で独立する」でした。
　「苦しい時こそ強くなるチャンス」のアスリート魂に突き動かされ、半年の闘病期間を経営コンサルティングの学習時間にあて、独立への道を歩み始めます。

　小規模事業者の支援にこだわるのは「地元で商店を営む両親の元で育った経営者家族の一人であったことも理由の一つかもしれない」と谷口さん。

　「進路に悩んでいた頃、両親も苦しい懐事情を誰にも相談できなかったと後から知り、事業主を取り巻く厳しい現実に思い至ったのです。店舗の一つを手放すなど、やりくりを重ねながらも、好きな道へ進む背中を押してくれた父。その心情を思うと、同じように悩む事業主の力になりたいと願わずにはいられません」

　2023年に独立を果たすまでに、三人の母にも。さらに、指導者としてハンドボールを通した活動もスタートしています。

経営者・家族・未来も加えた「五方よし」。スポーツを通した「応援と支援」の循環で未来へ笑顔を広げる

　谷口さんは「お金が残らない原因は、売上や経費といった事業運営だけでなく、家計が大きな要因ということもあります。収入が必ずしも保障されない立場である以上、経営と家計のバランスを常に意識することが重要です」と強調します。

　「そのために、いつ頃どれくらいのお金が必要になるかを逆算します。例えば、子どもさんの進学など、家族にお金が必要な時期が分かれば、その時期に合わせて借入返済のスピードを調整したり、設備投資の適切なタイミングも見えてきます。『役員報酬はいくらが妥当か』『法人税と個人の所得税の振り分け方は』『保険のかけ方は』といった細かな要素を一つ一つ見直して、実質的な手取りアップにつなげましょう」
　
　数多くの支援実績を通じて、「商売の勘と経験だけでは、変化の激しい時代に対応するのは簡単ではありません」と指摘。得意分野である銀行借入の改善を通じて、資金繰りを安定させ、新たなビジネスの発想を促します。

　ハンドボールの盛んなまち・小松市で、子どもたちの指導にも携わる谷口さん。自身も支えられた「強い心」を育むと同時に、スポーツを通して「応援と支援」を地域に循環させ、地域全体の活性化にも力を注いでいます。

　5winのビジョンは、伝統的な「三方よし」に「家族（従業員）よし」「未来よし」を加えた「五方よし」。
　経営者と家族、社員の笑顔が地域に広がり、地元経済とスポーツが共に成長する社会を目指しています

（取材年月：2025年9月）

事業と暮らしをトータルに支え、地域に育む「応援と支援」の循環

小規模事業者の経営・財務の課題と家計を見渡すワンストップ支援

声援を受ける側から事業者を応援する立場に。苦境を力に変えて次のステップへ

経営者・家族・未来も加えた「五方よし」。スポーツを通した「応援と支援」の循環で未来へ笑顔を広げる

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